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文明崩壊、3000年後  作者: うなぎ
静岡王国編
10/12

第10話 相変化の檻

最初に感じたのは、熱が逃げていく感覚だった。

 炎を灯していないのに、体温だけが奪われる。

 湿った風。重たい空気。肺が鈍る。

「……囲まれてるな」

 俺の言葉に、トウマは短く頷いた。

 遺都東京の外縁部。

 かつての多摩丘陵――今は、静岡王国の前線領域。

 地面が、妙に柔らかい。

「灰だ」

 トウマが言う。

「火山灰……もう降ってる」

 その瞬間。

 霧が立ち込めた。

 視界ゼロ。

「来るぞ!」

 直後、地面が凍った。

「――ッ!」

 足を取られる。

 炎で溶かそうとして、止めた。

 燃やせば、蒸気爆発が起きる。

「判断が早いね」

 霧の中から、声。

「静岡王国・前線部隊。

 これより――処理を開始する」

 霧が、裂ける。

 五人。

 全員、能力者。

「……多対二、か」

「正確には」

 別の声。

「環境含めて、多対二だ」

 まず動いたのは、女。

 手を振ると、空気が一気に冷える。

「相変化一番手。

 ――凍結圧縮」

 霧が、一斉に氷になる。

「くそっ!」

 俺は炎を“内側”で回す。

 外に出さない。体温だけを保つ。

 次。

 男が地面を踏み鳴らす。

「二番手。

 ――臨界泥流」

 灰と水が混ざり、動く地面になる。

 沈む。

「トウマ!」

「分かってる!」

 雷が走る。

 地面の“結果”を斬る。

 一瞬、足場が固定される。

 だが――

「三番手」

 後方の男が、淡々と告げる。

「――蒸気遮断」

 熱が、消えた。

 俺の炎が、冷やされる。

 違う。

 奪われている。

「……炎を、使わせない気か」

「正解」

 五人目が、前に出る。

「そして私は――」

 目が合う。

「噴火誘導」

 嫌な予感。

 地鳴り。

「――ッ!」

 遠くで、赤い光。

 富士火山帯。

「お前ら……」

 俺は、歯を食いしばる。

「俺が燃やせば噴火、

 燃やさなければ――」

「沈む」

 女が、即答する。

「東京ごと、ね」

 完全な詰み構成。

 炎メタ。

 雷封じ。

 環境制圧。

 トウマが、低く言う。

「……ミコト、俺が引きつける」

「馬鹿言うな」

「いいから聞け」

 雷が、荒れる。

「俺は“結果”を斬れる。

 噴火という未来も、津波という未来も」

「……お前が壊れる」

「最初から、その覚悟だ」

 静岡部隊が、動く。

「蒸気、最大!」

「凍結、重ねる!」

「臨界――!」

 世界が、崩れ始める。

 俺は――

 炎を、消した。

 完全に。

「……?」

 静岡の隊員が、動揺する。

「能力反応、ゼロ?」

「まさか、諦めた?」

 俺は、一歩踏み出す。

 拳で。

 殴る。

「上限なき炎は――」

 次の一歩。

「燃やさなくても、そこにある」

 体内で、炎が相転移する。

 熱でも光でもない。

 圧力。

 拳が、空気を砕く。

 一人目が、吹き飛ぶ。

「な――」

 二人目に、肘。

 三人目に、蹴り。

 再び、雷。

 トウマが、未来を切り裂く。

 だが――

 静岡は、まだ四人。

 環境は、完全に敵。

 これは、前哨戦だ。

 俺たちは、まだ――

 勝っていない。

 静岡王国は、

 数で殺しに来ている。

 多対二の地獄は、

 ここからが本番だった。

静岡戦は多対二です

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