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翠くんの憂鬱Part2

αとΩの同性の親を持つ楓は幼い頃に助けてくれたヒーローの翠に初恋を拗らせていた。

「やっぱり、会ってなかったか……」

 緑兄りょくにいは、少し含んだ表情を浮かべながら……いきなり吹き出した。


「えっ……なんの笑い?」 

緑兄りょくにいは、しばらくツボにハマったらしく肩を揺らしながら声は出さずに笑っていた。


すい、最近のかえでは色んな意味で凄いぞwww、しかも聞いてないかもしれないけどすいと同じ学校に行くと言ってたな。」


 緑兄りょくにいの言葉を聞いて頭の中が徐々に白くなるようだった。

俺は最近、かえでを見かける事もないのに、緑兄りょくにいには会ってるんだ……

悲しみとは違う感情で胸がチクリと痛んだ。


 なんだろう……緑兄りょくにいの顔をみるだけで泣きそうになる……

抱きしめていた犬のぬいぐるみに顔を埋めた時、緑兄りょくにいは俺の頭をポンポンと叩くと。

大丈夫だよ……

 そう言っていたけど、何が大丈夫なのかは分からなかった。


「緑!翠!ごはんできたから降りてきて。」


 お母さんの声に、俺の手を引きダイニングへと移動した。

こんな風に、さらっとエスコートが出来る様になりたいと思うのだった。


 ダイニングに着くと、そこには既に入浴を済ませた、お父さんが席についていた。


すい久々に会った父さんに言う事はないのか?」


 お父さんの唐突な質問に、ただいまと答えると緑兄りょくにいとお母さんが声を出して笑っていた。

お父さんは何故か、ふてくされているし……何が間違えてしまったかな?と思っていたら、

お母さんが笑いを堪えつつ、お父さんすいに会いたかったと言って貰いたいのよと言いながら、耐えられずに楽しそうに笑っていた。


 それを聞いたお父さんは、親なら当たり前だろうと耳を赤くしながらテレビに顔を向けてしまった。


「お父さんに会いたかったよ」


 そう言うと、お父さんの顔がふにゃりと崩れた。


「やっぱりすいは可愛いな。」


 お父さんの、言葉に緑兄りょくにいとお母さんも、可愛いと言い出していたたまれない気分になった時に、お母さんが冷めないうちに食べようと場を鎮めてくれた。

 テーブルに有る、うさぎ型に切られた林檎に胸が踊った……可愛い。


 いつもは機能重視のお母さんが俺が食べたいと言ったのを聞いて作ってくれるようになった思い出のうさぎの林檎だった。


 テーブルを囲みながら話をすると、いつも笑いが止まらなくなる。

俺の家族は、すいすいのままで良いと言ってくれて、思い切り甘やかしてくる。

頭が良く優しく、何でも出来る自慢の家族だ。


 ここに居る全員がα……それは俺を除いてだけど。


 バース診断が下ったあと親族の集まりの時に、お父さんとお母さんが遠い親戚の人達に何かを言われているのが見えて気になり近づくと声が聞こえた。


「αが産めないなんてね……せめてΩならαを産める可能性があったのにβだなんて可もなく不可もなくじゃない……」


 そんな事を言われて、悔しさで手が震えたのを覚えている。

 その時お父さんが、すいは優秀で努力家の俺の自慢の息子ですよと続けた時に俺は涙を止めることが出来なかった。

 俺を見つけた緑兄りょくにいが、あまり人目につかない場所へと連れて行ってくれてニコニコとした笑顔を向けながら口を開いた。


すいは、俺の可愛い弟なんだから変な人の言う事は、気にしなくて良いんだよ、もしバース性で、悩むことがあるなら明言を避ければ良いよ。すいは真面目な努力家なんだから、おのずと評価は付いてくるよ。だからお兄ちゃんに笑顔を見せて。」


 そう言い終わると、俺をぎゅうぎゅうと抱きしめた。

そんな事が有ってから家族の甘やかしがレベルアップしたようだった。


「そういえば、かえでくんは元気かい?」


 そう聞かれ、最近は会ってないよと伝えるとお父さんとお母さんは凄く驚いた顔をしていた。

緑兄りょくにいだけが声をださずに笑っていた。


「嘘だろ……あんなに似ているのに……」


 そこまで言った時に、緑兄りょくにいが、父さん!と言葉を止めた。

お父さんは、ゴメンと言いながら両手で口を隠すポーズをとったので、それを見て又みんなで笑った。


かえではるかさんに似ているのは知っているし……Ωって話は、初めて出会った時に心無い大人が話していたから知ってる。


 βとΩって……だめなのな……


 ✽✽✽✽


 あの時は会長を出来るか悩んでいたけど、みんなの協力もあって今のところは、なんとかなっていた。

 今日の入学式で挨拶をするのは緊張するけど、かえでに会えるかもしれないと思うと胸が熱くなった。

 かなめに、そろそろ時間だから行こうと言われ集合場へと歩いていると、かなめが嬉しそうに口を開いた。


「今年の1年に、すげぇ美人なビッチΩが居るんだって……ガチで落としたいな……」


 はぁ〜、ここを学校だと認識してるか心配になる発言に頭が痛くなったから、かなめの事はスルーした。


 壇上に上がった時に、少しザワザワしている中心に遠目でも、綺麗な子が居るのが分かり目線で追いかけてしまった時に……目が合った。

 ヤバイ……目が離せなくなる……

怖くなり視線を外すと、その後もなるべくその人に視線を向けないようにした。


なんとか全ての行事が終わり、帰ろうと思ったのに、鞄を置いたまま、かなめが居なくなっていた…

 さすがに校内を探すのは無理なので先に帰ることにした。


 かなめはαなのかな……

生徒会は全員αとの噂があるけど俺はβだ……

その時、小さな溜息を止めることは出来なかった……


「すぅーいぃーくぅーん」


 後から名前を呼ばれた気がして、振り向くとアラスカンマラミュートの子犬みたいにニコニコしながら両手を振りながら走ってくる人がみえた。


 なんで……俺の名前を知ってるの……?




今回も最期まで読んで頂きありがとうございます。


翠は楓に会ってないと思っていますが、楓は翠くん観察のために、ほぼ毎日遠くから見守っています。

また緑兄と翠のお母さんを情報の刺客としてるので、翠の実家には週5で通っています。


次回更新は8/5(月)を予定してますので、また読んで頂けると嬉しいです。



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