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第3話 死ねない少女との出会い

エルフを刺殺してから数時間後。

俺は今、暖かい暖炉の前で一息ついている。

そのすぐ横には____三人の死体。


うん、わかってる。今説明するから。



あのあと、森の奥から誰かを呼ぶ声が聞こえてきて、俺はビビってその場を離れた。

おそらく、あのエルフの仲間だろう。


地理もわからない中、無我夢中で走り続け、ようやく森を抜けた頃には、辺りはもう夜だった。

ポーチにあった干し肉で空腹をしのいだが、全然足りない。

腹を空かせながら彷徨っていると、ぽつんと一軒家が見えてきた。


取り敢えず何か食べないと____

俺はその民家を訪ねることにした。

出てきたのはスキンヘッドの中年男。


「飯を分けてくれ」と伝えると、快く招き入れてくれた……ように見えた。


だが、家の中にはすでに老夫婦の亡骸。

つまり、この中年は家に押し入り、事を終えた後だったというわけだ。


で、俺は後ろから襲われて......


ーーユニークスキル《絶対殺すマン》発動ーー



まあこういう流れだ。


そんなこんなで今、俺は暖炉の前で三人の死体に囲まれながら、今日一日の出来事を振り返っている。

異世界転生してから、ろくなことがない。

そして落ち着こうにも、死体が転がるこの家で安らげるはずもない。


だが、今夜はもうここで過ごすしか……


コンコン


「ごめんください」


な!? 誰か来た!?


コンコン


「すみません、どなたかいらっしゃいませんか?」


マズい……今出たら完全に疑われる!


ここは、居留守を──


ガタッ


あー!! 物音立てちまった!!


「!? どなたかいらっしゃるんですか?」


……もうダメだ。


ガチャ


「は〜い......」


恐る恐る扉を開けると、そこにいたのは____


美少女だった。


薄いラベンダー色のローブ。 金ボタンの白いブラウス。 肩まで伸びた薄青の髪。


どう見ても、俺と同じくらいの年齢。 いや、ちょっと若いか?


「夜分遅くにすみません。旅の途中で、泊まる場所がなくて……

一晩だけでも泊めていただけませんか?」


泊めて欲しいだと!?

まずい...... 今この家に人を上げるのは、どう考えてもまずい!


「ご迷惑でしょうか......?」


瞳うるうる……反則だろそれ!

それに......女の子ひとり野宿なんてさせられないよな。


「わ、わかりました!ちょっと中が散らかってるので、

少し外で待っててもらっていいですか?すぐに片付けますから!」


「あ、はい。わかりまし____」


バタン!


よ〜し!まずこの死体をなんとかするぞ!

取り敢えずその辺の衣装棚かなんかに隠しておけば、一晩くらいならなんとかなるだろ。

あとはこの床の血を拭いて......


ガチャ


「あの〜......ただ泊めていただくのは申し訳ないので、私もお片付け手伝いま......」


「あ......」


「きゃああああああああ!!!」


み、見つかったぁ〜!

終わったぁ〜!!


「ちょっ、ちょっと落ち着いて!!これには深海よりもふかいふか〜い事情が......」


「ち...近寄らないでください!!」


あ〜そりゃそうなるよね!

だって人が死んでるんだもん!!

ってか......杖構えてるし〜!!!


「ち、ちゃんと説明するからさ!取り敢えずその杖を......」


「い...いやぁーーー!!!」


なんだ?


杖の先から何か...


あれは......氷のトゲェ!?


バシュン!!


「うおっ!!」


シュゥーー......


あっぶね〜、間一髪......

ってうお!?うしろの壁に思いっきり突き刺さってる。

あんなのに貫かれたら____


「けど......」


発動までに少し時間がかかってた。

だったら......


ヒュンッ──


ガシッ!!


「あぁ!」


よし!杖は掴んだ!


「落ち着いて!俺は......」


ーーユニークスキル《絶対殺すマン》発動ーー


「へ?」


ザクッ


「あ、あぁ......」


パタン


ぽた...ぽた...ぽた...


・・・・・・


「え〜っと......」


またやってしまった。

また......


「もう、いやぁぁぁぁぁ!!! なんなんだよこれ!? 異世界にきて数時間でもう3人も殺っちまってるぞ!? しかもそのうち2人はなんの罪もない一般人じゃね〜か!!」

「あんのくそ女神ぃぃぃ! こんな呪われたスキルなんぞ俺に授けやがって!!! これからどうやって生きてきゃいいんだよ〜!!!」


ぽんぽん(肩を叩く音)


「あ、あの......」


「へ?」


俺は半狂乱状態で振り返った。


すると......


美少女が何事もなかったかのように立っている。


「え!? い...ひゃ? な......にゃんで?」


えぇ? さ、刺したよな? ししし、死んだよな?

なななな......なんなんだこれ?


「すみません。もしかして......あなたも転生者なのですか?」


......?


「へ?」



「そういうことだったんですね! なら最初から言ってくれたらよかったのに」


「いやいや! 説明しようとしたらそっちが魔法? かなんか使ってきたんだろ!?」


「そうでしたっけ? まあ、もう終わったことですし、細かいことは忘れましょう♪」


「はぁ......まあいっか。それで____君も転生者なの?」


「はい!一週間前くらいになりますかね。こちらの世界に飛ばされました!」


「じゃあ俺より先なのか。俺は今日飛ばされてきたばっかりだし」


「そうなんですか?じゃあ......私の方が先輩ですね♪」


先輩って。


「ところでさ......キミはなんで生きてんの?俺......おもいっきり刺しちゃったよね?」


「あ、これですか?」


そういうと彼女は腹部をまくって見せてきた。


傷が......ない?


「私のユニークスキルです。《死んでやるもんか》と言いまして。まあ簡単に言うと死ねないんですよ」


「はぁ!? 死ねない?」


「はい。この世界に転生して、本当ならもう2、3回くらい死んでるはずなんですけどね。オオカミに襲われたり野党に襲われたり。でも、すぐ復活するんでみんな怖がって逃げちゃうんですよw」


「なんか......とんでもね〜スキルだな」


でも、まてよ____


ユニークスキルは生前に最も強く願ったものが反映されるって.......


「ここにくる前に、その......なんかあったの?」


「あぁ。私、体が弱かったので、基本ベッドの上で生活してたんですよ。やりたいことは沢山あったんで、"簡単に死んでやるもんか〜!"って感じで生きてはいたんですけど......結局ダメで」


なるほど......だから。


「それでこのスキルを授かったみたいです。最初は死なないのラッキー! くらいに思ってたんですけど

____死なないだけで体が傷付けば、そりゃすっご〜く痛いわけですよ!? それに......」


「それに?」


「この異世界で、もし理想の王子様に出会っても......絶対相手が先に死ぬじゃないですか〜!? 取り残されて寂しい想いをしたくないから、先に死にたいのに〜!!」


「なんだよそりゃ!」


前世じゃあ、すげ〜辛い思いしてただろうに......

変に明るいっていうか、気が抜けるっていうか。


「私にとっては重要なんです!」


「まぁでも、スキルで頭悩ましてるのは俺と同じか。俺のスキルなんてもう......呪いみたいなもんだし」


「一体どんなスキルなんですか」


「俺のは《絶対殺すマン》発動条件はイマイチよくわかってないんだけどさ____近づくと勝手に発動して......殺しちまう」


「随分と物騒なスキルですね......もしかして、前世は殺し屋さんだったんですか?」


「いやいや! 職業殺し屋っておかしいだろ! まあ、生きてりゃ色々あるんだよ」


「ふむふむ。なるほど」

「でも、今は発動してないですよね?なにか条件があるんでしょうか?」


「どうなんだろう?特に検証したわけでもないし」


「じゃあ......明日、教会に行きませんか? ここからそんなに離れてない場所に少し大きな街があるんですよ。そこにある教会ではスキルの鑑定ができるんです!」


「教会?」


「はい! 私、ここにきた時に街のすぐ近くに飛ばされたんですけど、その日のうちに教会で鑑定してもらいましたから!」


「なるほど......取り敢えずこの呪いについての詳細は知っておいた方がいいか」


「スキルですよw  じゃあ、決まりですね♪」


「決まりって____俺と一緒にいるとまた発動するかも......」


「大丈夫ですよ!私、不死身ですし!あ、でも痛みは感じるので......手加減してくださいね?」


「手加減って____面白いこと言うな。え〜っと......」


「あ、名前ですね!この世界ではスピカって名乗ってます!」


「スピカ...」


俺は...


「ウィ...ル」


「俺はウィルだ。よろしくな、スピカ」



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「ちょっと中が散らかってるので」 よく聞くこんな言葉が、こんなに恐ろしい言葉だったなんて……! 殺伐としたユニークスキルだけど始まりは明るい物語、続きはどうなるんだろう……ゆっくり楽しませていただきま…
絶対に殺すマンと絶対死なないヒロインが出会った!? ユニークスキルがユニーク過ぎて自然と笑ってしまいました。主人公のスキルはかなり厄介のようですが、これからどのように展開するのでしょうか!
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