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69. ヒラの叫び

「お父さま!!!」


 マグダリーナとアンソニーは、アッシに映し出された映像に驚愕する。


「ダモ危ない。ヒラ行ってくるぅ」

「お願い。ハラも行って!」


 ヒラに続けて、エステラに頼まれてハラも転移した。

 エステラも杖を手にする。が。


「だめぇ!!! タラ絶対来ちゃダメぇ!!!!」

 ヒラの叫びが、魔法で響いた。


 ニレルは素早くエステラの杖を取り上げる。


「眠れ」

 そしてエステラが文句を言う前に、眠らせた。


『伯爵!!』

 画面からシャロンの声が聞こえて、ホッとする。

 だが、映し出されたその姿は、ドレスが裂け、傷だらけであった。


『おかしなほど防御できると思ったら、やはりこの変な魔獣のせいだったか』


 そう言って、真っ黒く枯れ果てた茶マゴーが放り出された。

 シャロンの美しい顔が歪む。


『ベンソン……っ』


ぶつ。



 そこで映像が途切れた。

「茶マゴー1号、活動停止を確認」


 マゴー1号の報告に、イラナが転移しはじめる。


「くそっ」

 寸前、エデンがササミ(メス)を掴んで投げた。イラナと一緒に、ササミ(メス)が転移魔法で消える。


「エデン……ヒラの言葉と茶マゴーのあの映像……」

 珍しくニレルが険しい顔をする。


「くそっ、ダーモットはダメかもしれん」


 クシャクシャとエデンは自らの手で髪を掻き乱す。


「そんな!!!!」

 マグダリーナは叫んだ。


 マグダリーナとアンソニーの肩をハンフリーが抱く。

 マグダリーナは、気づいたら泣いていた。


「イラナのやつ、勝手に行きやがって……!! あの空間は、人数制限付きなんだ」

「あと何人入れるんだ?」


 ヴェリタスにエデンは答えた。

「もう定員だ。後は魔獣しか入れん」

「!!」


 ニレルは立ち上がり、武器を手にする。


「僕とエデンはとりあえず王宮に行ってくる」

「だったら俺も、」

「ヴェリタス、君はダメだ。あのベンソンという狂人が、君を見て何をするかわからない」

「……っ」


「それからリーナとトニー」

 ニレルはそっとマグダリーナの涙を拭った。


「ヒラは回復魔法も得意だ。諦めずに女神に祈っててくれるかい?」

「わかったわ」

 アンソニーも涙を堪えて頷く。


「それから二人に頼み事をしていいかい?」

「いいわ、なんでもやる!」

「僕も!」


「エステラが気がついたら、絶対僕らの後を追わないようにしてほしい。あの空間に居るのは、エルフの死の狼……エルフ族がハーフを食べさせる為に作った、穢毒を撒き散らす魔獣だ。死の狼はエステラを見たら、何がなんでも食い殺そうとしてくる筈だから」


「わかったわ!」

「エステラの側にいて、絶対守るよ!」

「いい子達だ」


 ニレルは二人の頭を撫でると、王宮へ転移した。


「エデン、ありったけの回復薬を用意しておく。必要ならマゴーに送らせるから、遠慮せずに必ず連絡をしてほしい」

 ハンフリーの言葉に頷いて、エデンもニレルの後を追い、転移した。


 言葉通りハンフリーはマゴーと回復薬の準備を始める。



 ふいにヴェリタスが茶マゴーと出て行こうとする。

 気づいたレベッカが、ヴェリタスにしがみついた。


「ちょっと、こんな時にどこに行こうとするのよ!」

「な……っ、放せよ、オーブリー邸に行くだけだ」


 ライアンも察して、ヴェリタスの腕を掴む。


「何しに行くつもりだ! 侯爵夫人が帰って来た時、お前が居なかったらどんな顔をすると思ってる」

「そうよ! 今はここから誰一人居なくなったらいけないのよ。じゃないと帰って来る人達が困るでしょう、それくらい私にも分かるわ!」


「あいつらが動いて油断してる間に、あそこの魔導具全部使い物にならないようにしておくんだよ! 今しか機会がない!」


「……確かにそうだね」

 ハンフリーが呟いた。


「だろ? だから言ってくる」

「いいや、君が行く必要はないよ。マゴー1号」


「はい、ハンフリー様。特殊黒マゴー部隊整列!」


 マゴー1号の言葉に、どこからともなく転移魔法で、全身真っ黒の、黒ゴーグルのマゴーがわらわら現れた。


 密かにエステラが作り、シャロンの《影》の訓練を受けさせていたマゴー達だ。


 ハンフリーは、本体(眼鏡)をくいっと持ち上げる。


「君たちの最初の任務だ。オーブリー邸に忍び込み、全ての魔導具を破壊せよ。全てだ。水道も竈もトイレも容赦するな」


「「「「「サーイエッサー!!!」」」」」

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