75. エリック王子
マグダリーナとヴェリタスは、エリックとドロシーに挨拶をして、サロンの席についた。
「ショウネシー子爵、まずは先の冬に私の命を助けてくれて、ありがとう。ずっと直接お礼が言いたかったんだ」
子爵と呼ばれて、マグダリーナは一瞬誰のことだっけ? と呆けたが、家は伯爵になったのだったと思い出す。
自分の爵位だ。
「こちらこそ素敵な髪飾りをありがとうございました。大切な友人とお揃いの髪飾りを、お互いに付け合ったりできて嬉しい贈り物でした」
「まあ、それは素敵ね! 私もアグネスと何かお揃いで作ろうかしら?」
エリックの横で、ドロシー王女が愉しげに思案した。
「良かった。どの様なものが使いやすいか、悩んで決めた甲斐があったよ」
贈り物を贈った相手が満足していることに安心して、エリック王子はサロンのメニューをマグダリーナとヴェリタスに渡す。
「君たちには、我が王家が本当に世話になっている。ドロシー姉上の縁談も無事断ることができた。これからも力になって貰えると嬉しい」
マグダリーナとヴェリタスは頷いた。
「「私たちが力になれることでしたら」」
ショウネシー領の為にも、国と王家には盤石で居てもらわないといけない。
「ありがたい。私の代に君たちが居てくれて良かったよ」
(そうか……エリック王子はいずれ即位した後を考えて、もう優秀な人材に目をかけて、信頼関係を築いていこうとしているのね。またベンソンみたいな人が出ないとも限らないし、味方は多い方が良いもの)
「ところでショウネシー子爵は、私の婚約者の座に興味はあるかい?」
メニューの肉と魚どっちにする? みたいな気軽さで、エリック王子が聞いてくる。
「申し訳ございませんが、ありません。それと爵位で呼ばれるのは慣れないもので、学園の中ではご容赦くださいませ」
自分でも以外な程、エリック王子との結婚に興味がなかった。
バーナードが驚いた顔で、マグダリーナを見る。
「俺ではなく、相手は兄上だぞ? 何が不満なんだ??」
「エリック王子のお人柄や能力は素晴らしいと思っています。ただ私は王太子妃、王妃といった地位に着くのが嫌なのです。恐れ多すぎます」
エリックはマグダリーナとバーナードのやり取りを見て、微笑ましげにしている。
断られるのは想定内だったようだ。
「ショウネシー嬢、それでは私の婚約者が決まった時には、学園にいる間、その令嬢の側仕えとして助けてあげてほしい」
「そういうことでしたら、承ります」
今の王妃とシャロンのような関係を、望まれているのだろう……エリック王子の婚約者がいつ決まるのか分からないけど、相性の合う性格の令嬢だといい。
その後は普通に、他愛のない会話と食事を楽しんだ。
エリック王子はマグダリーナ達に、エステラやハイエルフの事を根掘り葉掘り聞くような、無粋なことはされなかった。
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