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深淵

作者: 少女遊 夏野

少女の澄んだ瞳を 闇は覗きこんだ

それはとても深く冷たい

氷のように暖かく 炎のように凍てつく

その彼女の中を それは覗いた


すべてを愛おしむ彼女は

それを快く受け入れた

闇は温かい苦痛と冷たい愛情を注ぐ

蠟燭の灯火のように仄かに照らし

轟々と燃え盛る火事のように

彼女は闇に包み込まれた


自らが持つなけなしの幸運は

全て喰らい尽くされた

与えられた恩情は

泣き叫ぶことだけだった


燃え尽きた彼女の中に芽吹くものはなく

ただ 深く深くしんしんと

闇が巣食うのみだった



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