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第4話 そして物語は動き出す。目指すは北の大地

地方都市ミリート


石畳の道が太陽の光に照らされ、赤茶けた屋根の家々が並ぶ。

通りのあちこちでは露天商が声を張り上げ、

香ばしい焼き串や甘い果実酒の匂いが風に乗って漂ってきた。


「規模こそ小さいが、露店と商人で賑わう活気あふれる都市」


それがミリートだ(スピカ談)



昨日、運命的? な出会いを果たした俺とスピカは、

日の出とともに惨劇のあった家を後にした。


死体はどうしたのかって?

もちろん、夜のうちにちゃんと埋めてきた。

流石にあのままにしておくのは気が引けたし......

安らかに眠れたならいいけど(あのスキンヘッドはともかく)


そういえば、あのエルフにはなにもしてやれなかったな____

ちゃんと仲間が埋葬してくれたのだろうか?



「ウィルさん! 教会はこちらですよ」


スピカに連れてこられたのは、白壁に青い尖塔がそびえる小さな教会。

ステンドグラスから差し込む光が床を彩り、中央に設置された水晶が柔らかく輝いていた。


「ここでスキルの確認ができるのか」


「はい! あの水晶を使うんですよ♪」


そういうと、スピカは俺の手を取って水晶の元へと連れていく。

ホント____一度刺されてるのに命知らずだなこの子は。


「ここに手をかざして、深呼吸……はい、どうぞ♪」


スピカの案内に従うと、水晶が微かに脈打つように光り出した。


・・・・・・


「お、なにか浮かび上がってきたぞ」


・・・ーーー・・・ーーー


ーーユニークスキル


《絶対殺すマン》ーー


ーー致命の一撃を与える


ーーー・・・ーーー・・・


......え?


そ、それだけ?


スキルの詳細ってこんだけなの!?

もっと詳しく教えてくれるもんなんじゃあないのかよ!!


「致命の一撃......それって____誰かれ構わずってことですか〜!?」


なんか、スピカの顔が"ムンクの叫び"みたいになってる。


「いやいや! そうだとしたら通りすがりの人間、みんな死んでるだろ!」

「......なにかしら発動条件はあるんだろうが____はぁ、結局無駄足か」


正直、かなりがっかりな結果だ。

ここで何かわかれば、対処法も考えられたのに。


「さて......これからどうするか」


「......ウィルさん、ここは酒場に行くのはどうでしょう?」


「酒場?」


「はい! 情報集めと言ったら、酒場が定番ですよ!」


「確かにな......俺はここにきたばかりで知らないことだらけだし」


「私だってほとんど何も知りませんよ〜」


「でも、スピカは一週間も前にここにきてるんだよな? ......その間、なにしてたんだ?」


「う!? そ、それは____」


なんだ?なんか、凄く言いづらそうな顔してるな。

もしかして......聞いちゃまずかったか?


「食べ歩き(ボソ)」


「へ?」


「食べ歩きしてたんですよ〜!!この街、露天なんかも凄く多くて!____

目につくものは全部美味しそうですし......」


「ほ〜う?」


「うぅ......そんな顔で見ないでくださいよ____」


「そんな食べ歩きの達人スピカ様が、どうして夜遅くにあんなところを彷徨ってたんだ?」


「な、なんですか達人って!!それはですね_____沢山食べて、宿に泊まってを繰り返していたら、あっという間にお金が尽きてしまいまして......」


「なるほどな。完璧に理解した」


「うぅ......」


「まあとにかく情報集めないとな。金の問題もあるし。

スピカの話だと、普通に生活してたら多分2週間で路銀が尽きる」


「え?私は1週間でしたよ?」


「俺はそんなに爆食いしないし」


「も〜!」


膨れっ面して怒ってやがる。

可愛いやつめ。


取り敢えず酒場に行くとするか。確か、教会にくる途中にあったはず____



___酒場・隻眼の赤鬼


お〜結構賑わってんな!


木製の扉を開けると、店内は活気で溢れていた。

冒険者風の男たちが大声で笑い、吟遊詩人が小さな竪琴(たてごと)をつま弾く。

壁には数々の武器や古地図が飾られ、床板は踏み鳴らされて(きし)んでいた。


「真昼間から飲んでるやつは、どこの世界にもいるもんだな」


「カウンターが空いてますね!取り敢えずあそこに座りましょう」


スピカと端のカウンター席に着くと、酒場の店主らしき男がカウンター越しに向こうからやってきた。

かなりガタイが良く、特徴的なあごひげだ。


「おう、いらっしゃい!何にする?」


酒は____取り敢えずやめとくか。

弱いってわけでもないけど、何がスキルの発動に影響するかわからんし。


「これから用事があるから酔っ払いたくないんだけど......なんかオススメはある?」


「酒場に来たのに酔いたくない? にいちゃん面白いこと言うな!」

「それなら、クオールの果実で作ったドリンクがオススメだ!」


「クオール......?」


「なんだ? まるで初めて聞いたみたいな顔して!クオールはここらの特産品だろうがよ!」


「いや......ずっと家に引きこもってたせいで、あまり外のことに詳しくなくて」


まあ、これはある意味嘘ではないな。家でゲームばっかやってたし......


「そうなのか?だからそんなにヒョロっこいのか!

ちゃんと食わね〜と身が持たないぜ!もう飯は食ったのか?」


「いや、まだだけど」


「見ない顔だし、ここは初めてなんだろ?なら特別サービスだ!

このメニューの中から好きなもの選びな!今回は無料(ただ)で食わせてやるよ!」


「え? ......いいのか?」


「あぁ! 俺は出会いを大事にする男だからな! 隣のお嬢ちゃんも好きなもん頼むといい!」


「えぇ!? それじゃあ......お言葉に甘えて♪」


めちゃくちゃ目を輝かせてるな。

まあ、異世界にきてずっと食べ歩きしてたくらいだし。


それに____


元いた世界では、あんまり好きなもんとか食えなかったのかもしれないしな。


「ウィルさん!このメロウ鳥の香草焼きっていうのが凄く美味しそうです!!」


「確かに気になるな......じゃあ俺も同じのを」


「お、目の付け所がいいな! それはうちの看板メニューだ! 食ったらぶっ飛ぶぜ!!」

「メロウ鳥の香草焼き2つ頼む!」


そう言うと、店主は一度奥へと戻っていった。


「それにしても......こんな呪われたスキル持ちで、これからどうしたらいいんだよ」


「困りましたね。詳しいことはわかりませんでしたし......

発動条件がわからない以上、安易な行動も取れませんしね」


「はぁ......」


「クオールのドリンクだ! お待ちどう!」


そう言うと、店主はカウンターの上にドリンクを2つ豪快に置いた。


「どうした、にいちゃん? 浮かない顔して」


「あ〜いや......さっき教会でユニークスキルの鑑定をしてもらったんだけどさ____もう最悪で」


「なんだ? 悪いスキルでもついてたのか?」


「悪いと言うか......もう呪いだよ」


「呪い!? そりゃまた随分と物騒な話だなおい!」


「本当そうなんだよ......」


俺が困ってるのを見て、店主は腕を組んでなにか考え始めた。


「そういえばよ、こんな噂があるぜ! ここから遥か北にある大陸"ユークラテス"には、神に祝福された古代の神殿があってな? そこでは、一度だけ"神から授かった恩恵"を別のものに変えることができるらしいぜ!」


「なに!? 神から授かった恩恵って......ユニークスキルのことだよな!? そんな場所があるのか?」


「ああ、そうだ!まあ、あくまで噂だけどな!だが、今の魔法協会の会長は、そこで良いスキルを引き当てて成り上がったって話だぜ?まだ25、6だってのに魔法界の頂点に立っちまうくらいだからな。単なる噂ってわけでもなさそうだが」


「なるほどな......ってか引き当てたってことは、そこはガチャ要素なのかよ」


「でも、もし噂が本当なら____そこでならウィルさんのスキルを変更できますね!」

「ついでに......私のも♪」


「やっぱり......不死身は嫌なのか?」


「はい!王子様より先に死にたいので♪」


ホント、底なしに明るいな。

1人でうじうじ悩んでるのがバカらしくなる。


「じゃあ、決まりですね! 一緒に行きましょう! 北の大陸、ユークラテスへ!!」


「一緒にって!? ......本当にいいのか? 俺なんかと旅して」


「何言ってるんですか! ウィルさんと無事に旅ができるのなんて私くらいですよ!? それに......」



「この世界に"2人"しかいない転生者じゃないですか! 仲良くしましょう♪」


仲良くしましょう......か。

この世界でも、結局仲間はできないのかって諦めてたけど____

キミとだったら。


「よし。じゃあ行くか!ユークラテス大陸へ!」


「はい!でも、まずは腹ごしらえからですね♪」


***


ユークラテス大陸の更に北

世界の果て・龍の住まう孤島


「感じるな......2人。また、懲りもせずに送り込んできたのか」


「そういえば、遥か昔にあの女が言っていたな。異世界への転生者は俺を含めて"3人"までと」


・・・・・・


「まあ......慌てる必要はない。もうすぐ大願は果たされる」


「その前に____消しにいけばいい」



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― 新着の感想 ―
Xで拝見し、気になって読みに伺いました。 とんでもスキルの主人公と思ったら、ぶっ飛びスキルの人が!そして相性抜群すぎるという…… しかもラストのフラグが!!絶対なにか起きる気しかしないです! めっちゃ…
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