第14話 魔法陣の罠
これまで1話の文字数が多かったので、14話からより読みやすくしていきます。
今後ともよろしくお願いします<(_ _)>
黒い球体はゾーイによって四方八方へと放られた。
そのうちのいくつかは、既に結界に触れ数を増やしている。
だが、まだ数も少なく、球体のスピードもそこまで速いわけではない。
ウィル「さっさと片づけてやる!」
ウィルは一直線に走り出した。
球体の多くはまだゾーイの近くにあり、今の状況であれば一気に距離を稼げると考えたからだ。
どんどん距離を詰めていくウィルに、二方向から黒い球体が迫りくる。
(この程度のスピードなら)
スッ......スッ......
無駄な動きを避け、徐々にゾーイの元へと近づいてゆく。
球体は徐々に増えていくが、ウィルは全く意に介さない。
今のこの状況は、アミールバイソンの群れを相手にしている時と酷似していた。
狙うターゲットはただひとり。
まずはどこから球体が飛んでくるかをしっかりと確認し、避けながら徐々に距離を詰める。
隙をみて間合いに入れば________風の刃が届く。
この状況下で冷静でいられるのは、あの狩りでの経験があったからこそであった。
(だいぶ近づいてきた。このまま行けば......!)
だが、次の瞬間______
ズゥゥゥゥゥン.......
結界内の地面が黒く怪しく光った。
地面には、巨大な魔法陣が描かれている。
(なんだ......身体が......重い)
地面に身体を引っ張られるような感覚に襲われるウィル。
その状況を、ゾーイは楽しそうに眺めていた。
ゾーイ「ああ、すみません......説明するのを忘れていました。結界内には一緒に魔法陣も設置してあります。中に入った者の動きをかなり制限するので、気を付けてくださいね」
ウィルの目の前には既に黒い球体が迫ってきていた。
ゾーイ「まあ......手遅れでしょうが」
ウィル「や、やべぇ!!」
(ダメだ......これは躱せない!)
カーテイス「スピカ!」
スピカ「は、はい!」
カーティスの合図と同時に、スピカは杖をウィルの方へと向けた。
スピカ「ホーリーステップ!」
スピカが呪文を唱えると、ウィルの足元が淡く光り出す。
その光は、瞬く間に両脚を優しく包み込んだ。
(身体が......軽い!)
目の前の球体を躱すと、ウィルはひとまず後方へと下がる。
ゾーイ「ほう......魔法でスピードを上げましたか」
(ホーリーステップ......スピカが最初に覚えた魔法だって言ってたな。正直、身体のキレはまだ8割くらいって感じだけど......あの厄介な球を避けるのには十分だ)
ゾーイ「それにしても......ワタシとウィルのゲームに横やりを入れるのは感心しませんねぇ?」
カーティス「それを言うのであれば、あの魔法陣の説明をし忘れたことこそ問題じゃあないのか?」
ゾーイ「ふむ......まあいいでしょう。好きにサポートなさい______ただし......」
ゾーイが右手を前方へ伸ばす。
すると、球体の速度が更に増した。
ゾーイ「ワタシ......もこれくらいはさせていただきますよ」
目の前で次々と増えてゆく球体。
その数と速度に、ウィルは徐々に後方へと追いやられてゆく。
ウィル「くそ、進むのが難しくなってきやがった!」
こうしている間にも、球体は数を増して襲い掛かる。
避けるので精一杯の状況の中、洞窟内にカーティスの声が響いた。
カーティス「ウィル! 落ち着いて状況を確認するんだ!」
「道は......私とスピカが作る!」
ウィル「道......」
ウィルは一度大きく下がり、視野を広げ全体を確認する。
(あれ.......今、あそこの球......消えた?)
ほんのわずかな変化。
だが、"道"、"消える球体"、"スピカの魔法"、この3つの点が繋がった時、自分が何をすべきかをウィルは一瞬で理解した。
ウィル「なるほどね......そういうことか!」