翠くんの望むままに
αとΩの同性の両親をもつΩに見えるαの楓は、幼い頃に助けてくれたヒーローの、αの両親を持つαに見えるβの翠に初恋を拗らせていた。
※オメガバース作品ですが作者の個人的解釈が含まれています。
※糖度高め版は、アルファポリスさんにて更新しております(年齢注意)
――誰も受け入れたことがない……
真っ直ぐな目を向けながらも不安気に瞳を揺らす翠くん。
正直、僕は翠くんが何を言いたいのかが、理解する事がむずかしい……
翠くんが僕の事を好きなのに、それを隠しながら別の人と何人も付き合っていたと聞いているし……
誰も受け入れたことがなかったなら、僕が翠くんを受け入れれば、いいんじゃないか?
僕としては、翠くんと気持ちだけではなく全て繋がりたいと気持ち以外はないから、どう返事をしたらいいか分からない。
「楓……俺さ初めて受け入れたいと思ったんだ……君の事を……」
翠くんの言葉を受けて僕の顔は一気に熱を持った。
翠くんの初めてを僕が……
「翠くん……僕はいつまで待てばいいの?」
ちゃんと言葉を発する事ができたか分からないけど、そんな僕の言葉に翠くんは、11月には落ち着かせると答えた。
――いままで、たくさん待ってきた……翠くんを待つことは苦じゃない。
「その時には、ちゃんと僕を迎えにきてね」
僕の言葉を聞いて、翠くんは僕の事を抱き締めるながら『必ず』と呟いた。
◇◇◇◇
あのグダグダな旅行から3ヶ月が経った。
翠くんが頑張っているのに、ただただボーっと過ごすのも時間をもてあましそうで、じぃちゃんの会社でバイトをする事にした。
成績が落ちたら、辞めさせると父さんには言われたけれど翠くんの事を考えると頑張れた。
と同時に、コネがある事で最初の一歩が違う事にも気付いた。
――そして、僕はまだ子どもで親の庇護の元でなければ、こんなにも好きなように行動する事が出来ないと言うことを実感した。
空くんが、年上との付き合い初めは自分のふがいなさに凄く悩んだと言っていた。
今でこそ、対等で違和感を感じさせない関係の空くんと先生ですら、初めはそうだっと聞くと少し自分に自信が持てた。
それでも、先を行く翠くんを追いかけているだけではないかと思うと胸が苦しくなる。
そんな考えが変わったのは、やっぱりバイトを始めたのが大きく今まで知らなかった知識を覚えた。
「楓!」
久しぶりに聞いた翠くんの声の方へと体を向けると笑顔の翠くんがそこにいた。
「俺、推薦が決まった!」
そう言うと、僕に抱き付く翠くんの力強さに思わず、よろけそうになるのを堪えた。
「来週、面接で合否が決まる。」
その言葉の意味はちゃんと理解している。
翠くんが11月と言ったのは推薦を受けるために頑張っていたから。
努力家の翠くんが頑張っているのを遠目でしか応援できなかったけれど、今の言葉を聞いて翠くんなら大丈夫だと思える。
「翠くん良かったね」
翠くんの腰に手をまわすと翠くんは、いつまでも楓の隣にいたいから頑張れた呟いた、そんな翠くんが可愛くて腰に回した手に力が入る。
「面背次第だけど、先生には小野寺なら大丈夫と言われた……だから、きちんと結果がでたら楓の時間を俺に少し分けてほしい……」
翠くんの言ってる意味が分からないほど僕はもう子どもではない、翠くんの肩に頭を乗せ『もちろん』と答えると、翠くんは面接をせいいっぱい頑張ってくると言った。
今日は一緒に帰ろうと翠くんに提案され久々に3年生の教室まで翠くんを迎えに来たまでは良かった……
あまりにも平和すぎて僕は彼の存在を忘れていた……
「か・え・で・ちゃん♡」
言葉と同時に腰へと延びてきた手を避けると、そこに居たのは案の定、要せんぱいだった。
逃げられちゃったとケラケラと笑ってる姿は何故か寂しそうで、よせばいいのに声をかけてしまった……
「大内せんぱいと何かあったんですか?」
この時あきらかに表情が固まった要せんぱいは、いつもは飄々とした表情が影を潜め、いままで見たことがない真面目な顔つきで、りっきゅんに彼女が出来たと力なさげにもらす。
生徒会のメンバーに特定の相手が出来れば噂になるハズ、要せんぱいの勘違いじゃないか?と思いつつも、いつもと違う姿が気になり、座り込んでいる要せんぱいの横に腰を下ろした。
「……親とか妹とかベタな感じじゃないの?」
要せんぱいは、大内せんぱいのお母さんには会った事があるし妹は居ないと答えると、自分の言葉にショックを受けたのか完全に表情筋が働いていなかった。
「ちゃんと話をしたほうが、いいと思いますよ」
僕の言葉を聞いて、抱き付こうとした要せんぱいの腕を見知った人が無表情で捻り上げる。
「痛い痛い痛い!翠、ごめんって……」
普段は気付かないけど、翠くん体を鍛えてるからアレは絶対に痛そうだな……って見ていると教室の入口に立っている大内せんぱいに気づいた。
――部外者が、口を挟んでもいいのかな……
それでも大内せんぱいが要せんぱいを見ていてくれないと、翠くんに会いに教室に行くたびに絡まれる、そんなのはゴメンだ。
「ねぇ、大内せんぱい彼女できたの?」
みるみる顔が赤くなっていく大内せんぱいは、誰がそんな事を言い出したんだと怒っているように見えた。
「要せんぱいが、それで僕にグチグチ絡んで来てたんで、なんとかしといて下さい。」
僕はそれだけ言うと、まだ要せんぱいの手を捻りあげている翠くんの手を取ると足を進めた。
「――要せんぱいが、あっちこっちに本気でもないのに手を出そうとしてるから、大内せんぱいも素直になれないだけでしょ?」
僕の言葉に翠くんは、フハッと声を発すると楓は凄いなと頭を撫でた。
ほのかに香る柑橘系の香り、幾度となく翠くんから漂ってくるけど香水でもなく洗剤でもない……翠くんの香り……
「要も律も……素直じゃないからな……」
翠くんは、少し前の俺もなと続けた。
その後は無言で手を繋いだままで、いつもの道を2人で歩き、気付いた時には翠くんの家の前に着いていた。
どこかに、寄ってくれば良かったと思う気持ちと、これ以上一緒に居たら離れたくなくなりそうとの気持ちで揺れていると。
「楓、来週の金曜日には面接があるから……楓が平気だったら、家に来ないか?その日は父さんも母さんも緑兄も……帰りが遅いんだ。」
翠くんからの、お誘いを断るはずはない。
僕は頷くと、約束だよと繋いだ翠くんの手にキスを落とした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




