トウマ危うし! 危険な遊戯にとらわれて その5
「俺はDDF ダークスカルの効果を発動! この効果は相手が魔法・トリック・モンスター効果を発動した時に、1ターンに一度発動できる! DF ブラックパピヨンをデッキに戻し、上級・最上級ではないDFを特殊召喚する! 俺が呼び出すのは、DF シールドフェイス!」
黒い蝶マスクのレスラーが消え去り、代わりに顕れるのは……なんだろ、こう、どっかの原住民が持ってそうな、楕円形の木の板に顔を描いた盾をそのまんま仮面にした、腰蓑のレスラーだ。現れたシールドフェイスは、その場で腕や手足をくねくねさせて、奇怪なパフォーマンスダンスを踊り始める。
「DF シールドフェイスの効果発動! 俺の場にDFEが居る場合、召喚・特殊召喚された時に相手モンスターの効果をターン終了時まで封じる!」
「な、なんだとぉ!?」
セコンドのおやっさんがメガホンを手に、「もっと腰を入れて踊らんか!」と言わんばかりに声を張り上げる。それを受けてシールドフェイスの踊りはより激しくなり、その奇怪な踊りに場のモンスター全員の目が引きつけられる。
激しく上下し回転する仮面の文様……それに見入ってしまった悪魔達は、すっかり目を回してしまう。特にひどいのがデュ・バルだ。彼はもう演奏もままならないらしく、調子はずれの幼稚園の遊戯会みたいな音を立てるばかり。
『おおっと、デュ・バルの効果が無効にされた事で、スレイヤー効果は消失してしまいました。長沢選手の場のモンスターのステータスでは、ダークスカルを突破できない!』
「ば、馬鹿な、こんな事が!?」
「ダークスカルとリクルート対象のモンスターが揃ってる状態で迂闊に魔法を発動する奴があるか! 舐めてんのかてめえ」
それは同感。いや、普通に考えてさ、ダークスカルの相手ターンでも発動できるリクルート効果とかめちゃ強じゃん。知らなかったんならともかく、旧知の間柄なら知ってただろうし。
いくら手札があっても、もうちょっと慎重に動くべきだよね。
「ぐ、ぐぐぐ……だ、だが、ダークスカルが倒せなくとも、他のモンスターはどうとでもなりゅう! バトル、デュ・バルでシールドフェイスを、堕落の誘い手でセコンド・コマンダーを攻撃!」
デュ・バルの腹から飛び出した弦がシールドフェイスを盾ごと切り裂き、堕落の誘い手がその鋭い爪でおやっさんのビール腹を切り裂く。苦悶の声を上げて消滅する仲間達の姿に、ダークスカルが憎しみの唸り声を上げる。
『おおっと、流石に素のステータス差はどうにもならない! 岩田選手の場に残されたモンスターは、ダークスカルだけだ!』
「んっひひひ! そして私はメインシーン2で、新たに魔法カードを発動! “豪奢たる贄”! 手札を二枚、デッキに戻し……欲しいカードを手札に加える! 私は、“狩りの主 テーラ・ルー”を手札に加えるぅうう!」
『ここで長沢選手、『悦楽』デッキの最上級モンスターを手札に加えた! まあ、このまま召喚はできないんだけど……。牽制のつもりかな?』
テーラ・ルーはダイレクトアタックできる強力なモンスターだが、その特殊召喚条件を満たすのはなかなか大変だ。長沢はどうするつもりだろう。
「んひっひっひ、抜かり有りませんよ。私は新たにカードを一枚ふせまぁす! いひひひ、特別に予告しておきましょう、このカードは二枚目のぉ、“同調する悦び”! これでテーラ・ルーを呼び出す為のカードを引ける訳です。ふぃひ、これで、私はターンしゅうりょぉおおお!」
『ターン終了に伴い、シールドフェイスの効果は消滅。それにより、場の悪魔達のセルフバウンス効果が発動します。岩田選手の手札が三枚増えますね! 五枚の手札に三枚加わって八枚!』
それでもって、長沢の場にはデュ・バルと伏せカードが残る。手札はあと2枚、まあ10枚もあるカードをよくもまあ使い切ったという所か?
「ふん。俺のターン、ドロー」
岩田さんが心底しらけてる、といった顔でドローする。それに、長沢は喜悦の声を上げて反応した。
「いっひひひひひひ!! ここでトリックカード発動! これで私の手札は、再び九枚になるぅううう!!」
「…………。……はぁー……」
『岩田選手?』
心の底から、呆れ切った溜息をつく岩田さん。その、状況の悪さがまるで見えていない様子に、長沢も流石に何か違和感を覚えたのだろう。けたけた笑いをおさめて、首を傾げる。
「うん? 何ですそのはんのぉ、もっと絶望なり、恐怖なり、違うリアクションがあるでしょう?」
「おい、トウマ。あのデッキ、元はお前のだろう? もしお前だったら、馬鹿の一つ覚えみたいに、同じコンボを相手にしかけるか?」
『えーと。レフェリーとしての公平性を一時棚上げにしていいますとね……する訳ないでしょ馬鹿じゃないんだから』
長沢を完全に無視しての岩田さんの問いかけに、私はしれっと答える。
いや当たり前じゃん。分かりきったコンボしかけても、普通に逆用されて変な事になるじゃん。そもそも悦楽デッキ自体、テクニカルコンボを見せびらかすんじゃなくて、ここぞ、という所で畳みかけて分からん殺しするデッキだし。
コントロールに持ち込むには防御力低すぎるんだよ。
「安心したぜ、俺が馬鹿になったのかと思った。……俺は魔法カード“マリガン”を発動! 手札が四枚以上ある時に発動でき、お互いのプレイヤーは手札のカードを全てデッキに戻し、カードを4枚ドローする!」
「は……はああああ!?」
たっぷりある自分の手札を見下ろし、岩田さんを見て、さらに手札に目を向ける長沢。すっかりパニックになっている彼とは裏腹に、岩田さんはしれっと手札をデッキに戻して、カードを引く。
「うし、気味悪い奴は引き直さずに済んだな。……なあにぼけてやがる、こんなもん、汎用の中の汎用カードだろうが。デッキからのリクルート戦術を使う俺のDFに入ってないほうがおかしいと思え」
『まあ、私は(持ってないから)採用してないけど、まあ大抵のデッキに入ってるカードですもんね、これ。割とパックから出やすいし、シングル価格も手ごろ。どうしてもただ使うだけだとディスアドバンテージになりますが、手札事故をどうにかできる可能性、っていうのは魅力的ですよね』
所謂、手札交換カード、その基本的な奴である。先鋭化が進んだ現実のTCGではディスアドバンテージになるし、サーチカードが充実しまくってるのでコンボ目当てでない限り採用される事はないが、こちらの世界ではばりばり現役だ。
なお価格が手ごろといっても、まあうん万円するので私の手が出る値段ではない、悲しみ。
『とにかく、これで岩田選手は手札を埋め尽くしていた六枚もの『悦楽』カードをデッキに還して、きちんと自分のカード四枚を引いたぞ! 対して長沢選手は、9枚の手札が4枚に。実質五枚ものハンデスを食らった形になってしまう! いやー、悲惨ですね』
「一応、よく確認したがデッキに戻したら変な事になる、って訳じゃないようだしな。一度えらい目にあったからな、そこはもう忘れないぜ」
じっと丸いサングラスの向こうから見つめられて、私はほほほほ……と顔を逸らした。
なんのことかなあ、わたし、みにおぼえがないなあ。ははははは。
「わ、わた、私の手札がぁ……!?」
「惚けている暇があるのか? 俺は手札からDF サベッジハンマーを召喚! バトル! DDF ダークスカルで、デュ・バルに攻撃!」
仲間を葬った敵に怒りの雄たけびを上げ、ダークスカルが突撃する。ステータス差は歴然、能力を使うまでもない。勢いのままにデュ・バルを捕らえたダークスカルが空中に飛び上がり、技のセットアップを決める。
「クラッシャースカル・パイルドライバー!! そして、サベッジハンマーで追撃!」
『決まったぁああ! ダークスカルの一撃に、デュ・バルの頭部が木っ端微塵! そしてこれで長沢選手を守る者はいない、悠々とサベッジハンマーがダイレクトアタック!』
両腕に金棒を思わせる籠手を装備し、緑のスーツに身を包んだ覆面レスラーが突撃する。そのまま、勢いにまかせてラリアット! 金棒アームガードが、長沢の細い体に音を立ててめり込む。
「ごぼぇっ!?」
そしてそのまま、長沢を壁まで運送。凄まじい勢いと共に壁に叩きつけた。
「ひゅぅ……決まったぜ」
『あわわ……流石にやりすぎでは?』
「……いや、お前が言ったら駄目だろ、被害者筆頭」
いや、そりゃそうだけどさ。それとこれとはまた違うんじゃない?
サベージハンマーがノシノシ戻ってくるが、壁にめり込んだ長沢はぴくりともしない。しばらくたつと、そのままずるずると壁から剥がれ、床に崩れ落ちる。
ふん、と無感情に岩田さんが鼻を鳴らした。
「レフェリー。カウント」
『え、えっと……いいのかな。えー、てーん、ないーん、えいーと、せぶん……』
「英語かよ」
いや、つい。動揺がでちゃった。
とりあえず、レフェリーとしてカウントを実行する。でも流石にこれで決まりかな……? あんなの、大の大人が喰らっても失神間違いなしだ、見るからにやせ衰えてる長沢が耐えられるとは思わない。
『ふぁーいぶ、ふぉー、すりー……』
「……ひひ」
ぴく、と長沢の指が痙攣したように動く。
思わずカウントを停止する私。岩田さんと共に見守る中で、ふらふらと長沢が身を起こした。
だがその動きは、あきらかに非人間的。マリオネットというか……自分の意思ではなく、まるで何かに吊り上げられているような動きだった。
「うひひひ……」
『ひぇっ』
レフェリーとしての立場を忘れておもわずうめいてしまう。グギグギ、と不自然な動きで歩み寄ってくる長沢の首は傾いたままで、動きに合わせて目玉がボールのように眼窩でぐらぐらと回る。
「……正気じゃないな。痛みを感じていないのか? ……ちっ、俺のターンはこれで終了だ」
「ひ……ぃひぃひいい……ああ、神よ……祝福に感謝ぁいたしますぅ……ふぃひひひ」
ぼこぼこ、とその体がスーツの下から膨らんでいく。歪に人としてのシルエットを失いつつある長沢の手が、デッキトップからカードを引く。
「どろぉおおお……わ、わわ、わたしはぁ、魔法カード“バルト・トエ・ドル”を発動ぉおおお! こぉの、カードの効果によりぃ……お互いのプレイヤーは! 己の手札を曝け出しぃ、以降、それを自分では確認できなぁああい!」
『?! そんなカード、『悦楽』には……い、いえ。効果は問題なく処理します。両選手、手札の開示をお願いします』
「ちっ、めんどくせえカード使いやがって」
一瞬だけ手札を再確認し、裏返して提示する岩田さん。流石だ、今の一瞬で手札の内容を暗記したな? 流石プロデュエリスト、ふるまいが洗練されている。
だがまずいぞ。あんなカードに覚えはないが、何のために使ったかは私にはわかる。長沢め、あいつを引いたな?
「おら、てめえもカードを開示しろ……?!」
丸いサングラスの向こうで、岩田さんが目を見開く。
それもそうだろう。
見せつけるように長沢が提示したカード達。その内容が、あろうことか全て同じカード、金枠の最上級モンスターだったのだから。
同じデッキに四枚も同じカードは入らない。つまりこれは……。
「うぃひひひひひ! ははは! 見・た・なぁああああ!? 秘密を暴くものには、死を! 罰を!! 秘密の番人の毒によってぇ、くちぃはてろぉおおお!」
長沢の場に、紫色の霧が吹き上がる。その中から姿を現すのは、真っ白な皮膚を持ったミノタウロス。その身は細く引き締まり、ボディビルダーというよりは妖艶なポールダンサーのよう。手に持つのは、長尺のハルバード。ぶん、ぶん、と鉄棒を振り回して突風を巻き起こし、霧を吹き散らして吼え叫ぶ。
その烈風に岩田さんの髪が乱れ、私も顔にヴェールが張り付いてうぷ、とうめいた。
『あれは……“秘密の番人 アンブロシア”! 自分の手札やデッキの中身といった非公開情報が公開されたとき、それを無効にして特殊召喚される、『悦楽』デッキの最上級悪魔です! 本来のエース、テーラ・ルーは強力ですが即効性がない点をカバーするもう一枚の切り札!』
「自分から見せびらかしといて逆切れしてんじゃねえよ!?」
それはほんとにな。ちなみに手札が全部アンブロシアだったのは、奴の情報ブロック効果だ。ああやって幻影をかぶせて、相手には自分の手札やデッキ内容を把握させないようにするわけである。
ちなみに私は、お互いの手札を公開した上でランダムに一枚選んで交換するカードとのコンボを想定して入れてた。アンブロシアの効果で手札を見えないようにすれば実質ランダム交換なので、相手に“堕落の注ぎ手”とか押し付けながら自分はアンブロシアを特殊召喚できて一挙両得。逆に言うと、あんな相手のプレイング次第では無効化される何のアドバンテージも取れない効果は使わない。自分も手札確認できないんじゃ意味ないもんね、自滅する。
「いひひひ、ひひひっ! 漲る、漲るぞぉ! 神の恩寵が、この身に満ちるぅうううう!」
長沢の体が、紫色のオーラに包まれていく。びりっ、と膨れ上がる肉体にスーツが裂ける。
めきめき、と音を立てて、その姿が人間のそれから逸脱していく。流石に岩田さんも、驚嘆したように一歩、後ずさった。
「……こいつは……!」
《いぃひひひひ…… ЂЂЀ……!! エ菁ト。「、コ、、、ヨ、?ネセョ、オ、ッ、ハ、テ、ソ、ハ、「》
私達の見上げる先、すでに長沢は人の形を留めていなかった。
左手は大きく膨れ上がり、右手はいくつもの触手に枝分かれしている。胴体は大きく膨れ上がり、顔は肉の中に埋もれていく。膨れ上がった胴体には新しい首のような肉塊が形成されるが、そこにあるのは顔ではなく巨大な一つ目だ。ぎょろぎょろと動く瞳孔が私達をとらえ、ぼこぼことその中にいくつもの球体が浮かぶ。
己の配下であるはずのアンブロシアと同サイズまで巨大化した長沢……いや、もはやケイオススポーンとでも呼ぶべき存在は、どこにあるかもわからない声帯から雄叫びを上げた。
「馬鹿が……! 力に飲み込まれたか!」
「うん……そうだね……」
流石というべきか、岩田さんはこの状況でも理性的だ。混乱してはいるのだろうけど、大局を見失ってはいない。
そして私には、長沢の体を満たす悦楽のオーラがはっきり見えている。最上級悪魔であるアンブロシアを通して、彼の体に“声”の力、その一部が流れ込んでいるのが見える。
それは悪意ではない。力を望むものに、気前よく、声の主は恩寵を授け……それに、長沢の肉体、否、魂の器が耐えきれなかったのだ。2リットルしか入らないペットボトルに、100リットルの水を勢いよく注ぎ込んだら膨れ上がって変形する、それだけの事だ。
『レフェリーに戻ります。どうやら長沢選手は正常な発音能力を失ってしまったようですので、私が以後、代弁します』
「……はぁ。お前、将来レフェリーやるのはどうだ? 才能あるぜ」
《$B$R$R$R$R!";d$O!"KbK!%+!<%I!"1v$NCl$r<j;%$+$iH/F0$9$k!*(B》
もはや意味をなさない言葉を叫びながら、長沢が触手の一つで魔法カードを提示する。“塩の柱”。そのカードからは、はっきりと闇の力を感じ取れる。あれが、ダークファイブとして長沢に与えられたカードなのか?
『長沢選手の魔法カード、“塩の柱”の発動を確認! えー、何々? このカードは、自分のデッキの上から10枚をロストする事で発動できる。それにより、場に塩の柱を出現させる。塩の柱の効果は、このアーティファクトがある限り、すべてのモンスターのステータスは0となり、戦闘を行う事ができない』
「何?!」
『い、いや、ちょっとまって。アンブロシアの効果はカードがロストされる度に、相手に“喜悦の毒”カウンターを一つ置く効果です! そして、カウンターが5つ乗った時、相手プレイヤーに3ダメージを与える……!』
ちょっとまてなんだこのクソ雑なインチキコンボ!?
アンブロシアの効果、本来は悦楽デッキでも満たすのが難しいんだぞ!? それをたった一枚の魔法カードで!?
《縺??縺イ縺イ縺イ?√?豁サ縺ュ?√?蟯ゥ逕ー??シ?》
長沢がデッキの上から10枚を雑に引き、引いたカードを触手でずたずたに引き裂く。おい、人のデッキだと思ってめちゃくちゃするな!?
舞い散るカードの破片。それが、雪の結晶のように吹きすさび、冷たい吹雪が場に吹き荒れる。だが、すぐに気が付く。舞い散っているのは氷の破片ではなく、塩の欠片。
そして塩の吹雪の向こうから、塩の柱が舞い降りる。六角柱のそれが、ずん、と重々しい音を立てて場に突き立てられた。
途端、触れた場所から全てが塩へと変わっていく。床が白く染まり、瞬く間に広がったそれから逃げる事は出来ず、場にいる全てのモンスターがそれに飲み込まれる。
ダークスカルも、サベッジハンマーも、アンブロシアでさえも飲み込まれ、塩の彫像と化す。
だが、モンスター効果は失われていない。
動けなくなったアンブロシアの代わりに、怪物と化した長沢の体から、いくつもの触手が伸びる。鋭くとがった五本の触手が、岩田さんに襲い掛かる。
『い……岩田さぁん!!』
「が……っ!」
怪物の攻撃に、只人である岩田さんが抗えるはずもない。
抵抗空しく、その身を貫く触手の一撃。岩田さんの口から、血の混じった吐息が零れた。
ず、と触手が引き抜かれる。その先端は血と、おぞましい毒液によってぬらぬらと光っていた。
がっ、と膝をつき、黒スーツのヒールが地面にうつぶせに倒れる。
その体は。もう、ぴくりとも、動かない。
『岩田さん……岩田さん! いやぁ、しっかりして! 岩田さん!!』
《縺イ繧??縺ッ縺ッ縺ッ?√?繧?▲縺滂シ√?繧?▲縺溘◇縲∝イゥ逕ー縺ォ菫コ縺悟享縺」縺溘s縺?=縺ゑシ?シ?》
触手をふるわせて勝ち誇るケイオススポーン。
……岩田さんのライフがどれだけ残っていても、特殊勝利条件を満たされては、もう敗北は免れられない。
闇のデュエルによる敗北は死。
それをどれだけ認めがたくとも、私はレフェリーである以上、それを認めなくてはならない。
『……う、うぅ。岩田選手のライフがゼロになった事により、このデュエル……長沢選手の、しょ、しょう……』
「く、くく」
その時だ。
私の言葉を、くぐもった笑いが、遮ったのは。




