【LEVEL:1】2つの画面
4人で何が起きたのか分からない状況のまま一時が過ぎたのち…
コンクリートの壁に付けられた大きな2つの画面に映像が写し出された。
それはまるで古い映画のフイルムから出されるような映像で、とても読みにくいものだったのだが何も事が起きなかった中での唯一の変化に、4人ともその画面に目を奪われた。
━おはようございます━
━高橋 優一さん(たかはしゆういち)23歳。━
━田村 和志さん(たむらかずし)55歳。━
━鈴木 栄子さん(すずきえいこ)30歳。━
━市村 誠司さん(いちむらせいじ)34歳。━
━気分はいかがですか?突然のことで驚かれたでしょう?しかしご安心下さい。何も、皆さんをとって食おうなどという事はございません。━
最初の映像にはこう書かれていた。
「なんですかコレ?なんで私の名前と年齢が?」
1番に発言したのは私の横に座っていた女性の鈴木栄子だった。
「これ…皆さんの名前で合ってるんですか?」
私から1番遠い位置に寝ていた若い男性がそれぞれの顔を見ては尋ねる。
「そう…みたいですね。私は市村です。」
私は男性に答える。
「なんなんです?コレ?」
鈴木栄子が私に再度、質問する。
…が私にも分かるはずも無く
「私にもさっぱり…。」
と答えることしか出来なかった。
「見てください!!」
そう突然叫んだのは1番年配の田村和志。
田村が指差す画面に目を戻すと…画面には新しい画像が照らし出されていた。
━自己紹介はお済みになりましたか?━
━おめでとうございます!!皆さんは厳然な抽選から選ばれた方々です。皆さんには今からある選択をして頂きます。その選択が終了次第 ここから解放させて頂きます。ただ、時間内に選択するだけでいいのです━
不自然なこの状況に似つかわしくない丁寧な言葉遣いの画面の文に私は少し違和感を覚えた。
(厳選な抽選?選択?なんの事だ?)
私の疑問は他の3人にもあったようだ。
「厳選な抽選の意味も時間内の選択も意味がわかんねーよ!!」
とすかさず高橋優一が叫ぶ。
(さすが若者。自分の状況が安全を確保できてないのにこの強気さ。本当に若いってのは素晴らしい。)
高橋の言葉に反応するかのように画面はまた別の画像へと変わる。
━では、高橋優一さんの質問にお答えして、さっそく高橋さんから始めて頂きましょう。百聞は何とやらといいますから━
そう告げて2つの画面は突然1つ1つの画面に1人ずつの映像を映し出した。
写し出された画面の中の2人は鎖に繋がられ少し苦しそうな表情だ。
…と。
「真美!!!太一!!!」
高橋が画面に向かって叫んだ。すると、画面に写し出された2人がこちらを向き同時に
「兄貴!!!」
「ゆうちゃん!!!」
と高橋に向かって叫ぶ。