プロローグ 鵺宵の物語
日ノ国。
それは、タツノオトシゴのような形状をした島国である。
その真ん中、ちょうど腹の辺りに、恵戸という首都があった。
そこから、北西に幾らか離れた辺境の深い森の中に、
大きな城がそびえていた。
土台も、壁も、屋根も、全て木製の城である。
その城の内部。
正門を潜って、幾つかの階段を上り、
廊下を進んだ先にある厳めしい扉の中に、
大きな座敷牢があった。
座敷牢には、大きな布が布が覆い被さっており、
囚われているものを隠している。
『グルルル!』
座敷牢の中からは、絶えず唸り声が漏れていた。
それは幼く可愛らしい声だ。
しかし、そこに理性や知性のようなものは感じられず、
本能のままに暴れる獣のような声であった。
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この世界には、妖廻という存在が居る。
人間を遥かに超越した身体能力と、
首を飛ばされても、時間を掛ければ元通りになってしまう程の再生能力。
更に全ての妖廻が妖術と呼ばれる特殊な超能力を有しており、
強力な妖廻の手に掛かれば、人間の町など、一夜にして消し去られる。
妖廻は人間にとって完全なる上位存在だった。
この物語は、妖廻の幼女〈鵺宵〉が、
沢山の者達を救う存在になるまでの物語である。
特殊な言葉が幾つか出てきましたが、
以下のようにイメージしていただけると、
理解しやすいかも知れましせん。
↓
日ノ国(日本)
恵戸(江戸)
妖廻(妖怪)