1-14 初めてのクエストwithAランク冒険者
僕たち四人は店で昼ご飯を済ませると再び冒険者ギルドに来た。
「そういえば、お前たちクエストの受け方は知ってるか?」
「えーっと、少しだけわかります」
一応、最低限のことはギルド職員さんから聞いているからわかるが、まだ実際にやったことはないからいまいち自信はない。
「そうか。じゃあ、一応俺が今から見本としてやるから覚えとけよ?これ、冒険者業をするにあたって結構大事なことだからな」
「わかりました」
「よしじゃあまずはクエストを選ぶぞ」
僕たちはクエストの張られているクエストボードの前に行く。
クエストボードには護衛や魔物討伐、素材採取などの様々なクエストの依頼書が数多く張られている。
「そういえば、お前たちは魔物との戦闘はできるか?それによって受けるクエストを変えるんだが……」
「ゲイル……この子達はまだ初心者なんだから、流石にそれは無理なんじゃ………」
「できますよ」
「できるの………?」
「はい」
「そうかそうか、じゃあ魔物討伐でもいいな?まぁ、むしろ俺にとってはその方がありがたいが。流石に薬草採取なんかは若干きつい」
「ゲイル、あなた………自分から言ったのにそれはないでしょ………」
戦闘が好きなのかゲイルさんはあまりそういうクエストは得意じゃないようだ。まぁ、僕も折角Aランク冒険者のゲイルさんたちと一緒にやるのに薬草採取なんかのクエストだとなんだか申し訳なくなってくるし。
僕自身、実際に普通に戦闘くらいならできるしね。
僕が了承したということでゲイルさんはかなりノリノリでクエストボードに張ってあるクエストを選別している。
………隣に立っているルフェさんはそんなゲイルさんを見てため息をつきながらあきれているけど。
もしかしていつもこんな感じなのかな?
まぁ、このままクエストをえらぶのはゲイルさんに任せておこう。
「よし、これはどうだ?」
ゲイルさんがクエストボードとにらめっこしだしてからしばらくして、ゲイルさんが一枚の依頼書を手に取って後ろで待っていた僕たちの方に振り返った。
僕たちはその手に持っていた依頼書を受け取って内容を見てみる。
内容は………
『フォレストボア討伐』
フォレストボアというのは森にすむボア系の魔物だ。
場所はこの街から北の方向にある比較的近い森のようだ。
ボア系の魔物の中では一番ではないが比較的大きめの魔物だったはず。そのくせその巨体に見合わないスピードで森の中を走り回るそれなりの強さのある魔物である。
ゲイルさんは僕たちにしっかりと気を使ってくれたのか、僕たちがちゃんと倒せるレベルの魔物相手のクエストにしてくれたようだ。
ただ気になるのは………
「ちょっとゲイル!これ推奨ランクC以上なんだけど………!」
そう、いまルフェさんが言ってくれたようにこれの推奨ランクがC以上なことである。
ゲイルさんとルフェさん二人はAランクだからもちろん問題ないが、僕とラナはまだなったばかりのGランクだからこの推奨ランクを越えていない。
僕たちってこのクエストって受けられるのかな?もしかしたら受けられないんじゃないかな?
ていうか今更になって思ったんだけど、まだ見習い冒険者扱いであるGランクの僕たちって魔物討伐のクエスト自体受けられるのかな?
―受けられないような……
「まぁ、大丈夫だろ。いざとなったら俺たちがアシストしてやればいいし、お前たちも大丈夫だろ?」
「はい、倒せると思いますけど……」
「うん、わたしも特に問題はないです」
「それなら全く問題ないな!じゃあ、早速受付しに行こうぜ」
大丈夫なのかな。
「おう、クエストの受付をしに来たんだが」
「おー、これはこれは、ゲイルさんとルフェさん。わかりました、では、受ける依頼書をください」
「ほいこれだ。そうそう、俺たちの後ろにいるこいつらも一緒だからよろしくな!」
そういってゲイルさんの後ろにいた僕たちを受付の職員さんにわかるように指さす。
「わかりまし………いや、このクエストCランクなんで、Gランクのその子たちは受けられないんですけど………」
「俺たちがいるから問題ないだろ?な、だから受けさせてくれよ」
「いやでも規則………」
「その規則は冒険差hを守るためのものだろ?だから、それは俺たちがついてるから問題ないって!だから、許可してくれよ!」
「でも…………」
やっぱり本来なら規則でだめらしいがゲイルさんが無理やりにでも受けられるように職員さんに言い寄っている。
なんだかこのままいくと職員さんがゲイルさんに負けて許可されそうだ。
「…………わかりました。許可しましょう」
あ、結局職員の人が折れちゃった。
結局あのまま受付が済み、僕たちは今街の外に出て目的地の森へと向かっていた。
「あれでよかったんですか?」
「おう、特に問題ないだろ?きっと大丈夫だって!」
「ゲイル………私にはそうは思えないんだけど………」
本当に大丈夫なのかな。
ゲイルさんってかなり無茶苦茶な人だなぁ。
色々と頼りにはなる人だけどなぁ、これから話を聞くのはルフェさんの方にしておこうかな。絶対常識とかはルフェさんの方がしっかりしていそうというか、絶対そうだ。
ゲイルさんになんかと頼っていると何かとんでもないことになりそうな気もするし。
「まぁまぁ、それはこの際いいじゃねえか。クエスト受けられたんだからさ」
少し気まずくなったと思ったのかゲイルさんが話を強引に断ち切る。
「それよりも………ルルウ、それとラナベルちゃんは何を使って戦うつもりなんだ?俺とルフェは主に俺が剣でルフェが弓と魔法なんだが………」
ゲイルさんが腰に下げた剣をアピールしながらそういう。さっきまで気まずそうにしていたのが嘘かと思えるほどのテンションで。
その後ろでルフェさんも背中に肩から下げている小型の弓を顔に苦笑いを浮かべながら少し遠慮がちに見せてくれている。
ルフェさん、いつもゲイルさんにこうやって振り回されてばかりなのかな?
それはそうと僕たちの武器か。
確かにお互いに知っておけば戦うときにすごい有利だよね。お互いに干渉しないようにできるだろうし、いざとなったときにカバーもしやすそうだし。
それにうまくなるためのコツみたいなものを教えてくれるかもしれない。
ゲイルさんは剣でルフェさんは魔法を使うって言っていたから僕が学べることはありそうだし。
兎に角情報共有しよう。
「えっと、僕は剣と魔法です」
「わたしは、魔法で戦いますー!」
「そうか、わかった。えーっと、ルルウ!県のことで何かあったらいくらでも頼ってくれて構わないぞ!魔法の方は一応使えるがルフェの方が得意だから、何かあったらルフェの方を頼ってくれてかまわない。だよな?」
「え、うん、いくらでも頼ってもらってかまわないわよ?」
僕の期待していたようにしてくれるらしい、やったー。
何て話しているうちに目的地の北の森の入り口に着いた。
「よし、じゃあこれからは少し真剣にいかないとな。お前たちもちゃんと周りに注意をしながら進んで行けよ」
森に入る前にゲイルさんが僕たちにそう言葉を投げかけ、早速森の中に入ることにした。
「ねえねえ、ルルウ。わたしたちちゃんとフォレストボア倒せると思う?大丈夫かな?」
森に入ってすぐにラナがすすす……っと横に来て僕にそう聞いてきた。
「うん、大丈夫だと思うよ。ラナ魔法上手だし。それにゲイルさんとルフェさんっていうAランクの凄腕の冒険者がいるんだからそんなに心配しなくてもいいと思うよ」
ラナがなんだか心配げだったのでそんな風に言ってみる。
「おいおい、ルルウよ。そんなに期待されちゃあちょっと荷が重いぜ。まぁ、でも任せておけ二人とも」
それを聞いていたのか、そんな風に軽口を叩いてきた。
荷が重いって言ってるけど、そこまで重くはないんだろうなと思うながら僕はそれを聞き流しながら、ラナの方に向き変えると。
「わかった。じゃあ頑張るよ!」
どうやら少し自信を出すことが出来きたようだ。
まぁ、僕はラナの魔法はそんな心配になるほど弱いものじゃないと思うけど。むしろフォレストボアぐらいなら特に問題もなさそうな気がするが。まぁ、僕の推測だけど……
でもこれほど自信がなかったのはもしかすると最近倒したあの熊が原因かな。あのやけに大きくて色々とおかしかった熊。
あの時予想以上に自分の魔法で与えていたダメージが少なかったからそれかもしれないな。
あれはやけに大きいし後で触ってわかったことだけど予想以上に魔法に対する耐性が強かったからしょうがないんだけど。
それはともかく僕はもう少し気を締めないとな。
Aランクのゲイルさんとルフェさんがいるからといっても流石に油断しすぎだ。
それに探知系の魔法も使ってなかったし。
僕はまず探知魔法を展開して、さらに自身の意識も外に向けて近づいてくるであろう魔物たちに備える。
森に入ってしばらく歩いたころ。
ようやく探知魔法にそれらしき魔物の反応が僕たちから見た右前の方向にした。
反応の動き的にどうやらあちらもこちらに近づいてきているみたいだしこのままいけばすぐにでも接敵しそうだ。
僕が敵を確認してそちらの方向を向くと同時に僕の前にいたゲイルさんも同じ方向を向いた。
「む、あちらから魔物が来る。みんな武器を構えろ!」
どうやらゲイルさんは何かの方法で僕と同じように魔物を探知したようで僕らに戦闘の準備を促す。
僕らは言われた通りにいつでも戦えるように構える。
「ブルルルゥーーー」
程なくして気が立ったような唸り声をさせながら五、六匹ほどのフォレストブルと会敵した。
「よし、じゃあルルウとラナベルちゃんは好きなように戦っていいぞ。俺たちは少し後ろでお前たちを援護しながら戦うから」
「一応、身体強化の魔法掛けておいてあげるね」
そういってゲイルさんとルフェさんが少し後ろに下がった。
二人は新人の僕たちがやりやすいようにしてくれるようなので、今回はそれに甘えさせてもらおう。
僕はフォレストブルたちと向かい合い剣を構える。
するとフォレストブルたちは「ブルゥ……」と短く唸るとまっすぐこちらに向かってきた。
「ほっ……」
「おおっとっと………」
僕とラナは向かってきたフォレストブルを左右に避け、僕は再び剣を構えラナは周りに魔力弾を展開させる。
そして僕がフォレストブルに向かって切りかかるのと同時にラナも僕から少し遠くにいるフォレストブル向けて周りに展開していた魔力弾を放ち、お互いに二匹ずつ倒した。
倒した僕とラナは後ろを向くとゲイルさんとルフェさんがささっと残りの二匹を倒していた。
「二人ともかなり手際がいいわね。ねぇ、ゲイル」
「そうだな。これは期待の新人だな」
しかも片手間に僕たちのことを褒めてくれているようだ。流石はAランク冒険者。この程度の魔物を倒すくらいなら朝飯前なのだろう。
そんな人達にほめてもらえたのは結構嬉しいな。
「っと、一先ず倒したフォレストボアの討伐証明部位を持って帰るために切り取るか」
「ほら、まずは私たち二人が手本見せるから二人は見て覚えてね」
「「わかりました」」
四人で六匹分のフォレストボアの証明部位を回収すると僕たちは再び先へと足を進め始めた。
「左前方向。たぶんフォレストボアが接近してきている。準備しておけ」
少し進んだ後、再びフォレストボアと会敵した。
探知魔法の反応が近づいていくにつれて左前からドシンドシンと足音も近づいてきた。
―うん?なんだかやけに足音が大きくないか?
「なんだか変だな……」
ゲイルさんもそれに気づいたのか不思議に思って警戒を強めている。
そしてついに木々の間からその姿が見えた。
「ちょっと………大きすぎないかしら…………」
その姿は普通のフォレストボアではありえないおよそ二メートル弱はありそうな巨体をしていた。それも三匹いる。
明らかにおかしい。
なぜ、数日前に花畑の近くの森で会った熊といい、このフォレストボアといいこの街の近くにはありえない大きさの魔物がいるんだ?
それはそうと今はこの魔物を倒すことを優先しよう。
流石にゲイルさんとルフェさんがいるから大惨事にはならないだろけど、流石にあの体から出るであろうパワフルな突進をもろに受けたら一溜まりもない。
慎重に行かないと……
「一匹ずつ俺とルフェで相手するから、もう一匹頼んだ!」
これほどの不可解なことに直面したにもかかわらずゲイルさんはすぐに僕たちに指示を出してくれた。
「わかりました。じゃあ、いくよラナ!」
「うん、行こうルルウ」
まずはラナが三匹のうちの一匹の注意を引くために魔力弾を当ててこちらに誘導する。
案の定、当てられた一匹は激高しこちらに向かって突進してきた。
僕とラナは必死に走って二人の迷惑にならないように距離をとる。
途中、フォレストボアの速度が速く追い付かれそうになった時に回避して何とか十分な距離をとることが出来た。
今回は前回よりも少し厄介そうだ。
攻撃力の大きさ的には前回の熊の方が強いと思うけど、こちらのほうは俊敏性が高いせいで攻撃が当てづらい上にこちらの回避もしにくい。
今のところうまいこと避けながらちょくちょく魔法で攻撃しているのだが、ラナのほうが普段の生活で離れたが戦闘などではまだしっかりと体の大きさに慣れていないのか若干危なっかしく、そのたびに少しフォローを入れている。
さっさと倒してあげないとラナの負担が大変なことになりそうだ。
さっさと決着をつけよう。
どうするかは大体決まっている。
この魔物の問題は素早いことなんだからそれを封じてしまえばいいのだ。
「ラナ!どうにかあいつを止められない?」
「うーん、ちょっと難しそうだけど何とかできそう。ちょっと待ってて!」
何とかできそうということだけど流石にラナにターゲットが向いている状態だと少し難しそうだから僕が注意を引いて魔法を当てやすく動きを誘導する。
「よしおっけい。いっけー」
僕があまり暴れないように誘導しているフォレストボア向けてラナが拘束の魔法らしきものを放ち、その動きを束縛する。
「よし!では行く」
僕は体全体に風属性の魔法を纏って、最大限加速してからフォレストボアに向かって剣を切りつける。
すると僕がすれ違った瞬間フォレストボアの頭部は勢いよく飛んでいき魔法が解けると力なく体が横たわった。
「よし、なんとか問題なく倒せたぞ」
一先ずこの斬り落とした頭をもってゲイルさんたちのところへ向かおうか。
次回から19:00ごろに投稿することにします。
投稿頻度が下がる可能性がありますが今までと同じように四日おきに出せるように努力はします。




