4...妖廻という存在
「混乱するのも無理からぬ事だ。
何せ、お前はつい先ほど、妖廻としての魂を得たばかりなのだからな」
おろおろとする鵺宵に、男は笑みを浮かべた。
「お前は、かつて人間だった。
しかし、我らがお前を妖廻として新たに生まれ変わらせたのだ!」
男は自慢げに、両手を広げて高らか言う。
「お前には、もう人間だった頃の記憶は無いだろうが、
安心しなさい。
これから我らと共に、様々な思い出を作ろうではないか。
家族としてな!」
「あぁ、私の愛しい鵺宵。
妖廻になってくれて、とっても嬉しいわ」
女は、縄に繋がれ身動きが出来ない鵺宵に頬を擦り付ける。
「...妖廻ってなあに?」
鵺宵が問う。
「妖廻は、この世で最も尊い存在だ。
人間より遥かに強大な力を持ち、
その力で世界を浄化する事が出来る。
その上、不死である。
一度妖廻となった者は、肉体が朽ちても、何度でも新しい肉体を得ることができる。
妖廻とは正に、神のごとき存在なのだ!
どうだ、鵺宵。
お前は妖廻という素晴らしい存在になったのだ。
さぁ、もっと喜びなさい!」
「そうよ、鵺宵。
貴方は神に近づいたのよ!」
「...うぅ」
鬼気迫る彼らの言い様に、鵺宵は圧倒されて、俯いてしまう。
「ふむ...すぐに理解するのは、難しいか。
だが我らと共に歩んでいく内に、きっと理解できるはずだ。
そしていつか、お前を妖廻として生まれ変わらせた我らに感謝することになるだろう」