1-16 森での異変②
だ い ち こ く
私生活が忙しかったんや………
「うおーっ、危ない!」
僕は向かってきた攻撃をすれすれで避け、即席で作った魔法弾をを当ててそのまま前へと進む。
森に向かうために魔物の間を抜けていっているのだけど、若干周りへの注意が疎かだったかもしれない。
魔物の間を通るんだから全方面に注意をちゃんと向けないと。
そう反省をしていると先ほどの一部始終を見たからか少し間隔をとったところにいたラナがこちらに向かってきて僕の横についた。
「ルルウ!さっきのすっごいひやひやしたんだけど………。もう、ちゃんと周り見てよ?わたしたち危険な場所を通っているんだから!」
なんて森に進みながら軽く説教を受けていると………
今度は横にいたラナが突然空中で回転して前から来た魔物の魔法を当たるギリギリのところで避けた。
「うわっ!びっくりした―!」
地面に着地すると同時に魔法が飛んできた方向に魔法を放ち返しながら僕の方を向いた。
「あっ……………」
「…………………」
「お互いに気を付けよう………」
「うん………」
そんなことをしているうちに魔物の群れを抜け目的地の森の目前まで着くことが出来た。
僕たちはそのまま森へと入っていく。
森の中はさっきの時とは打って変わって真っ暗で雰囲気も不気味で若干恐怖をあおってくる。
少しは進むのに躊躇するが、時間もないので構わず入っていく。
「魔物はどっちにいるの?」
「ちょっと待って、今探すから」
流石にこの暗さでは目視では遠くまでわからないので探知魔法を使って向かわないと。
えーっと、それらしき反応は………
あ、これか。
「ここから北東の方。そこにいる」
「北東の方?わかった!」
北東の方、そこにある反応は全部で六つ。
さっき森から出てきていた魔物と同じような反応が五つとその五つとは異なる反応が一つ。
たぶんこの一つだけ違った反応の何かが元凶だろう。
この反応は何だか見たことがある気がするが何だったか思い出せない。
まぁ、出会えばわかるだろうし今は気にしなくていいか。
そんなことよりも早く向かわないと………
ゲイルさんとルフェさんは今もあの量の魔物を僕たちの分も相手にしているんだ。
平気だと信じてはいるけど、できる限り二人の負担を減らすために早く元凶を何とかしないと。
森の中を駆け、アザミの咲いていたところを抜けるとちょうど反応のあった少し開けたところに出た。
僕たちはガサッという草木をかき分ける音とともにそこに飛び出る。
そこには五匹の巨大化した魔物が向こうを向いており、音を出した僕たちの方に一匹ずつこちらに振り返り始めた。
振り返って僕たちを視界にとらえた魔物たちはたちまちこちらを睨みながら威嚇の唸り声をあげはじめ、僕とラナもその様子を見ていつでも戦闘に入れるように構える。
その直後………
「誰だ………」
低く響く何者かの声が魔物たちのいる向こう側から聞こえてきた。
それと同時に向かい合っていた魔物たちが突然左右へと移動し、その空いた中央から一人の人物が現れた。
「…………!?」
僕はその人物を見るや否や驚きから呆然とその場で立ち尽くして
「魔族…………」
そう一言こぼした。
「えっ……………!?」
それを聞き取ったラナは同じように驚き、僕と目の前の人物を交互に見る。
そう目の前の人物は紛れもなく僕と同じ魔族である。
「よくわかったなぁ、お前!そうだ、俺は魔族だ!」
本人も高らかにそう宣言している。
「ていうかよくわかったなぁ、お前。………ってよくみたらお前も魔族なのか。随分と人間族に似ていたからすぐにはわかんなかったけどよ。で、隣の奴は………精霊族か。随分と変な奴らだな」
魔族の男は僕とラナを観察してそういう。
よくわかったな。僕は同じ魔族だからわかるとしてもラナはあまり外見からはわからないはずなのに。
って、そんなことよりも何故こんなところに魔族の男がいるんだ?
本来なら、あの魔族と他の種族を隔てる山脈、ラダナプト大山脈は越えてこられないはずなのに。
「ん?なんで俺がこんな魔族の地でもない場所にいるのかだって?」
そんな思考をしていると顔に出ていたのかそんなことを聞かれた。
「そ、そうだ!」
「まぁ、不思議に思っても仕方ないな。折角だし教えてやろう。それは至極単純なことで、俺がここで任務を果たすよう言われたからだ」
任務………?
こちら側に来るような任務なんて魔王直属の組織にはなかったと思うんだけど……
今臨時で魔王としての仕事をしているだろう父上もそんなことはしないだろう。
「随分と懐疑的だな。ま、知らなくて当然か……。むしろ知られてない方がこちらとしても好ましい」
「それはそうとお前たちはなんでこんなところに来たんだ?というか魔族と精霊であるお前たちこそ人間の街に近いこんなところにいるんだ」
「僕たちは………」
僕は男の返答に戸惑ってしまう。
「わたしたちは大きくなった魔物の原因を何とかするためにここに来たの!」
その横でラナがそう答えた。
「なぜわざわざ、巨大化した魔物の原因を魔族と精霊であるお前たちが解決する必要があるんだ?ここは精霊の住む森からかなり遠いし、あの程度の魔物じゃ山脈を越えてカースイーストの方に来ることはできない。被害を受けるのはお前たちではなく人間どもだけなのに」
「それはみんなを守るためだ」
「なぜ人間を守ろうとするんだ。別にいいじゃないか人間なんて。違う種族なんだし」
「違う種族だからって別にいいとはならない!むしろなぜ人間たちに害をもたらそうとするんだ!」
「それは当たり前だろう。相手は我々魔族の宿敵であるんだから敵対して当然だろう。それに………いやこれにはついてお前たちは知らなくていいことか。とにかくそういうわけだからだ」
こいつ魔族至上主義者か………
「俺のことは置いといてとにかくお前たちは俺の任務の邪魔となる存在ってこともわかった。ここで気長に話するのもここまでにして、お前たちをここで排除させてもらう。お前たちも俺を排除するために来たんだしな。よし、お前らいけっ!」
そういうと男は横に控えていた魔物たちを僕たちにけしかける。
僕は一度下げていた剣を再び構え襲ってくる魔物に向けて切りかかる。
振りかぶった剣は迫りくる魔物の体にうまいことあたったものの、与えられた傷は小さく、魔物の動きからしてもダメージが大きくないのがわかる。
明らかにさっきまでの魔物とは一回りも二回りも強化されている。
隣のラナもさっきまでの魔物には確実にダメージを負わせることのできていた魔法攻撃が予想以上に聞いてなくて狼狽えているように見える。
「どうしたんだ?思うようにダメージが入ってなくてびっくりしてるのか?それはそうだろう、ここにいるのは森を出ていった魔物よりもずっと強くしているからな!」
僕たちの苦い表情を読み取ったからか男がそんなことを自慢するように言ってきた。
やはりこの魔物たちはあの魔物の群れを誰かが抜けてきて襲われた時のためのものだからか強化の度合いが格段に上なのだろう。
これはどうにかしないと……
これはもう体裁を気にできるほどの余裕がないので闇属性魔法を使わせてもらおう。
ここにいるのは僕が魔族だと知っているラナと魔族の男しかいないのでまだなんとかなりそうだし。
僕は次々と迫りくる魔物たちの攻撃を避けながら自らが持っている剣に手のひらをかざし剣身に魔力を込める。
剣身に強化魔法と闇属性をかけたことで、剣身は黒色の炎が纏い轟々と燃え盛りだす。
「よしっ………!」
これできっと魔物たちにも効くだろう。
僕は炎を纏わせた剣を構えなおし魔物に向かって行く。
魔物に接近すると僕は剣を魔物の下から上に向かって切り上げる。
切りかかった魔物は剣が通った腹のところでちょうど真っ二つに切断されていた。
二つに体を切り離された魔物は「ググゥ……」と最後に息とともに声をこぼすとその場に倒れた。
よし次だ。
僕は次の魔物に向かって駆け出し剣を今度は振り下ろす。
魔物はまたしても腹のところで半分こにされ力なく倒れた。
僕は倒した魔物から目を離し横を見るとラナが魔法を練っていた。
しかし、いつものような魔法とは少し違うように感じる。実際、練り上げられて魔六弾として形作られているものの色も普段使っていたものとは違い光属性の白色に風属性を感じさせる緑色が混ざった色をしている。
そして次の瞬間練り上げ終えたのかそれを勢いよく残っている魔物に向かって放った。
「いけぇっー!」
放たれた魔法弾は光を纏った風の刃の形となり魔物に襲い掛かり、当たった魔物をだんだんと八
つ裂きにしていった。
「ふーん、結構やるなーお前たち」
その光景を見ていた男が残っていた一匹の魔物の上に乗り、僕たちを見下ろしながら言った。
「これほどやるとは少し判断を見誤ったかな?まあいいか、あの魔物もそれほど強かったわけでもないしな。ということでここからは俺がお前たちの相手だ」
そういって男は短めの剣を抜くと魔物から飛び降りすごいスピードでこちらに迫ってきた。
そして僕めがけてその剣を振りかざす。
僕はそれを自分の剣で防ぐため剣を男の剣と切り結ぶ。
切り結んだ瞬間、「キンッ!」と金属音がなると同時に男から今度は空気を切るような音とともに剣を持ってない方の拳が飛んできた。
僕はそのまま競り合っている状態の剣を男ごと弾き飛ばし、パンチを回避するのと同時に距離をとる。
男を少しばかりはじくことが出来たものの、男は地面を踏ん張り止まると同時に再びこちらに向かってきた。今度は数個の魔法弾をこちらに向かわせながら。
僕はその魔法弾を展開した魔法壁で受け再び切りかかって来た男の剣をまた剣でうける。
しかし、男がとびかかるように上から振り下ろしてきたので割とギリギリのところで抑えられた。
「チッ………」
危ないところだった………
一先ず剣で払いのけようとすると、それ尾よりも早く男が自らバックステップを踏んで僕から距離をとる。そして自分の代わりに最後の一匹の魔物を向かわせる。
魔物は命令通り僕に向かって全速力で走ってくる。
僕がそれを横に跳ねて避けると魔物はそのまま後ろの木々に向かって突っ込んで数本の木を薙ぎ倒していった。
その横に避けた時を狙ってか、着地と同時に魔族の男の鋭い一撃が横腹狙って向かってきた。
僕はその攻撃を再び間一髪のところで防ぐ。
男は今度は先までと違い一歩も引く様子がなくむしろ僕を押そうと剣で競り合い始めた。
今までと違う行動に少し周りに注意を向けるとさっききにつっこんでいった魔物が戻ってきて僕の方に向いていた。
まずい……挟まれた!
このままだと逃げられずに魔物に全力で突進されてしまう。
「こうだっ!」
しかし、魔物が僕にぶつかる前にラナが僕と魔物の間に入り巨大な魔力障壁を生成して突進してきた魔物を防ぐ。
ぶつかった魔物は勢いよく魔力障壁にぶつかったせいか一瞬混乱した様子を見せた。
その間にラナがさっきも放っていた魔法弾を十個ほど自分の周りに展開して一斉に放つ。
魔物は当たる寸前商機を取り戻したかのように見えたものの、時すでに遅し次の瞬間には魔力弾が勢いよく当たり、魔物には深くて大きい裂傷が刻み込まれた。
「やられたか………」
「ふんっ!」
その様子を見てそのようにこぼした男に向かって剣で競り合いながら蹴りを繰り出し、追撃として数発の魔法弾を放つ。
放たれた魔法弾はいくつかは剣で弾き飛ばされたものの、相手の態勢が崩れていたおかげで一、二発ほど充てることが出来た。
「くそっ、なかなかやるな」
男は受け切った後、素早くバックステップで後ろに下がりながらつぶやく。
しかし、そんなことを言う割にはかなり余裕そうだ。
こちらに来るくらいだからわかっていたけどかなりの手練れだ。
でも少なからずダメージを追っているはずだから、今のうちに畳みかける。
僕はバックステップで後ろに下がった男に向かって駆け出し上段から剣を振り下ろす。
剣は男にあたるすれすれのところでガキンッと再び剣で受け止められる。
(く、押し切れないかぁ)
お互い競り合っているもののなかなか押し切れそうにない。
どうここから切り出すか、そう考えあぐねていると、僕の背後から二発の魔法弾が飛んできて男の体の両脇をかすめていく。
その衝撃で若干男の態勢が後ろに崩され、剣に込められた力も弱くなる。
(いまだっ………!)
僕は瞬時に剣に魔力を流して剣を強化して男の剣を弾くべく、横に強く振り返す。
キンッと鋭い金属音を森の中に響かせて遠い地面に剣が落ちる。
そしてそのまま剣を振り戻していまだ無防備な状態の男に向かって袈裟切りをする。
「ぐっ、ふ、よくもやってくれたな……」
肩から腹にかけてできた傷から血を吹き出しながら男は恨み言のようなことを言って倒れる。
「やったか………」
まだ生きている可能性を考えて倒れている男を見る。
…………どうやら確かに息絶えたようだ。
僕が男の死体の近くで確認していると後ろで援護してくれていたラナが近寄ってきた。
「よかったの?殺しちゃって。同じ魔族だけど……」
「しょうがないよ。明らかにこちらを敵視していたし、それに同族の悪事は同じ僕が何とかしな
いといけないからね。ほっといて魔族と人間の関係をこれ以上悪化されても困るし」
「そっか。そうだね」
「ひとまず、これで元凶を倒したことだし、この死体を埋めたらゲイルさんたちのところに戻ろうか」
二日後以内に閑話を投稿します。たぶん………




