【LEVEL:1】4人目
そして【選択】を終えた鈴木は最後に
「お似合いの死に様よ…」
と吐いて笑いながら天井へと消えていった。
辺りは静まり返り、さっきまで狭く感じていた部屋が急に広く感じてきて私は身震いをした。
そして最後になった私に課せられる【選択】を待った。
【お待たせしました。市村誠二さん。選択をお願いします。】
さっきの鈴木の選択が早く済み、機嫌がいいのか声は先ほどまでとは違い少し明るく聞こえた。それが私にはとても不愉快でたまらなかった。
そして…
2つの画面に映し出されたのは…
「慶子!!!舞!!!」
私は画面に写った妻の慶子と娘の舞に向かって叫んだ。
【なお、奥様にはルールは説明してありますので。】
淡々と説明する声。
「パパ!!!パパ怖いよー」
泣きながら私に助けを求める愛娘の舞。
「大丈夫だよ。舞…泣いたりしたらダメだ。ママもすぐそばにいるからね。」
すぐ目の前に居るのに、抱きしめてあげることの出来ない状況に苛立ちながらも、娘を安心させるために笑顔で私はそう答えた。
「アナタ…」
元気の無い声で私を呼ぶ最愛の妻、慶子。
「大丈夫だ。心配ない。」
そう言いながら私の声が震える。
震える私の声で妻は悟ったのか
「いいの。舞を選んで。」
そう呟く慶子。
「ダメだ…そんなのダメだ。慶子を失うなんて…。」
私は涙を我慢して慶子に答えた。
「ダメよ。舞はまだ4歳よ。私たちの宝物よ。舞を失ってまで私は生きたくは無いわ。」
慶子の言葉に私は黙る。
「いいの。舞が、アナタが幸せに生きてくれたら私は。恨んだりしないわ。アナタの選択は間違ってなんか無いのよ。」
寂しそうに、でもどこか覚悟の決まっている強い口調で言う慶子。
(ダメだ。ダメなんだ。慶子も舞も俺には大切な家族なんだ。2人共に愛しているんだ。なんで俺が死ぬって選択はないんだ。)
妻の言葉に私は何も言い返せずただこの状況をどうしたら切り抜けるか必死に考えていると…
【あと5分です。】
死の時を刻む声。
(悩めば悩むほど時は経ちそしてその時は死に逝く時間と比例する。悩んだ分だけ選ばなかった方の死は苦しんで死んでいく事に…。でも、選ぶことができない。慶子も舞も愛してるんだ…)
悩んで黙っている私に聞こえてくる悲痛な声。
「パパー怖いよーママに会いたいよー」
舞が泣いている…。
まだ4歳の幼い我が子。母親を失ったらどんなに悲しむだろうか。そして母親を失った原因が父親だと知ったらこの子は…
その声に妻の慶子は
「舞。大丈夫よすぐにおうちに帰れるからね!!帰ったらママとパパと舞の大好きなシャボン玉飛ばそうね!!」
慶子の声で安心したのか娘の舞は泣き止み
「本当に??絶対だよ!?舞ねーいっぱい飛ばすんだー」
と返事をして歌を歌いだした。
シャボン玉飛んだー
屋根まで飛んだー
屋根まで飛んでー
壊れて消えた
妻の慶子も一緒になって歌いだす。
私はそんな2人を見つめながら涙が止まらなかった。
「なんで…こんな事に…」
【あと2分です。】
私はその言葉を聞いて覚悟を決めた。