第2話 転生して数分で1キル
チュン......チュンチュン......
サァァァ……
……なんだ、これ。
鳥の鳴き声……風の音……ここ、外か……?
ガバッ!!
「ここは......森の中?」
見渡す限り、木と草だらけ。
俺、さっきまでベッドの上だったよな?あれ、夢じゃなくて____
「本当に異世界に来ちまったのか?」
取りあえず、ここにいても仕方ない。
まずは周囲の状況を____
「おい! ここで何をしている!!」
ん? 誰だ?
誰かの怒鳴り声。
振り返ると、金髪ロングの美形が弓を構えて立っていた。ローブ姿で耳が長い。
……おお、こいつ絶対エルフだ!
じゃあ、俺が来た異世界は____ファンタジーの世界だったのか!
「聞こえなかったのか!?ここで一体何をしている!?」
言葉がわかる。これは好都合だ。
「え〜っと......あ、私は旅人です!食糧を探して森に入ったら道に迷ってしまって」
取りあえずそれっぽい嘘で切り抜けよう。
「異世界転生してきました」とか言ったら怪しさ抜群だし。
「食料探し......だと?」
「そうなんです! この辺には最近来たばかりで、あまり詳しくないんです」
よし、こんなもんだろう。
俺が知ってるエルフって種族は、知性が高くて争いを好まない。
取り敢えず少し話をしてこの世界の情報を......
バシュ!!
「え......?」
今、矢が飛んできたぞ?
しかも____
左頬かすった!?
嘘だろ!? 血も出てるぞ!
「ふざけるな! そんな嘘が通じると思うな!」
「いや、ちょっと待ってくれ! 嘘なんてついてないぞ俺は!」
「この森はエルフの聖域! 人間は決して立ち入らない! そんなこと、この世界にいる者なら子供だって知っている!」
いや、俺この世界に来てまだ1分くらいなんですけどぉ!!!
そんなん知るわけないじゃないですかぁ!?
「言え! 貴様の目的はなんだ!」
「ほ、本当になにも知らなかったんだってば!!」
「貴様・・・いつまでもそんな白々しい嘘を」
やばい、矢筒から矢を取り出してる。
このままじゃあ......殺される。
「取り敢えずここは......」
ザザッ
「あ! 待て!!」
全速力で逃げるのみ!
転生してすぐに殺されてたまるか!!
タッタッタッタ......
体がかなり軽いな。
敏捷系のパラメーターが高いのか?
ステータスを選べずに終わった時は最悪の気分だったが......
割と運はあるみたいだな。
タッタッタッタ......
よし、距離は稼げたな。
「そういえば、腰にポーチやらなんやらついてるな。一回確認してみるか」
ポーチの中には干し肉と液体の入った小瓶。それと、銀色のコインが数枚ある。
コインは____この世界の通貨か?
それと左の腰には......ナイフか。
ナイフで弓矢と戦うのは流石にきついか?
いや、この身軽さなら一度矢を撃たせてしまえば懐に入れる......
「ってなに考えてんだ! 戦う必要なんてない。取り敢えずなんとか話せる状況に持っていかね〜と」
「いや......いっそこのまま逃げちまうのが正解____ん?」
「はぁはぁ......いったいどこへ行った?」
もう追いついてきたか。くそ、一体どうしたら。
ガサガサ......
ん?草むらから……何か来る!?
ガサッ……
「フゴオーーー!!!!」
でっっっっっっっっか!!!!
なにあれ!? クマよりデカい......イノシシ!?
「くっ......こんな時に!」
あのエルフ、弓構えてる……でも、さすがに無理だろ!?
「フゴオーーー!!」
ダッダッダッダッ!!!
「これでも食らえ!!」
バシュッ!!
カキィン!
「な!?」
牙で矢を弾いた!?やべぇ、やられるぞ!!
「う、うわあああああ!!!」
……くっ、見てられねぇ!!
ザザッ!
ザシュッ!!
「プギャアアーー!!」
「お、お前は?」
「詳しい話は後だ!取り敢えずここを切り抜けるぞ!」
あの巨体じゃあ、ナイフで致命傷ってのは難しい。
かといって、他に武器があるわけでも____
「なあ、あんた? あの化け物はなんなんだ?」
「あ、あぁ......あれはヌシと言われている。数年に1度現れる森の魔獣だ」
「ヌシねぇ......特別なモンスターってことか」
「そうだ。目撃情報があったから私はあいつを探していた。そしたら......」
「俺と出会ったってことね。探してたってことは____倒す算段はあるってことだよな?」
「......脇腹からこの矢を突き刺す。俺はこの森で一番の弓の使い手だ」
「あいつの真横さえ取れれば____確実に仕留められる」
「了解。じゃあ____俺があいつを引きつける。隙を作ってやるから......あとは任せたぞ」
「な!?おいちょっとまて!!」
ザッ!
こいつのスピード自体は大したことねぇ。
俺のこの身体なら、十分避けられる____
さぁ......かかってこい!!
「フゴオーーー!!」
ダッダッダッダッ!!!
まだだ......まだ......
ギリギリまで引きつけろ。
.....今だ!!
ブワッ!!
うお!結構高くジャンプできるもんだな!
「今だ!撃てぇ!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」
バシュッ!!!!
「プギャーーーーーーー!!!!」
ズダーーーーンッッ!!!!
・・・・・・
「フゴ……」
うぉ〜!本当にやりやがった!!
*
それにしても、ホントにでかいな。
こんな化け物を____細い矢で一撃とは。
「すげぇな……見事な腕前だ!」
「いや、キミこそ素晴らしい身のこなしだった!」
「え〜っと......ところで、この森に入っちゃった件なんだけど」
「......いや、きちんと確認するべきだった。なにか事情があったのだろう。すまなかったな」
「いや、わかってもらえたらいいんだ。」
ふぅ。取り敢えずこれで一件落着だな。
誤解も溶けたみたいだし......
「本当にありがとう。キミは命の恩人だ。」
え?
あく・・・しゅ?
ーーユニークスキル発動ーー
ユニークスキル?
これって確か女神が言ってた......
「ユニークスキルは、"生前に最も強く願ったもの"が自動的に反映されます」
俺が願ったもの......
俺は____仲間が欲しかった。
ずっと一人でゲームしてて、平気なフリしてたけど……ほんとは、ずっと寂しかった。
そっか。この世界では叶うんだな。俺が望んでいたもの。
この手を取れば......
やっと俺にも大切な仲間が____
ザシュッ!!
「え?」
ポタ...ポタ...ポタ...
「ど、どう...して」
バタン......
え? 俺なんで......
ーーユニークスキル《絶対殺すマン》発動ーー
え? なんだよそれ......
絶対殺すマンってどういう......
ちょ、ちょっとまて!これってもしかして......
"この2年間、いかに確殺を取るかってことだけを考えてきた"
「こっちが......採用されてたってことぉぉぉぉぉ!!????」
「なにそれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!(泣)」