翠くんの憂鬱Part1
αとΩの同性の両親を持つ楓は見た目からΩと思われているが本当はαである。
そんな楓を幼い頃に助けた2才年上のヒーロー翠に初恋を拗らせていた。
またαの両親を持つ翠にも悩む事があるようで実家へ行くことにした。
俺は本当に皆の期待に答えることが出来るのか……
【生徒会長】
あまりのプレッシャーから吐きそうになるのを、うまく取り繕っている自分に呆れる……。
かなめの方が適任なのに、早々と副会長に自ら立候補したのは、かなめっぽいと思うけど……
今週末は久々に実家へと帰ることを決めておいて本当に良かったと思う。
緑兄なら、話を聞いてくれるだろう……
「翠が、生徒会長って納得でしかないよな。」
クラスの誰かが、そういうと次々へと賛同の声が上がる度に騙しているような罪悪感に押しつぶされそうだ。
早く、実家に帰って可愛物いに囲まれたい……。
✽✽✽✽
「ただいま……」
玄関を開けると飛び込んで来た実家の匂いに、張っていた気が良い感じに抜けていった。
俺が本当の自分に戻れる唯一の場所。
「翠、おかえり。」
笑顔で出迎えてくれた、お母さんを見ただけなのに泣きたくなるのは何故なんだろう……。
「お母さん今日、緑兄は早く帰って来る?」
俺の質問に、緑もお父さんも早く帰ると教えてくれた。
そして俺の顔を見るなり、顔が疲れてるから早く楽な服に着替えて来たら?と心配そうな顔をしていた。
自分の使っていた部屋のドアを開けるときが、1番緊張する……
もう家を出たから俺の部屋じゃ無くなってたら……
お父さんもお母さんも、そんな事を思うなんてありえないと思いながらも毎回、変な緊張をしてしまう。
カチャリと開けた先には、寮に入る前に俺が使っていたままだった。
ここに戻ってくると気付かされる……
本当は【かっこいい】よりも【かわいい】が好きで、自分に自信なんて無い……
家から一歩でも外にでたら緑兄の、様に見せようと自分を偽っている……
お気に入りの大きな犬の、ぬいぐるみを抱きしめながら座り顔を埋めると声が零れ落ちた。
疲れたな……
そのまま目を閉じていたら、自分でも気付かない内に眠っていたらしく、ドアをノックする音で目がさめた。
「翠おかえり、入っても大丈夫?」
ドアの所には男の俺でも見惚れる程の容姿をもった7才年上の緑兄が、立っていた。
年が離れているせいか、俺の言う事は何かがない限り肯定してくれて、味方になってくれる優しい兄だ。
「翠、入っちゃダメかな?」
立ってるだけなのに凄いオーラだなと思いながら頷くと、隣に腰を下ろして俺とぬいぐるみを同時に抱きしめながら、翠は頑張り屋さんだから無理してるんじゃないか?
そう優しい言葉をかけてくれた、緑兄の声を聞くだけで落ち着くのは何故なんだろう。
「俺……推薦で生徒会長に選ばれけど、嬉しいより不安な気持ちが大きいんだ……」
こんな気弱な姿は家族以外には見せれないと思うと、お腹がキリリと痛んだ。
緑兄は、誰しも初めての事には不安は付き物と言っても翠は悩んでしまいそうだから、生徒会の人達に頼っても良いんだよ。
俺もそうだったよ……と言っても翠は悩んでしまいそうだけど……
生徒会は1人でやる仕事ではないから大丈夫さと優しく微笑んでいた。
「そう言えば最近、楓には会ってる?」
楓の名前が出て胸がドキンと、高鳴った。
なんで楓の話を出したんだろう……
✽✽✽✽
楓が中学の制服に身を包んだ頃、やっと俺は胸に潜んでいる楓に向ける気持ちの正体に気付いた。
段々と膨れ上がる気持ちを楓知られたくなかった。
ただの年上の幼馴染の俺はこれ以上、気持ちが大きくなるのを恐れて高校は条件のあう寮のある学校を選んだ。
物理的に距離をとれば気持ちが治まるかと、思っていたけれど会えなくなった今のほうが楓の考える時間が増えてしまった。
俺じゃダメだと分かっていたから……胸が苦しくなった。
そんな頃、俺のことが好きだと言ってきた楓とは見た目が正反対なチャラい容姿の同級生や先輩と付き合いはじめた。
小さくて可愛らしい楓とは正反対だったけれど、タレ目に長いまつげ、目尻のホクロ……
似てる所を見つけて付き合うことを決めた。
そんな打算的な考えから楓への気持に上書きできるかと思っていたけれど、そんなには上手くは行かなかった……
何故か、その頃から楓を見かけることが無くなった事もあって、少しづつでも楓に対する気持ちが落ち着くといいと感じた。
「初恋は実らないって聞くし……」
自分で言って傷付いてる事を自覚すると、付き合った人と別れても、少しでも楓に似てる人からの告白を受けた時に特定の人が居なかったら考えなしに付き合っていた……。
何故か見た目は初めての彼氏に似た背の大きなチャラい系が多かった。
俺……最低だよな……生徒会長って柄じゃない……
今回も読んで頂きありがとうございます。
翠は、楓の姿が見えないと思っていますが、初恋拗らせboy楓は、ひっそりと情報収集したり、情報刺客として緑を手玉にとっています。
今日中にあと1話、更新出来るようにがんばります。
次回も読んで頂けると嬉しいです。