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1...覚醒したバケモノ
一つの魂が、この世界に生まれた。
それは、自我を持たなかった怪物の体内で、
パンと弾けるように芽吹いた。
と同時に、生まれたばかりの彼女は、ドロドロとした暗いものを煮詰めたような、複雑な快楽を味わった。
焼ける様に熱い疼き。
何か尊いものを破壊したかのような後ろ暗い興奮。
あらゆるしがらみを強引に断ち切ったかのような爽快感。
出来ないことなど無いのでは無いかと錯覚するような万能感。
そういう複雑な快楽が、全身を駆け抜ける。
そして、深い水の底から浮き上がり、水面をバシャンと突き抜けたかのように、
ぼやけていた感覚が、世界が、急に鮮明になった。
「っは」
彼女は、慌てて空気を肺に取り込み、目を見開いた。