第9話 刺客会議
神奈川王国が、沈黙した。
正確には、刺客長との通信が途絶えただけだ。
だがそれは、45国にとって“敗北”と同義だった。
――場所不明。
――対象、生存確認不能。
その報告が届いた瞬間、会議室の空気が凍る。
円卓。
四十五の席。
だが、満席ではない。
「神奈川が……やられた?」
誰かが、震えた声で言った。
「馬鹿な。再演だぞ?
あの能力は、国土級だ」
「だからだ」
低い声。
席の中央に立つ男――
国家連合刺客統括官。
「国土を壊された。
つまり、敵は“国家規模”を超えている」
沈黙。
「観測記録を再生する」
壁に、映像。
夜明けの遺都。
海が消え、街が戻る瞬間。
そして――
炎と雷。
「……炎の出力、未測定」
「雷能力、因果干渉を確認」
「異能というより……」
誰かが、呟いた。
「災害だ」
ざわめき。
その中で、一人、静かに手を挙げた国があった。
「発言を」
声は、落ち着いている。
「……静岡王国」
火山を背負う国。
「我々が、次に出る」
ざわめきが、さらに広がる。
「待て、静岡。
神奈川が負けた相手だぞ?」
「だからだ」
静岡の代表は、淡々と続ける。
「炎は、熱だ。
熱は、流体に弱い」
会議室の空気が、冷えた。
「我々の本国能力は、
“水圧”でも“津波”でもない」
静岡代表の目が、光る。
「相変化だ」
凍結、沸騰、臨界。
熱を、逃がす。
熱を、暴走させる。
「炎を使えば、噴火。
使わなければ、沈降」
誰かが、息を呑む。
「……地獄だな」
「承知している」
静岡代表は、席を立つ。
「だが――
このままでは、全国家が焼かれる」
その言葉で、会議は決まった。
「静岡王国、前線投入を承認」
木槌が、鳴る。
――――――――――
その頃。
俺は、遺都の屋上にいた。
朝日が、昇る。
神奈川を越えたばかりなのに、
胸が、重い。
「……来るな」
トウマが言う。
「ああ」
炎が、ざわつく。
上限なき炎が、嫌がっている。
これは――
相性が悪い。
風が、変わる。
湿気が、増える。
遠くで、地鳴り。
「……火山?」
「静岡だ」
トウマが、確信を持って言う。
次の国が、動いた。
東京の地平線の向こうで、
赤く、脈動する光。
噴火の前兆。
「……なるほど」
俺は、拳を握る。
「次は、燃やせない相手だ」
45国、二国目。
静岡王国、襲来。――
静岡王国編開幕!的な




