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翠くんは頑固だ……

αとΩの同性の両親をもつΩに見えるαの楓は、幼い頃に助けてくれたヒーローの、αの両親を持つαに見えるβの翠初恋を拗らせていた。


※オメガバース作品ですが作者の個人的解釈が含まれてい

ます。


翠くんの顔を見ると、すべてを諦めている様な表情を浮かべていて、そんなにもバースの事が気になるのかと思うと翠くんの内には何かが潜んでいる気がした……


「翠くんは、僕の事をどう思ってるの……」


不意にでた本音に、悪い予感ばかりを考えてしまう。

翠くんは何も答えずに、目を伏せていた。


「翠くんは、僕に似てないβの人達と付き合って――僕の事を忘れることが出来たの……?出来なかったから僕の事を思い出してたんでしょ?翠くんの隣に立つのが僕じゃダメな理由わけを教えてよ……僕に何が足りないの?」


翠くんは深い溜め息を1つ吐くと僕に向きあうと、しっかりと視線が合わさった。


「俺がβだからだ、楓がΩだと思っていた時も、αだと分かった今も俺とは違うと……痛いほど劣等感を感じるんだ……楓がダメなんじゃない、俺が楓の隣に立てないんだ。」


翠くんは、βが普通だと言うけど……僕は学年1位の成績をキープして生徒会長の仕事も完璧にこなしている翠くんが普通だと思えない……。

翠くんは、僕が思っていた以上に頑固で驚く……真面目だからこそ、固定観念に囚われているにちがいない。


「僕が、隣に立って欲しいって言ってもダメなの?」


翠くんは、僕の目を反らすことなく頷いた。


一緒に居て楽しくないの?と尋ねれば楽しいよと翠くんは答える……ならなんでだよと思うと同時にイライラとしてきた。


―――楓には俺よりも、もっと相応ふさわしい相手が居るはずだよ……

そう泣きそうな笑顔を向けられた時に、僕の頭の中で何かが弾ける音がした。


「僕の気持ちを勝手に決めつけないでって、さっきも言ったよ!」


――あぁダメだ……もう自分でも感情を抑えることができそうになかった。


「翠くんは、さっきから自分はβだからとか言うけど、僕からしたら、それが何って感じなの!この公園で翠くんと初めて会った、あの時から僕の心の中には翠くんしか居ないんだよ……翠くんの事が好きで……好きで……大好きで……翠くんに恋人が出来たのを見た時の僕の気持ちなんて翠くん分からないでしょ!翠くんの恋人みたいになりたくて、自分磨きしてたの知らないでしょ!」



大きく目を広げた翠くんの顔を見ても僕の口は止まらなかった。


「翠くんは気付いてないと思うけど、ずっと翠くんの事を見ていたのも知らないでしょ!毎日、翠くんのお家に行ってた事も気付いてないでしょ?そんな翠くんに僕の気持ちを決められるのは凄く嫌だ!僕の片思いを甘く見るな……」


言い切った時に、血の気が退いていくのが分かった……

翠くんが若干、退いているのも分かった……当たり前だ、幼馴染みがストーカーっぽい事をしていたんだ……

翠くんの顔を見ることが出来ずに顔を伏せると、僕の体は翠くんに引き寄せられた。


「楓、ありがとう……」


耳元で聞こえた翠くんの声に胸が跳ねた……

僕の気持ちが伝わった?

仮が外れて、付き合える?

そんな事を考えていた僕の耳に疑いたくなる言葉が飛び込んできた。


「それでも、俺は楓の隣に立つ勇気が持てない……楓も何人か恋人が居たんだろ?楓が入学してから色々な話が俺の耳にも届いていたよ……」


えっ……


僕の胸がドクンドクンと鈍い痛みを奏で、鼻の奥にツンとした痛みを感じた。

翠くんの胸を両手で押して翠くんから距離を取る時には、勝手に流れる涙を止めることは出来なかった。


「そんな噂話!翠くんにだけは信じて欲しくなかった……僕の言葉じゃなくて誰か分からない人の話を信じて欲しくなかった……」


僕は翠くんと目を合わす事が出来ずにその場から逃げ出した、後ろから名前をよぶ声が聞こえたけれど、今はそれに答えることは出来なかった……。



ビッチΩ……



今になって、この噂が僕にのし掛かってくるとは思わなかった……。


僕が曖昧な表現をしていなかったら、こんな状況にはならなかった……


翠くんの口から聞きたくなかったけど、原因を作ったのは僕だ……

あんなに、えらそうな事を言ったのに……情けない……


家に帰ってからも、思い出すと涙が止まらなかった……

初めての制服デート初めは楽しかったのにな……どうして、こうなっちゃったんだろう……今の状況はさすがにヤバいなと思うと乾いた笑が出た。


*****


「それで、そんなに目が腫れてるのかよ……」


心配そうに僕の顔を覗き込む空くんと、冷やした方がいいよとハンカチを渡す光くん。


「楓はピュアボーイなのにな……好きな人に誤解されるの辛いよな……」


空くんの言葉に光くんが、やっぱり……チェリー……そうなんだ……何気に楓くんってウブだもんねと笑っていた。

気落ちしている僕に、2人は何を言い出すんだと想いながらも、嫌な気はしなかった。


「翠くんと離れたくない……」


そうだよなぁ~一途に想い続けていた相手だもんな……と空くんに慰めて貰っていると、光くんはなんで先輩から逃げたのと質問を投げ掛けた。


「自分が恥ずかしかったんだ……今までバースをちゃんと言えなかった自分に……」


初めは3人で話していたのに次第にクラスメイトも会話に入ってきた。


相模さがみって、マジでαなの?」


僕が頷くのをみて何人かが驚いた顔をしていた……



「αでも振られる事があるんだな……あまり気を落とすなよ」


何故か皆に慰められる状況に頭がついていかずにいると、なぜか光くんが楓くんはピュアボーイなチェリー君だから皆でフォローしてあげてよと笑っていた。


その派手な見た目でピュアボーイなのかよw


ビッチΩって、見かけ倒しだったのか……


クラスの皆からの声は、想像していたものとは違った。


その後も、何故か皆に慰めの言葉をかけられたりしたけれど、僕が考えていたような手のひら返しをする人は誰も居なかった。

光くんと仲が良い女子達には何故か拝まれながら、チャラ男ピュアありがとうございますと言われた……


「なぁ~恐れることなんて無かっただろ、うちのクラスだけかもしれないけど……みんな楓は楓としか思ってないじゃん」


ニカッと笑った空くんを見ると目頭が熱くなった。


「相模の失恋を励ます会をやろーぜ」


誰がの声で、一気に冷静になった……


――えっ……僕まだ振られてないよね……


「ねぇ……僕は振られたの……かな?」


僕の発した言葉で、さっきまでザワついていた教室から音が消えた……


「翠くんの口から楓の事が嫌いと言われるまで諦めない!」


僕の言葉を聞いた、みんなはそれぞれ応援の言葉を投げ掛けてくれた。


「それなら、楓はどうしたい?1人で話に行ってまた逃げちゃうんじゃね?」


空くんの言葉に、今度は逃げないし逃さないよと言うと空くんは頑張れと言いながら全力で僕の背中を叩いた。


きっと僕が見えてない事もあったんだ……


今度こそ、ちゃんと話をしよう……


そして、翠くんの話を今度こそは感情的にならずに聞こう。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

次回も読んで頂けると嬉しいです。


※光くんと仲の良い女の子達3人を近々SS として出したいなと考えています。

名前は、桜ちゃん百合ちゃん菫ちゃんです。

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