【LEVEL:1】選べない
「なんで10歳と8歳の子供がこんな事に…なんで俺が…」
そう呟いて田村は画面に写る愛しい息子たちに目を向ける。
そうしていなければ幼い息子たちが不安になるからだろうと私は解釈していた。
【あと5分です。】
無情にもまたあの声がする。
「選ばれなかった方には死。どちらも選ばなかったら両方が死。」
そう何度も呟いて田村の顔はどんどん曇っていった。
「おい!!どちらも選ばずに俺が死ぬってのはないのか!!」
天井に向かってそう叫ぶ田村。
「パパ??」
画面に写る息子たちが不安そうに田村を呼ぶ。
【ダメです。それはルール違反です。】
声は田村の必死の意見もあっけなく却下する。
その田村の意見が却下され私は落胆した。
もし、自分が選択の番になったら自分をと私も考えていたからだった。
そんな考えは甘かったと痛感していると…
「パパ…早くおうちに帰りたいよー」
画面に写る子供のうち、少し小柄な方の子供が泣き出してしまった。
「実。大丈夫だよパパが助けてくれるからね!!」
泣き出したのは弟の実君らしい。画面に写っている泣き出した弟を慰めているのはお兄ちゃんの幸司君。
「お兄ちゃん…」
実君は幸司君の声で少し落ち着いたようだった。
そんな2人のやり取りを見ていると、日常から面倒見のいいお兄ちゃんの幸司君と
お兄ちゃんの後を付いて回る仲良しな2人の姿が目に浮かび
私は心臓をえぐられるような思いを感じた。
【あと2分です。】
幼い子供の命まで奪おうとする声。
「ちくしょー!!!!」
2人の姿を見ながら泣き叫ぶ田村。
選べるはずがない。親にとって子供とは順位をつけれるものじゃない。
兄だから、弟だから、と我慢させることはあるかもしれない。
でも、親にとって子供の存在価値は兄だからとか弟だからなんてもので比べれるものではない。どちらも平等に愛しているのだから…。
【あと1分です。】
無情にも最後の時を告げる声。
「選べない…」
田村はポツリとそしてどこか覚悟した声で呟く。
私はその言葉に驚きつい叫んでしまった。
「2人共失っていいんですか!?」
そしてその私の声のすぐ後に…
【時間切れです。田村和志さん、選択してもらえず残念です。では、息子さん2人共に死んで頂きます。…が、幼いお子さんを苦しめながら殺すのも私たちも気が引けますので…】
ビシャ!!!!!!!!
画面から嫌な音がした。
田村はワナワナと体を震わせて立っている。
「きゃーーーーーーー!!!」
鈴木が叫ぶ。
私は田村から画面へと目をうつした。
「うっ。」
思わず私は口を塞いだ。
2つの画面には飛び散った血が付き、そしてその血の跡の隙間から小さな子供の頭が転がるのが見えた。
「みのるぅーーーーー!!!こうじぃーーーーー!!!」
田村の声が響き渡る。
画面に走っていこうとする田村を天井から伸びてきた手が捕まえて田村と共に消えていった。
(なんなんだ。ここまで容赦なくやるなんて…誰の仕業なんだ…)
私は目の前で次々と繰り広げられる惨劇に恐怖と怒りを覚えた。