1-3 険しい山河の道
「もうそろそろ休憩は十分かな……」
僕は上体を起こして立ち上がる。
辺りを見るといつの間にか日は落ちていたようで、あたりは暗くなってしまった。
でも、そこまで問題では無そうだし、できるだけ早く出発したいからこのまま出発することにしよう。
そのかわり十分に注意して飛ばないといけないけど。
「一応、チェックしておくか」
一応、十分って思うほど休んだけど、そのまま気づかないまま何かあったら困るからな。
僕は自分の体の隅々までセルフチェックして自分の体調の細かな状態を確認する。
うん、一先ず問題になりそうなところはない。
魔力も体力も全快しているし、疲労感もない。
これで準備は完璧といえる状態まで整っている。
「それじゃあ、早速出発するか……!」
僕はこれかあら飛び立つ河の方を向いて立つ。
ふー、今からここを飛んでいくのか。
「ぺしんっ…ぺしんっ……!」と自分の頬を両手で叩いて自分に活を入れる。
「よし、これで大丈夫だ!行こう!」
僕は自分の中で再び覚悟を決めると河に向かって、飛び立った……
「うーん、いい感じ。それに周りがきれいだ」
今のところ特に問題なく順調に河の上を飛び続けている。
それにかなり周りの景色がかなり美しく、これがかなり精神的な癒しになっているおかげか飛ぶ前の緊張はかなりほぐれ飛行もかなり安定した。
「それにしても、綺麗だよなぁ」
僕は改めて周りの景色を見回す。
河には空に浮かぶ無数の星が水面に揺られながら反射して光っている。
かなり幻想的な風景だ。
それにこの河の上を吹き抜ける風もそこまで強くなく、若干感じる程度なので少し数育心地よく感じる。
それを見ているといつの間にか口元が緩んでいた。
少し気分が乗っているのだろう。できるならこの辺りを自由に飛び回ったりこの場で一回転してみたかったりする。まぁ、そんな余裕はないのでやろうと思わないけど……
きっと、少し気が抜けて浮かれているのかもしれない。
今のところ、そんな風や景色に木を向けるほど問題が特になく、安全に飛行を続けられているが、飛び立ってからいまだ一時間経ったか、経っていないかぐらいなのでこの後も数時間も飛び続けないといけない。
このまま同じペースを保ったまま飛び続けられれば、途中で力尽きることもなく無事にあちら側に着けそうではあるので、一回気を引き締めてよう。
間違いでもこのペースを崩したらかなり危険だからね。
やばい……やばい………!!
河の上を飛び始めてから一日と約九時間経ってもう少しでラストスパートに入るといったころ、奴に出会ってしまった。
そう奴……
この山の上に住む空飛ぶ魔物、そう、ワイバーンである。
少し日が昇ってきて明るくなったころに突現空に現れた。今は僕の地点よりも少し上の地点を飛んでいる。
不幸中の幸いか、いまだワイバーンからこちらを視認されてはいないので襲われてはいないが、それも時間の問題だろう。
いくら魔族や人間などよりも知能が劣るワイバーンとはいえ、ずっと下を向かないなんてことはないだろうからな。
見た目からしてあのワイバーンはワイバーンの中でも比較的弱くて遠距離の魔法攻撃をほぼ行わないレッサーワイバーンだけれども今の僕からしたら脅威には変わりないし。
――はぁ、ついてない。
「どうしようか……」
小さい声で呟きながらどうすればいいか考えようとしたとき。
「ギィギァァァッッーーーーーーー」
ちょうど同じタイミングで上にいるワイバーンが空を切り裂くような声で咆えた。
――ま、まずい……ばれた!?
この叫び声は明らかに敵対的な存在に向けて放つ威嚇の意味合いを持ったものだろう。
僕は絶対にバレたと確信すると、対応するために一回上を向くとちょうど再び咆えながらこちらに向かって急降下してきた。
「だめだ。このままやり過ごせそうにないな。しょうがない、相手するか」
出来れば戦闘は避けたかったがこれは振り切れないと確信すると僕はくるっとその場で体を回転させてワイバーンのいる方向に体を向ける。
「まずはこれをくらえ!」
僕はまずワイバーンに向けて単純な火属性魔法、ファイアボールを放つ。
ワイバーンに向けて放たれたそれは勢いよく飛んで行ったものの、奴もかなりの速さを持っているためか視認した瞬間、僕の攻撃をひらりと避けてまたこちらに向かってこようとしてきた。
むー、攻撃と一緒に威嚇としても放ったんだけど、当たらないどころか帷幄としての意味も殆どなしていなようだ。とりあえず、相手の攻撃はなんとしても避けないと。流石に攻撃されて体力を持っていかれるのは拙い。
僕は猛スピードで突進してきたワイバーンをうまく空中でターンをして避ける。そして通り抜けていくワイバーンにすれ違いざまに一撃カウンターとばかりに攻撃を入れる。
今回はスピード重視で風属性魔法のエアカッターだ。
流石は風属性、今回は避けられずにワイバーンの背に傷をつけることが出来た
でも、あまり効いていないようだ。
まぁ、攻撃の準備がしっかりと出来なかったので魔力が十分に練れていない即席の魔法しか放てなかった。いくらレッサーといってもワイバーンに変わりはない。なので比較的高位の魔物であるワイバーンにはそれほど効かなかったのだろう。仕方がないと言えば仕方がない。
できることなら剣で攻撃した方がダメージは効率よく与えられそうだけど、流石にここ空中でワイバーン相手に近接戦は無理だ。流石に消耗が激しすぎるし、こっちも攻撃を貰いそうだ。
あとこれ以上、避けるのもあまりしたくないな。流石にこれ以上何度も続けると途中で力尽きかねない。
これは早期決着をつけるしかないか。
僕はさっさと倒すために次の攻撃のための魔力を練り始める。
「グァァギャァァ―――――!!」
魔法を放つ準備をしながら通り抜けていったワイバーンの様子をうかがうと、攻撃を当てられかなり怒っているのか暴れながら叫んで再び僕向かって攻撃を仕掛けようとしてきた。
どうやらあいつは怒りで我を忘れているようだ。
今なら、どんな僕の攻撃も無視して一直線に向かってくるだろう。
今が攻撃の最大のチャンスか……
ワイバーンはついにものすごい勢いで再び突進を仕掛けてきた。
僕はその向かってくるワイバーン向けてしっかりと準備したさっきとは比べ物にならないエアカッターをはなつ。
数秒後、ワイバーンは自分が猛スピードで突進していたこともあり、正面から思い切り魔法に衝突する。
そして当たったワイバーンはエアカッターに体を引き裂かれ、力なく下の河へと落ちていった。
「やった………!」
僕は何とかうまくワイバーンを倒すことが出来た。
よかった、特に被害を受けることなくワイバーンを倒すことが出来て。
かなり体力も魔力も予想よりも余っているので結果としては十分良いものだろう。
「それはそうと、さっさと先に向かおう」
元々そんなに余裕はない。
それに流石にこれ以上来られてしまうとほんとに限界にらると思うので、新しい魔物と遭遇しないように僕は先を急いでいく。




