16...鎖凪による座学【妖廻?瘴気?】
「ねぇ妖廻ってなに?」
鵺宵の部屋。
鵺宵は鎖凪と向かい合って座っていた。
「妖廻?
...妖廻はね。
瘴気を浄化する神聖な存在よ。
そして、同時に瘴気溜りから生まれる存在でもある。
貴方はもう瘴気を知っているでしょう?」
「えっと、ウチが毎晩天狗様たちと食べに行ってる黒いモヤモヤだよね」
「そうよ。
瘴気は、人間が生み出す、汚くて有害なもの。
人間は醜い感情を持つと、瘴気を吐き出すの。
瘴気はその場に留まって、触れたもの全てを穢すの。
人間の心さえもね。
瘴気に触れた人間は、醜い欲望や、苦しみ、哀しみ、狂気、殺意、怒り、恨み...有りと有らゆるどす黒い感情が増幅されて、
さらなる瘴気を生み出すようになるわ。
そうして、沢山の瘴気が集まった場所を瘴気溜りと呼ぶのよ」
「ふーん」
「瘴気溜りはね、放置しておくと、大変な事になるの。
凶悪な事件が頻発するようになるし、
草木は枯れて、建物は崩壊する。
最後には大きな自然災害や天変地異さえも引き起こすわ」
「瘴気って怖いね」
「そうよ。
そして、そんな危険な瘴気を浄化してくれるのが妖廻なの。
一応人間にも瘴気を浄化する事ができるけど、
そもそも瘴気を認識出来るのが、
妖廻か、もしくは阿戯斗様や私のような妖力の高い人間だけ。
ほとんどの人間は、何となく嫌な感じがする...くらいしかわからない。
だからもし妖廻が存在しなかったら、
きっと世界は瘴気だらけになって、とっくに滅びているはずよ」
「じゃあ、ウチたち妖廻が、沢山黒いモヤモヤを食べないといけないんだね」
「そうよ。
鵺宵は本当に良い子ね」
鎖凪は鵺宵の頭を撫でる。
「貴方のように、日々世界中で妖廻たちが瘴気を浄化しているから、世界は美しいのよ。
でもね、人間は、陰妖師は、妖廻を悪だって決めつけて封縛してしまう。
確かに、妖廻が瘴気を浄化する時、一時的に暴走状態になる。
そして、その姿が恐ろしく見えてしまうのも仕方ないかもしれない。
でもそれは、臆病で気の弱い妖廻でもしっかり瘴気を浄化出来る様に、
神様がそのようにしたのだと思うの。
だから、妖廻はなにも悪くない。
仕方の無いことなの。
悪いのは全て瘴気を生み出す人間なのよ」
「ふーん」