閑話 ルルウのいない魔王城にて
一週間経ちました……
ルルウとラナベルが森にいた同時刻の魔族領、その首都「ルイクスヴァンザ」
その街の中心にある魔王城、最上階『玉座の間』
そこには二人の人物がいた。一人は現魔王の代行の前魔王と魔族貴族のひとり。
「だから、いまこそ我々がアルウェストの奴らに……」
「もうよい、下がっていろ……!」
「………わかりました」
魔族貴族の男は何とも不服そうな態度をしながらもこの玉座の間から出ていった。
ガタンッという大きな扉の閉まる音がすると同時に俺は「はぁー」と大きくため息をつく。
そしてそれに続くように愚痴をこぼし始める。
「まったく、なんともくだらない提案を持ちかけ寄って……許諾するはずがなかろうが!」
今回あの貴族の男が提案してきたのはアルウェスト、つまり大山脈の向こう側の人間たちに進攻しようというものだ。
ここ最近同じような提案を貴族連中から何度も聞かされたがどれも同じようなもので、端的に言えば糞だった。
全く、いい加減やめてほしいものである。
そう、心の中で悪態をつきながら中断していた魔王の業務を再開しようとすると、再び目の前にある扉がギイィっと音を立てて開いた。
「ねぇっ!お父様?ルルウはいつになったら帰ってくるのかしら?あの子が城を空けてからもう既に随分と日にちが経つのだけれど………」
随分と興奮した様子の俺の娘、メルが入ってきた。
メルはまた自分の弟であるルルウのことについて言いに来たのか……
「そう興奮する出ない。落ち着け、メルよ」
「でも、お父様?」
「お前の言いたいこともわかるが、あいつ、ルルウが自らやりたいと言っていたことだ。今は好きにさせてやってくれ。それがあいつのためだ。お前ならわかってくれるだろ?それにお前が危惧しているような事態も、あいつの力量を知っているならばないってことくらいわかるだろう」
「それはそうですけど……」
「だろう?じゃあ大丈夫だ。それに待っていればいずれ帰ってくるだろうしな」
「……………わかりました」
なんだか納得したのかあいまいなままメルはそのまま出て行ってしまった。
そういえばルルウがこの城を出てからもう既にどのくらいだ?もう一か月と二、三週間くらいたったのか。
いつの間にかどこかに家出したルルウだが、まぁ、行くとこは大体察しが付く。たぶん向かったのはここから大山脈を越えた向こう側、そう人間たちのすむところだろう。
元々あいつは元から結構人間に興味を持ってたしな。
まぁ、その興味を持った原因の大本は俺が昔、ルルウを連れて山脈を越えて人間の街まで行ったことだけど。
それに加えて魔王としての仕事があいつの精神にストレスとして重くのしかかって、それで出ていったんだろうな。
ん、考えてみたら出ていった九割方俺のせいじゃないか?
まぁ、いいかあいつもあっちに行くという夢をかなえたし、俺もそれを止めようとしていないしな。むしろ俺的には万々歳ってところもある。
だってもともとルルウには魔族と人間との橋渡し的役割を担ってほしかったからな。
そのために人間に興味を持つように仕向けるようなこともしたし。うまく伏線が回収されてうれしいってことだ。
きっとあいつはあっちで頑張っているだろう。
ルルウならそそう魔族ってこともばれないだろうし、バレてもめごとになったところでそんな簡単にやられる玉ではないだろうしな。なんたって現魔王なんだからな。
まぁ、あいつがしっかりと経験を積んでいられるようにこっちのことはちゃんと俺が責任もってやっておかないとな。
一応、突然いなくなって側近なんかが混乱したり、変な輩が邪なことをしないように魔族領の視察に向かったといっておいたし一先ずは大丈夫だろう。
「“あいつ”を覗いてだけどな……」
もちろんあいつとは”メル”のことである。
もし、俺が止めないで行かせたことを知ったらどうなるだろうか。
一か月と少し経っただけで少しは抑えているようだが明らかに取り乱しているのだ。きっと相手が親でも容赦なくルルウの居場所を聞きに脅し迫ってくるだろう。
正直、あいつのルルウに対する異常なまでの執着は困ったものだ。
普段のことを見ているとあいつは自分の弟のルルウさえ自分の近くいれば他はどうなってもいいと思っているように思える。
今日はなんとか納得させることが出来ただろうけど、もうそろそろあいつも限界そうだし、いずれというかあいつのことだから数日たったら自ら探し出すだろう。
全く、あいつもルルウみたくもう少し落ち着いてくれればいいんだがな。
そうすればルルウもベタベタしていた今までよりはメルに好意を寄せるだろうし……
まぁ、本人は苦手に思われているなんて微塵も感じていないだろうけど。
とりあえず、あいつにバレない様に最新の注意を払いながら極力頑張ろう。
俺もバレたらいろいろと困ったことが起きるだろうしな。
それはそうと俺は俺でルルウの代わりに魔王の執務をこなしておかないとな。
ルルウがすっぽかしたとは言え俺のせいだし、やっておかないと社会があれるしな。
ただでさえ今は何だか不穏な空気が流れているんだ。
特に古くから続いている貴族の奴らがなんか最近変なものに感化されて人間に対しての征服論なんかを唱え始めているしな。
全く厄介な連中だ。
奴らをどうにか沈めておかないといずれ奴らだけで戦争をおっぱじめかねない。
そうなったら向こう側のルルウも困るだろうし、もちろん俺も大いに困る。
「めんどくさいけどどうにかしないとな。まぁ、息子のためだ一頑張りするか」
俺はメルが入ってきて中断していた執務を再開する。
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「全く、お父様ったら何を考えているのかしら。いくらるーくんが強いからと言ってこんなにも長い時間一人で生活をさせるなんて……」
「あぁー、るーくんどこ行ったのぉー!?」
私は玉座の間から出て自室に戻ってくると自分のベッドに寝っ転がりながらお父様への愚痴をこぼす。
るーくんの姿が見えなくなってもう一か月と二週間くらい。今まではこんなにも長い間お城からいなくなることなんてなかったのに。
お父様は他の街の視察に行ったとか言っていたけど、本当にこんなにかかるのかしら?本来ならもう少し早いと思うのだけど。
それにお父様もお母様も薄情すぎやしないかしら?だって自分の息子が一か月半くらい家にいないのよ?
心配するのが普通じゃないのかしら。
それなのに二人とも「ルルウは強いから大丈夫だ」「あの子なら大丈夫よ」なんて言う。
確かにるーくんは強いけれども、もっと心配するべきじゃない?
るーくんは私にとって大事な大事なかわいい弟なんだよ?もっと大事にするべきだと思うの。
だって、あんなにかわいいのだもの。絶対行った先で可愛さにつられた変な人たちが絡んできたり、変な女にたぶらかされたりするかもしれないじゃない。
もしるーくんがそんな目にあうなんて想像しただけでもゾッとする。
本来なら私がそばにいて守るべきなんだけど……
というか、るーくん一人で寂しくないのかな?
私はるーくんと会えなくてすごい寂しいし、もしかしたらるーくんも同じ気持ちかっもしれない。
「あー、寂しいよー」
私はるーくんのお部屋から(勝手に)貰ってきたるーくんのブランケットに顔をうずめて、すーはーすーはーと深く呼吸をする。
最近は少しでもるーくんを感じたくてこうしているのだが。
「もうだめだわ。るーくんを探しに行かなきゃ……!」
ついに我慢が出来なくなり私はるーくんを探しに行くことに決めた。
きっとるーくんも私が探しに来てくれるのを待っているだろうし、これ以上寂しい思いをさせないためにも早く見つけてあげなきゃ。
私は手に持っていたブランケットを手から離し、るーくんの足取りを追うためにまずは手掛かりを探しにるーくんのお部屋へと向かっていった。
「絶対に見つけ出してあげるからね……待っててね。るーくん!」
しばらく、休んで二章が始まります。




