【LEVEL:1】運命の時
シャボン玉の歌を歌いつづける最愛の妻と最愛の娘。
2人の声と2人の姿を目に焼きつけて
私は…
「すまない慶子…。娘の舞を選びます。」
呟く様に告げた。
「いいの。あなた。舞をお願いね。必ず幸せにしてね。私はあなたと知り合ってから本当に幸せだった。舞とあなたと過ごせて毎日が幸せだった。決して自分を責めたりしないでね。あなたは何も悪くないわ。」
そう言う慶子の顔が涙でグシャグシャになっていく…。
【舞さんで受け付けました!! おめでとうございます。舞さんには市村誠二さんと無事に帰宅して頂きます。残念ながら選ばれなかった慶子さんにはこの場で死んで頂きます。】
妻が死ぬのが当たり前かのように話す声。
「なんなんだお前らは!!!」
私は姿の見えない声に向かって叫んだ。
【選択したのはアナタです。今回は娘さんには残酷すぎるので娘さんの画面はシャボン玉の歌の歌詞でも流しておきましょう。では…】
そう声が途切れると、慶子は苦しみだした。
私が8分間も悩んだせいで慶子は8分もの間、毒ガスに苦しみもだえて死んでいってしまった。
毎日綺麗に整えていた髪の毛も、
そんなに濃くはないがキッチリとしたメイクも
グチャグチャになり娘に優しく良き母
良き妻だった美しい慶子はそこにはいなかった。
何も知らない舞が画面の向こうでシャボン玉の歌を歌っている…
その声を聞きながら私は慶子との思い出を走馬灯のように思い出していた。
(いつも笑っていた慶子。いつも優しかった慶子。舞がお腹に宿ったとき、30歳をお互いに過ぎてたから跳ね上がって喜んだな…。舞のためならいつでも死ねるって何度も言っていたな。その度に慶子がいなくなったら俺が困るって答えてたな。すまない。慶子…)
そして天井から手が伸びてきて私を天井へと…