表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第4話 名前を呼ぶ声

春の陽光が柔らかくキャンパスを包み込む午後、駿と風花はいつもの帰り道を歩いていた。通り抜ける風はほんのり暖かく、桜の花びらがひらひらと舞い落ちては地面にそっと積もっている。


二人の間には、言葉にできない微かな緊張感が漂っていた。昨日まではただの友達だったけれど、今日は何かが違う予感があった。


「ねえ、駿」


風花がぽつりと口を開いた。


駿は顔を上げ、少し驚きながらも彼女を見つめる。


「好きだった?」


その一言はまるで風に乗って、彼の胸の奥に静かに響いた。


「好きだった?」と繰り返す風花の声は、どこか遠く、震えるようで、それでいて真剣だった。


駿はしばらく言葉が出なかった。昔の淡い想い、すれ違った時間、すべてが胸の中で絡まり合う。


「……昔から?」


風花は小さくうなずいた。


「うん。中学の頃からずっと」


彼女の瞳はまっすぐに駿を見つめ、その目の奥には真実と、どこか隠しきれない不安があった。


駿は呼吸を整え、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「俺もだよ。ずっと……好きだった」


その言葉を告げた瞬間、長い間閉じ込めていた何かが、ふたりの間に溶け出していくようだった。


風花の瞳に、ふっと涙がにじんだ。


それは悲しみではなく、救いの涙だった。


駿はそっと風花の手を取り、温かく包み込む。


「風花」


「駿」


お互いの名前を呼び合うその瞬間、二人の心が深く結びついた。


桜の花びらが舞う中、風花の頬に触れた手が震えながらも温かく、そして確かな未来への一歩を感じさせた。


「これからは、ちゃんと伝えよう」


風花がそう呟くと、駿は微笑み、優しくうなずいた。


春の風が再び吹き抜け、二人の心を優しく包み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ