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20...阿戯斗へのおねだり
城の近くの開けた場所。
ここは、阿戯斗率いる聖巣教団の戦闘訓練場であった。
この場所は元々森だったが、信徒たちが訓練と並行して神秘樹という特殊な樹木の伐採を行った結果、見晴らしの良い空間となっていた。
伐採した神秘樹は町に売りさばかれ、聖巣教団の重要な資金源となっていた。
「お父様」
鵺宵は、泣天狗と共に訓練場を訪れていた。
「ウチも見たい」
そして阿戯斗の姿を見つけると、トコトコと駆け寄っていき、
そう言った。
「鵺宵、なぜここにいるのだ?
部屋に居なさいとあれほど...」
阿戯斗は、怖い顔になって鵺宵を見下ろした。
「うぅ...えっと、私が鵺宵を連れてきちゃったんですぅ...」
泣天狗が、慌てて鵺宵を庇った。
「そうだったのですか」
泣天狗が現れたことで阿戯斗の表情が軟化する。
「うぅ...ごめんなさい...」
「ねぇ、お父様。
くんれんっていうの、見たい」
鵺宵は、ここぞとばかりに再度、阿戯斗に強請った。
「ふむ...そうか...分かった。
許可しよう」
阿戯斗は、チラリと泣天狗を見た後、頷いた。
「ありがとう」
鵺宵は嬉しそうに表情を緩めた。