1-15 森での異変
十分の遅刻だけどセーフ……なはず。
「まさかここらあたりの魔物も巨大化現象が起きていたとはな。全く、近頃は何が起きてるんだ!?」
「この前は東の森の方で発見されたんだっけ?ラダナプト大山脈からどんどんと西に向かってきているようね。まぁ、それはそうと今回は余裕をもって倒せる相手で良かったわね。あの子たちもいたし……というかあの事たちは大丈夫なの?」
ルフェは少し離れたところで戦っているはずのルルウとラナベルちゃんについて聞いてくる。
「まぁ、大丈夫だろう。あいつらはすでにGランクどころかDランクにすら収まらないくらいの器だからな」
さっきの戦いを見るにルルウの身のこなしといい、ラナベルちゃんの魔法といい明らかに初心者のものではない。それなりに手練れた動きだった。
もしかしたら冒険者になる前に何らかの理由で戦うことがあったのかもしれないな。
まだ冒険者の中でもよっぽど若い二人があれほどの実力を持っている理由は気になるが、まぁ、二人のためにもあまり深くは詮索しないでおくか。
「そう、ゲイルが言うなら大丈夫ね。それよりもこれ二人が帰ってくるまでにどうにかしておきたいんだけど…………どうする………?」
ルフェはそう言って地面に転がったままのさっき倒した巨大化したフォレストボアを指す。
「そうだなぁ、一応一匹だけギルドに持って帰ってみるか。もしかしたらこの一連の巨大化現象の原因がわかって問題解決に役立つかもしれないし」
「そうね。じゃあ、もう片方のフォレストボアは証明部位だけとって燃やして二人が帰ってくるのを待ちましょう」
俺は片方のフォレストボアを回収して自らの空間収納に入れ、ルフェにもう片方の処理を任せる。
一匹を燃やして処理し終えた時、丁度ルルウとラナベルちゃんが返ってきた。
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「ゲイルさーん、ルフェさーん。倒して金したよー!」
「お、帰ってきたか!」
僕たち二人は倒したフォレストボアの頭と証明部位をもって二人のもとへと戻ってきた。
どうやら二人はもう既に倒し終え、しかも処理まで済ました後らしい。流石はAランクのベテラン冒険者である。
「はい、これさっきの魔物の頭!」
「うん、ありがと。ラナベルちゃん」
ラナが持ってきたフォレストボアの頭と証明部位を二人に渡す。
「うん、二人とも無事そうでよかった………もしかして見えてないだけで怪我とかしてないよね?」
「はい、僕たちは怪我してないので大丈夫です!」
「そう、よかった」
「そうか、じゃあ、少しこの場で整えて先に行くか」
「うん」
「はい」
少しの間だけ休憩をした後、僕たちは再び次のフォレストボアを討伐するために森の中を進んでいった。
「これで、最後のフォレストボアだ!」
僕たちは再び遭遇したを倒しきる。
あれから何度も戦ったおかげで最初戦った時よりもかなりコツをつかめたので効率的に倒せるようになった。
あの一回以降巨大化したフォレストボアやその他の魔物とも会っていないのでそこまで苦戦することもなかった。
今やってる倒したフォレストボアから証明部位を切り取るのも慣れてきた。
「16、17、18、19、20………よし、これでクエストの必要数に達したな」
ゲイルさんが回収した証明部位の数を確認してクエストの必要数に達したことを教えくれた。
どうやらこれをギルドに持って帰ればクエストはクリアだそうだ。
「よし、じゃあこのまますぐに帰るか。もう時間も時間だしな」
僕たちは昼頃に街を出て森に入ったので、必要数の20匹を倒し終えた今はもう既に若干日が傾いていた。
このまましばらく森に入っていたら日が暮れてしまいそうなので早く帰らないとな。
特に夜の森のための備えをしていない今の状態だと日が暮れると大変なことになりそうだし。
「はい、帰りましょう」
ということで、僕たちはこのまま街へと直行で帰ることにした。
そのまま街へと歩き始め森を抜ける頃には日が地平線の近くに見え、空は濃い橙色に染まっていた。
「もう夕暮れだ。急がねえとこのままじゃ街に入るころには日が完全にくれちゃいそうだ。ほれ、急ぐぞ」
ゲイルさんに前から急かされながら街へと歩いている途中、後ろのさっきまでいた森の方から何か低くて鈍い、地面が揺れるような音がしてきた。
「「…………!」」
それにこの場にいる全員が気づいて前を向いて歩きながらも後ろに注意を払っていると、その音はだんだんと大きくなりこちら、森の外へと向かっているのがわかった。
僕の体からは嫌な予感がぞくりと全身を駆け巡り、反射的に後ろの森の方に振り返る。
振り返った瞬間こそ特に問題もなかった森だが、その姿は音が近づいていくにつれて夕日に照らされた森の木々が揺れ、その木々の身長を越えるほどに舞い上げられた土埃が少し見えるようになった。
「なんかやばいっ…………!」
僕はその光景を見て短く叫ぶようにそういうとそれに反応したのかゲイルさんとルフェさんも一瞬だけ振り返り後ろの状況を確認すると再び前に向き直って……
「少しまずい。ほら走って逃げるぞ!」
そう、短く言うと走り出した。
僕らもそれに続いて走って街へと向かう。
しかしながら低くて鈍い音、足音と何かによる地響きの音はいくらは知ってもだんだんと僕たちに近づいてきている。
試しに僕は背後にもう一度振り返ってみると………
なんとそこにいたのは森から出てきたと思われる大量のそれもいつかのように巨大化した魔物の集団だった。
「ゲイルさん!後ろ、巨大化した魔物だらけですーーーー!」
僕がそう報告すると、流石のゲイルさんも驚きを隠せない反応を示して、再度ちらっと振り返って確認をする。
「……………まじかよ!」
言葉とともにゲイルさんは少し表情に余裕がなくなりかけていた。
そしてもう一度口を開いて、
「やばいな。流石にこの量の魔物となると街に着いたとしてもどうにもならないかもしれない。むしろ、犠牲が激増しそうだ」
「じゃあ、どうするんですか!」
「ここで、相手するしかないだろー!」
ゲイルさんは大きな声でそう言い、大量の魔物がいる背後に向かって振り返り腰にぶら下げていた剣を抜き構える。
どうやらここでゲイルさんはあの巨大化した魔物の大群を受けるつもりのようだ。
それに合わせてルフェさん、僕、ラナも続いてそれぞれの武器を構え魔物に対して向かい合う。
「よし、どうにかこうにかしてあれを倒しきるぞ、ルフェ!ルルウとラナベルちゃんは俺たちのことは気にせず無理せず戦ってくれ。いざとなったら逃げてもかまわないから」
「わかったわ」
「「わかりました」」
僕たちはゲイルさんの言葉に答えてから、武器を構えなおしさらに彼らへの警戒を強める。
数はここから見えるだけで50は確実にいる。
今も森から数匹出てきているので何か原因は森の中にありそうだ。
それはともかく、一先ずはこの森から出てきている魔物たちをどうにかしなくては。
まずは魔物たちが射程内に入ったのを確認してラナとルフェさんがそれぞれ魔法と魔法のかかった弓矢で攻撃を仕掛ける。
それが当たった魔物たちは動きを止めたり倒れたりするもののもいたがいまだに侵攻を止めないものも大勢いで抑えきれていない。
一先ず、このままルフェさんとラナに後方支援兼遠距離攻撃をしてもらうそうだ。
僕とゲイルさんはその止まらない魔物の大群めがけて放たれる魔法や矢とともに駆け出し構えた剣で魔物に切りかかる。
先方にいた魔物たちは見る限りもともとそこまで強くない魔物なので巨大化してもそこまで影響がなく剣で数回切ったり払ったりして魔物と魔物の間を倒しながら進んでいく。
しかし、時間帯が最悪なことに夕暮れしかももう既に太陽が半分くらい沈んでおりだんだんとあたりが暗く魔物が見えづらくなってきた。
今はまだある程度の光が沈みかけの太陽から放たれているので何とか継戦できているが、このまま真っ暗になってしまったら流石に魔物ではない僕たちじゃ闇夜に慣れているであろう魔物を今のように相手にするのは難しい。
きっと、怪我をしないように立ち回るので精いっぱいで攻勢に打って出るのがほぼ不可能になるかもしれない。
光源を確保しなければこのままじゃ撤退するしかなくなる。どうにかして確保できないか。
そう考えているうちにも太陽は刻々と沈んでいき、もう完全に沈み切りかけるとなったとき。
「いけぇっ、サンライト」
僕の背後、ラナとルフェさんがいるところから掛け声とともに何か魔法弾が僕たちの上空へと放たれ、ある程度の高さに達した瞬間その魔法弾から強い光が放たれて辺り一帯を明るく照らした。
どうやら二人のうちどちらか、または二人がこの暗闇を解消するためにやってくれたようだ。
よし、これでさっきよりも戦いやすくなった!
近くで戦っていたゲイルさんの声と剣戟の音も暗くなっていた時よりも少し大きく激しくなっている。
僕は再び周りの魔物討伐に集中することにした。
「ルルウー!来たよー!」
「あれどうしたの?ラナ」
軽く魔物の相手をしながら声のする方を向いてみると、さっきまで後ろにいたはずのラナがいつの間にかすぐそばにいた。
僕は一回周りにいる魔物と距離をとるために火属性魔法を織り交ぜた剣で辺りをひと薙ぎする。
「で、どうしたの?わざわざ後ろからここまで来て」
「えっとね、一緒にいたルフェさんからの伝言でひとまずここら辺にいる魔物は全部ルフェさんとゲイルさんが何とかするから、わたしとルルウで巨大化した魔物が出てきている元凶を探してきてほしいんだって……」
「そうなの、わかった」
こうしている今も少しずつだけれども森の方を見ると森の中から出てきているのがわかる。
確かに、ここにいる魔物倒しきっても森から出てきているんじゃ全然終わらないから。
「じゃあ、このまままっすぐ魔物を倒しながら森に向かって進んでいくか」
「うん、えい!じゃあ、行こう!」
途中乱入してきたネズミの魔物もラナに魔法を当てられて倒せたし、このまま森に向かって進んでいこう。




