届きそうな午後
掲載日:2026/05/02
淡い午後。
息を潜めて、ゆっくりとドアを開ける。
すやすやと眠る存在は、輪郭すら柔らかい。
起こさないように、少し遠い位置にそっと座る。
テーブルのグラスを少し撫でる。
硬い冷たさと水滴だけが手に残る。
つい、届かない距離を見つめている。
目が覚めた。
とたんに逃げられる。
触れるのは視線だけ。
口に含む麦茶が冷たくて、やけに染み入る。
じっと、ただ待つ。
あくびがひとつ。
伸びがひとつ。
いつのまにか、もう少しで届く距離。
膝にチクリと、爪が刺さる。
重みは思ったよりも暖かかった。
そっと、触れてみる。




