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1章【出会い】

ー為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さずなりけりー



皆様はじめまして

私の名前は「絡繰 茶々丸」 あ、読み方は(からくり ちゃちゃまる)です

読みづらくてすいません


このメッセージを読んでいるあなたの世界とはちょっと異なる世界にいます

こちらの世界のことを少しだけご説明しますね

あなたの世界が「地球」と言うなら、私がいるこちらの世界は「方舟」と呼んでいます

あなたの世界の地球とは少し違う次元にある世界です

あなたの世界から見たら異世界と言うものですかね

こちらの世界ではあなたの世界で言う「漢字」が世界共通語になっています

まぁ、そちらで言う「日本語」と同じものと思ってもらってかまいません

こちらの世界では「生語(いきご)」と呼ばれています

なぜ生語と呼ばれているのかは追追わかるかと思います

文明レベルはあなたの世界の方が科学力「は」断然に進んでいると思います

と、言うのも私の世界では「魂粒(こんりゅう)」と言う目に見えない粒子が方舟(世界)中に漂っています

この粒子によってあなたの世界では使用できない不思議な力を使うことができます

この力によってこちらの世界はあまり科学力が発達しませんでした

不便さがありませんからね

まぁ、この力についても追追分かってくると思いますのでここでの説明は省かせてもらいますね


さて、あなたの今思ってる疑問を当ててみせましょう

あなたは「なぜこのメッセージを地球に送っているのか?」と疑問を抱いてると思います

あと、「なぜ自分なのか?」とも


後者についてはたまたま受け取ったのがあなただったからとしか言えませんが、前者については……

あなたに少し私の語る物語を聞いていただきたいのです

この物語を聞いてあなたがどう感じ取るか、どう行動するかは分かりません

全てはあなたに任せます


とまぁ、物騒な話は置いておいて

暇つぶし程度に聞いて下さい


「あなたの地球」とこの「方舟」の物語を………


目が覚めた

夢を見ていた

まるでどこか遠い……

いや、違う世界を見てるような夢だった

太陽が痛いくらいに眩しい

自分の気持ちはこんなにも憂鬱なのに

……どうやら芝生で寝転んでたらそのまま寝てしまったようだ


周りを見回すと見覚えのある景色だ

ここはとある村にほど近い山である

そしてこの場所は誰も知らないとっておきだ

まぁ、つい3日前に見つけだのだが

生い茂る森にぽっかりと空が見える

そこからとても気持ちのいい日差しが降り注いで自分の体を心地よく暖めてくれる

綺麗に透き通った真水が溜まっている小さい池もあり、ひんやりした空気もまた心地良い


どうしてここが誰にも知られてないかと言うと、まぁ単純に地域民からは「呪山」と呼ばれていて、誰も近づかないだけなんだけど

正式名称は忘れたが、呪山なんて呼ばれているのは昔悪い神様が封印されて、その悪い神様が封印される時に呪いを山全体にかけたって言うよくある昔話によるものなんだけど、何故か現代になっても誰も近づこうとしない

おかげで自分は気持ちのいいサボりスポットを見つけられて、誰にも邪魔されないわけなのだが


そんな寝起きの気持ちのいい余韻に浸っていると、突然けたたましい不愉快な大声が聞こえた

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!くぅぅぅどぉぉぉ!!くっそ!!工藤のやつどこ行ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

正直、不愉快すぎて二度寝をしようと思っている時、空から大きな塊が落ちてきた

それは身体中に漆黒のとげをびっしり生やした5メートル程の大きな蜘蛛みたいなやつだった

明らかに「今怒ってますっ!!」って状態で目の前に降ってきた

「うぉぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁっ!!」

とげだらけの背中に器用に体を潜り込ませて必死にしがみついて叫んでいる人間も一緒だ

顔が隠れるフード付きマントを被っている人間が、暴れる大きな蜘蛛の背中から今にも落ちそうだ

「おーい、(りょう)、楽しそうだなぁ」

そんな気の抜けた自分の言葉に少しイラつきながら

「てめぇ、これ見て楽しそうだと思うならお前もやってみろ!!」

なんてわめいている

「仕方ないなぁ」

と、ひとつため息をついてから立ち上がり

「読み込み………発動!!」

すると自分の目の前に光の球が現れた

その球に手を突っ込んで引き抜くと1メートル程の古びた印象の両刃剣が現れた

「足をやるからあとは任せるぞ!!」

と言うと同時に身体を前に倒し、その倒れる勢いを利用して走る

目指すはデカい蜘蛛の足

まずは1本目

風を切るほどの走る勢いと振りかぶった勢いを使いデカ蜘蛛の足の関節に刃を入れて切断する

その勢いのまま次の足を切断する

2本目を切断

次に3本目、この辺りで剣から嫌な音がした

「あ、これまた折れるな」

そんなことを思いながら4本目を切った

その直後に高い音をたてながら剣が折れた、と言うより砕けた

「あとは何とかしろよっ!!」

そう言いながら全力で後方に飛び距離をとった

と同時に漆黒のとげが地面から勢い良く生えてきた

まるでさっきまでそこに居た人間を串刺しにする意志を持っているかのように

あの蜘蛛やり返して来やがったと心の中で悪態を着きながら成り行きを見守る

「こんだけ大人しくなればあとは俺がやるっ!!」

涼がそう言った後

「読み込み!!………「「インパクト」」装備!!」

涼の目の前にも光の球が現れた、そこに腕を突っ込んで引き抜くと涼の腕にはナックル型のインパクトが装備されていた

それは馬鹿みたいにデカい拳と腕、肘の辺りから円柱型の何かが飛び出ている正直かっこいい見た目をしている

所々赤く発光してるのもポイントが高い

「とどめだ!!」

そう言うと足を4本切断され身動き取れないデカ蜘蛛の頭に思いっきり殴り付けた

と同時にインパクトが発動しさらに追加で衝撃を与える

その衝撃は地面を揺らすほどの威力だ

大抵の生き物なら粉々になるだろう

このインパクトの瞬間にマントがたなびく姿もかっこいいと思う

涼は調子に乗るので言ってやらないが


蜘蛛は不気味な高い叫び声を発した後、ぱたりと動かなくなった

多分………いや、確実に死んだのだろう

蜘蛛の頭には信じられないほど大きな穴が貫通していた

これでよく叫び声あげたなぁ、などとどうでもいいことを考えていると

「いやぁ、やっぱりとどめをさすのは気持ちいいなぁ……てかお前どこにもいないと思ったらこんな所でサボってたのかよ!!俺一人でマジで大変だったんだぞ!!」

などと騒ぎながら涼が蜘蛛の頭から飛び降りてきた

「サボってないぞ、ほら俺はお前が誘導してくるのを待ってたんだ、待ち伏せだよ、待ち伏せ、戦略的だろ(笑)」

「何が戦略的だよ!!ただめんどくさくなっただけだろ!!お前がこの仕事は割が良いから受けようって言ったんだからちゃんとやれよ!!」

「何言ってんだよ、「黒棘蜘蛛」を見つけたのは俺だろ、しかも3日と言う短期間で、普通は見つけるだけでも一週間はかかるぞ、それに1番かっこいいフィニッシュはお前に譲ったんだからプラマイゼロ、むしろプラスだろ」

「3日で見つけたのなんてただの偶然だっただろ………まったくお前は、お前ってやつは……」

などどいつも通りぎゃーぎゃー言い合いながら山を降りて行き、ふもとの村に任務達成の報告に向かった

山から村までは少し距離があるので歩きながら美味くもない携行食を食べ空腹を満たしていた

「それにしてもお前の「生魂(いきだま)」って不思議だよなぁ、固有名称言わなくても発動できるんだもんなぁ」

「でもボロい剣だぞ、蜘蛛4回切っただけですぐ砕ける、正直店で売ってる剣の方がまだ丈夫だ」


生魂とは俺が剣を出したり、涼がナックルインパクトを出したりと武器を発現させる現象のことだ

この世界では全ての人間が生魂を使えるが使える武器や威力は人によってそれぞれだ、まだ研究段階でちゃんと解明は出来てないと言うのが国の研究者の公式見解らしい

固有名称と言うのが、生魂を発現させるためのパスワードみたいなものだ

個人にはそれぞれ1つの武器の「名称」と言うものがある

この名称を本人が唱えると武器が発現する

涼で言うなら、涼自身が「インパクト」と唱えることによって涼専用の馬鹿みたいにでかいナックル型のインパクトが発現する

これを涼が他人の固有名称を唱えても何も起こらないし逆もまた然り

その固有名称を唱えなくても剣を出せる俺は正直異常なのだが、なんせ剣自体が脆すぎて扱いに困る

優位性は皆無と言ってもいいだろう


「でも、相手に自分の生魂を知られないのはかなり良いと思うけどなぁ、すぐ折れる剣でも(笑)」

「お前、じつは馬鹿にしてるだろ……」

「だって、文句言いながら売ってる武器を持とうとしないじゃないか」

「売ってる物だと壊れたらそれまでだろ、でも生魂なら壊れたらまた出せば良いし、なにより手入れが必要ないから楽だ」

「お前ってホントになんでもめんどくさいんだな……そのうち生きてるのがめんどくさいって言って死にそうだな……」


そんな馬鹿話をしているとやがて村の入口が見えてきた

この村は「青葉村」、よく俺達が依頼を受ける村だ

簡単な堀と木材でぐるっと囲っただけの正直田舎村だ

依頼などの用事がなければまず入ることの無い村だろう

なぜ青葉村かと言うと、村の最奥部にはびっくりするほどの大きな大樹が生えていて、春夏秋冬問わず常に青々とした葉っぱをつけているかららしい

正面、こんなに立派な、しかも不思議な木があるのに栄えないのも珍しいと思う

その大樹は大昔の神話の時代から生えている神聖な御神木なんだそうだ

まぁ、全て酒の席での飲んだくれ村民達から聞いた話なのだがな


木で組んだだけの門をくぐり抜けると、まっすぐ道が伸びていてその先に村の名前の由来にもなった御神木が、力強くも優しくその枝で包み込んでくれるかのように青々とした葉っぱと枝を伸ばしているのが見える

その真っ直ぐな道の真ん中辺りに小さな広場みたいなところがあり、そこには村人達が井戸端会議で談笑していたり農作業や狩で使うであろう道具の手入れをしていたり、またはただ座って煙草を吹かしているだけの老人など皆思い思いに過ごしていた

俺達が真っ直ぐの道を御神木に向かって歩いていると

「おっ、おかえり〜、無事に帰ってきたんだなぁ」

「涼くん、工藤ちゃんお疲れ様〜」

「2人ともおかえりー、お腹減ってたらうちに来な、良い野菜が今朝採れたんだよ」

などなど色んな村人達が声をかけてくれた

まぁ何度か依頼を受けるために村には来てたので今ではほとんどの村人達が俺達の顔を知っている

「村長に報告が先だからまた後でなぁー!!」

と涼は村人達に手を振りながら答えていた

そのまま広場を突き進んで行くと御神木の下に少し立派な家が建っている

あれが村長の家だ

他の村人の家屋の屋根が木の板や藁葺き屋根で出来ているのに対して村長の家は少し大きく屋根も瓦屋根になっていて、それだけでも立派に見える

なんでも代々御神木を守るのがこの村長の役割の一つでもあるらしい

だからなのか、御神木のふもとにこの村にしたら立派な家に住んでいるとのことだ

まぁ、色々大変なこともあるらしいから、その代価と考えるなら納得もできるだろう


村長の家に近付くと、家の前で1人女の子が掃き掃除をしているのが見えた

名前は「青葉(あおば) 葉月(はづき)

村長のお孫さんで時期村長らしい

「葉月ちゃーん、村長は家にいるー?」

涼が声をかけると

「居ますよ〜、たぶん書斎にいると思います〜」

なんともふわふわと癒される優しい声と笑顔で村長の所在を教えてくれた

マントのフードを脱ぎ玄関の戸を開けて中に入る

涼は透けるような金色の綺麗な髪を三つ編みで一つにしている、パッと見はイケメンだと思う

対して自分は黒炭のような黒髪短髪のどこにでもいるような普通の人間だ

誤解が無いように言っとくが、別にうらやましくなんかないからな


村長の居る書斎は玄関を入って2つ目の扉だったかな

ノックをすると中から声がして入室を促されたので扉を開けて入る

中に入ると正面の机にはいい感じに歳を重ねた、どこか気品を漂わせるおじいさんが机に向かって何か仕事をしている

場所が違えば貴族と間違えてしまうであろう

部屋の壁には本棚が並んでいて、本やよく分からない道具とかが並んでいた

「おお、涼くんと工藤くんか、どうした?」

顔を上げ穏やかな顔でおじいさんが口を開いた

「依頼を達成したので報告とサインを貰いに来ました」

「もう終わったのか!?早いな!!、黒棘蜘蛛だぞ!?」

「俺達なら討伐自体は楽ですよ、今回は運良く早く発見出来たのですぐに終わりました、これは黒棘蜘蛛の素材です、好きにしてもらって構いません」

と涼が巻物を一つ村長に手渡した

この巻物は中に術式が書かれていてそこにある程度の物をしまうことができる便利な物だ

これを2〜3個持てば旅もほぼ手ぶらでできる、俺達のような奴らには必需品だ

今回は倒した蜘蛛の死骸を入れてある

「ありがとうなぁ、今まではあの山に村人も誰も近付かないから良かったのだが、最近黒棘蜘蛛が山から降りてきては周りの動植物を襲っていたからこの村にも被害が及ぶ可能性があったんだ、何か起きる前で本当に良かったよ」

「黒棘蜘蛛くらいなら俺達のレベルでも倒せますからね、素材もそれなりで売れるから村の為にもなる、俺達も報酬が手に入る、お互いのためになりますからね」

「2人にはいつも依頼を受けてもらって助かってるよ、今日はゆっくり休んで明日街に戻ると良いだろう、部屋は用意するからな」

「ありがとうございます、ではお言葉に甘えて、サインも無事貰えましたし今日は休ませてもらいますね」

ここまで涼と村長が話を進め、自分は1度も口を開けてない

交渉事は全て涼に任せているから自分は話す必要がないからだ

サインをもらう段階でごねる依頼主もいるため下手に自分が話してこじれるより涼の二枚舌に任せた方が確実だからだ

だからここまですんなりサインをくれるこの村長さんは俺達にとってもとてもいい仕事相手なのだ

「工藤くんもありがとうなぁ、今日はこの家の一室を用意するから準備できるまでどこかで時間を潰していて貰えるかい?」

「分かりました、じゃぁ、外で時間潰してますね」

そう自分が言ってから涼と2人で外で時間を潰すことにした


家から出ると玄関先に葉月ちゃんが居た

「あら、お話はもう終わったんですか?」

「終わったよ、ちゃんとしてくれる村長さんには毎回感謝しているよ」

「おじいちゃんは、そう言うところはしっかりしないとイヤな性格なんですよ、戻られるのは明日からですよね、今からお部屋のご準備しますね」

そう言って葉月ちゃんは家に入っていった

「毎回思うが、葉月ちゃんは村長さんの意志を汲み取るのが上手いよなぁ、さすが次期村長だよなぁ」

自分がそんなことを言うと涼は「確かに」と一言つぶやいてから広場に向かって歩き出した

俺も何となくついて行く

「涼はこの後はどうするんだ、たぶんまだ時間あると思うぞ」

「そうだなぁ、とりあえず、さっき広場で飯食わせてくれるって言ってた人のところに行こうかな、とは思ってる」

「おっ、良いな、じゃぁ俺も一緒に行くわ」

そう言って2人で広場に向かうと、広場に村人の数人が集まって何か話していた

あまりいい感じの雰囲気ではなかったので少し気になっていると

「おっ、どうした?何かあったのかい?」

と涼が集まっている村人達に声をかけた

すると村人の男の1人が

「さっき畑から帰ってくる時に、街に向かう道の遠くの方に何かがいたんだよ、なんだろうと思って様子を見ていたら急に、離れた俺にもはっきり聞こえるくらいの雄叫びを上げたんで驚いて逃げてきたんだ」

「獣かなにかか?」

「わからんなぁ、遠かったしなぁ、でも畑にはまだ村人がいるから心配なんだよ、あの雄叫びで逃げて来てくれたら安心なんだけど、村長にお願いして依頼を出してもらうかって話してたんだ」

「そうかぁ」

涼が少し考える様子で間を開けてから何か思いついた様子で顔をあげた

「わかった!!、俺達で見てくるよ、工藤も良いよな?」

「ああ、いいぞ、どうせこの後は何も無くて暇してたしな」

「良いのかい!?依頼じゃないから報酬も無いだろうし、俺達も渡せるものなんて何もないぞ!?」

村人がとても驚いた様子で言ってきたので、涼がご自慢の爽やか笑顔で

「どうせ暇してたんだし、様子をちょっと見てくるだけだから大丈夫だよ、終わったら何か食べさせてくれたらそれでいいからさ」

と言ってのけた

たぶん依頼じゃないから素材を渡す必要が無く、それを売ればいくらか入ってくるとか考えているんだろうが、あのご自慢の笑顔で言われたら皆だまさせるだろう

そんなこんなで自分と涼は村人からの「お願い」を聞くことになった、一応何があってもいいように装備を整え少しだけ食料をもらってから件の場所に向かった

道中、素材のことを聞いてみたら予想通りの答えが帰ってきたのでそれ以上は聞かなかった

まぁ、この道は自分達が帰る時に使う道だからついでと言えばついでなんだが……まぁ良いか


件の道は両側に草原が3キロほど広がっていてその先は人の手が入れられた森になっているとても開けた見通しのいいところだ

その道の真ん中に村人の話通りに何かがいた

「やっぱり何かいるな、様子を見ながらゆっくり近付くぞ」

涼はそう言うと真剣な顔になりゆっくり警戒しながら近付いて行く

50メートルくらいだろうか、そこまで近付くと何となく形が分かってきた

それは人間のようだった

さらに近付くとはっきりとわかった

女性だ

黒っぽい忍装束のような軽装防具に身を包み、濡れ羽色の綺麗なショートヘアーで襟足だけ長く1つに結っている

真っ白な肌と相まって第一印象はとても美しい女性だった

「なんだ人間か、こんな所で何してるんだ?」

涼が言う通り、その女性は道の真ん中で太陽の温かみを感じるかのように目を閉じて空を仰いでいた

その不思議な女性を観察していると突然大地を揺らすほどの激しい雄叫びが轟いた

涼と自分は反射的に臨戦態勢に移り、背中合わせで死角のない陣形を整えた

この辺りは何度も一緒に依頼をこなしてるからなんてことない

女性の方は目を見開いて片側の森の方に視線を集中させている

サファイアのような瞳に切れ長の目、やはり綺麗な女性だ

女性の視線の先の森が急にざわめき始めた、と思ったら突然黒い塊が砲弾並の勢いで女性に向かって飛んできた

これはやばいと思ったが、女性はそれをひらりと受け流すと同時に軌道を変え黒い塊を地面に叩きつけた

塊は自身のスピードを抑えられず地面をえぐるように転がっていきやがて止まった

もうもうと立ち込める土煙、その中に何かがいる

四足歩行の獣のようなシルエットだ、しかしかなりでかい

二本足で立ち上がったらたぶん自分の2倍はあるんじゃないかと思う

その獣がまた吠える、今度は「攻撃の意思あり」とでも言わんばかりに明らかな殺意を放っている

獣の咆哮によって周りの土煙が弾けるように飛ばされると、「そいつ」は姿を現した

「マジかよ……「黒刃豹」って……本でしか見たことないぞ……」

涼が苦虫を噛み潰したような顔で呟く

そいつは大きな黒豹の見た目にも関わらず、額や背中、爪や尾の先などあらゆる所から体毛よりも黒く金属のような光沢を放つ刀身を生やしていた

「黒刃豹ってここより遥か南にしか生息してないやつだよな!?なんでこんな北側にいるんだ!?しかも1匹で!?」

黒刃豹は本来群れで狩りを行っていて、個体で行動することはまず無い

群れの危険度はかなり高いが、個体の危険度も充分高い

正直、俺達では太刀打ちできない

「理由は知らんが今現状ここにいるんだから仕方ないだろ!!とりあえず逃げる事を優先するぞ!!」

涼が言い終わるか終わらないかのタイミングで黒刃豹が叫びながら女性に飛びかかった

一瞬の出来事だった

女性はまるで動きが見えてるかのように黒刃豹の飛びかかってきた勢いをそのまま投げ飛ばす勢いに変えて空高く飛ばした

「……おいおいマジかよ……今のって柔術だよな、でも俺の知ってる柔術はあんなには飛ばせないぞ!!」

「でも現に飛んでるぞ、東方の武術ってやっぱりすごいなぁ………あ、落ちてきた」

俺と涼が唖然としながらそんな会話をしていると、空高く飛ばされた黒刃豹が落ちてきて地面に叩きつけられた

見た目よりも数倍重量があったのだろうか、その衝撃で少し地面が揺れたがそんなことを気にしてる余裕はなく、ただただ目の前の光景に気を取られていた

黒刃豹はピクリとも動かなくなった

それを見届けて女性は「ふぅ」と息を吐くと体から光が抜けていくように揺らめいた

たぶん生魂を解除したんだろう

俺達ははっとして女性に駆け寄って行った

「おい!!あんた大丈夫か!?」

そんな自分の言葉に女性こちらを振り向き

「あら、人がいらっしゃったのですね、お怪我はありませんか?」

なんて気の抜けることを言ってきた

「怪我がないかどうかはあんたの方だろ!!あんな刀身だらけのやつを空高く飛ばしたんだ、どっか怪我とかしてないか!?」

「私は大丈夫ですよ、刃物は慣れてますから、心得くらいはありますよ」

「お…おう……そうか……」

自分はそれ以上何も言えなくなってしまった

今さっきの彼女の戦い方を見て気圧された訳ではなく、正面から見た彼女があまりにも綺麗だったからだ

まるで人形のように整った顔立ちと戦い慣れしてるであろう装備の数々を身にまとった姿がまるで戦の女神を思わせる

自分が何も言えなくなっていると

「あなたのその戦い方、もしかして柔術ですか?確か東方の武術の一つでしたよね?」

「そうですよ、私はここよりずっと東方の街「日ノ本」出身なんです、武術も一通りそこで習いました」

「やっぱり!!初めて見ました!!凄いですね!!あの巨体を空高く飛ばしてしまうんですから!!」

などと涼が興奮気味で彼女に質問していた

彼女は「あらあら」と柔らかい雰囲気で笑いながら涼のテンション高い質問に丁寧に答えていた

笑顔も綺麗だなぁ

と自分が呑気なことを思っていると

「グルルルル」

と地鳴りのような黒刃豹の唸り声が聞こえた

自分はとっさに

「読み込み……発動!!」

と剣を出しそのまま投げて黒刃豹の額に命中させた

それを境に黒刃豹はパタリと動かなくなってしまった

これでとどめはさしただろう

と安心して彼女の方を振り向くと彼女は動かなくなった黒刃豹へ凍てつくような眼光を向けてどこかに隠していたのだろう、小刀を構えていた

絶命したのを確認して彼女もほっと胸をなでおろした

「詰めが甘かったです、お手数をお掛けしてすいません」

と申し訳なさそうな目でこちらを見ながら謝罪してきた

なるほど、切り替えが早い、そしてこの獣を1人で倒せるだけの技量力量、たぶん防具の下に数多くの暗器も隠しているであろうたたずまい

かなり経験があるな

これなら彼女1人で旅をしてても心配はないだろう

などと思想していると

「あのぅ、そんなに見られるとさすがに恥ずかしいですよ」

と彼女が恥ずかしそうにモジモジしながら自分に訴えてきた

「ああ!!ごめん!!そんなつもりはなかったんだ、大変失礼しました!!」

わたわたしながら弁解する自分に対して「大丈夫ですよ」と言いながら微笑みかけてくれた

いちいち絵になる人だなぁ

そんな一連のやり取りをニヤニヤしながら涼は見ていて、気が済んだのか口を開いた

「工藤、そろそろ戻ろうか、あなたは…ええっとぉ……」

「私は紅葉、「冬森(ふゆもり) 紅葉(もみじ)」と申します」

「そうですか、俺は涼「夏山(なつやま) (りょう)」です、こっちで先程失礼したのが……」

「工藤、「工藤(くどう) 正熙(まさき)」です、先程は失礼しました!!」

自分がまた勢いよく頭を下げると

「もう大丈夫ですから頭を上げてください」

と紅葉さんが優しく言ってくれた

「紅葉さん、俺達は近くの村で依頼を終えて明日街に戻ろうかと思ってるのですがあなたはどうしますか?」

涼が紅葉さんにたずねると

「私の依頼もつい今さっき終わってしまい、あとは街に帰ってサインをもらうだけなんですよ」

「そうですか、俺達近くの村で1泊して戻る予定なのですが、良ければ明日一緒に街に帰りましょうか?」

「いえ、私は街に戻ります、すぐなので」

「えっ?でもここから街までかなり距離ありますよ、それにもう日も暮れる頃ですし、移動系の生魂使いが近くにいるんですか?」

「いえいえ、私の生魂なら問題ないので」

そう言うと紅葉さんは黒刃豹の死骸を巻物に収納してから自分の生魂を発動させる

「読み込み………「「重力」」掌握!!」

紅葉さんの目の前に光の球が現れるとそれを右手で握った

すると紅葉さんの体が一瞬うっすらと光に包まれて光が消えた

「それでは、ご助力ありがとうございました、街では「石塚亭」に部屋を借りてるので、もし私がお力になれることがありましたらいつでもたずねてきてくださいね」

そう言うと軽く跳躍する感じで信じられない距離を跳躍して行った

1回の跳躍で既に姿がもう見えなくなっていた

あれはもはや跳躍ではなく飛行の部類ではないだろうか?

あっけに取られながらそんなことを考えていると

「まさか彼女の生魂の名称が「現象系」だったなんて……しかも重力か……そりゃ強いわな、黒刃豹の討伐依頼もこなせるわ」

涼が呆然と彼女が去っていったであろう方向を見ながら言っていた

色々と疑問は残るが、今は予想外のことが起こりすぎて頭がついて行かない

「……涼、帰るか…」

「そうだな……」

自分と涼は呆然としながら村へ戻る道を歩いて行った


1章【出会い】完

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