深淵
少女の澄んだ瞳を 闇は覗きこんだ
それはとても深く冷たい
氷のように暖かく 炎のように凍てつく
その彼女の中を それは覗いた
すべてを愛おしむ彼女は
それを快く受け入れた
闇は温かい苦痛と冷たい愛情を注ぐ
蠟燭の灯火のように仄かに照らし
轟々と燃え盛る火事のように
彼女は闇に包み込まれた
自らが持つなけなしの幸運は
全て喰らい尽くされた
与えられた恩情は
泣き叫ぶことだけだった
燃え尽きた彼女の中に芽吹くものはなく
ただ 深く深くしんしんと
闇が巣食うのみだった