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63. ショウネシー家の陞爵

 翌日、ショウネシー領以外はどこへ行っても神殿の話しで持ちきりだった。


 そして貴族達も王宮に詰めかけた。

 いくらなんでもあのように強引に教会を退けるとは、聞いていないと苦情を言うもの達だ。


 急遽王宮では貴族会議が開かれた。



「諸侯らにあらかじめ連絡がなかった事は詫びよう、だが先日学園に魔獣が放たれ、建造中の女神像が破壊された事件のみならず、数百年他国と交流をして来なかったエルロンドから第一王女へ縁談が来るなど、異常事態が多発したため、本件は急ぐ必要があると判断したのだ。実際昨日教会を取り壊す前に、地下があると判明した教会からは、数名の貴族女性が救出されておる。武器が押収された所もある。本来なら該当領地の者の管理不行き届きとして罰する事になるのだが、今回は不問と致そう。以上を踏まえて、神殿は皆、土地建物共に国の所有であるとする。また諸侯らに緊急に領地の教会の資料の提出を求めた際、虚偽の資料を提出したものがおる。この後、別途事情を説明してもらおう。改めて今後我が国、我が国民は、創世の女神とその代理人エルフェーラの二柱を女神として崇め、より一層豊かな国を目指すこととする。他国の信仰に口出しはせぬが、教会の悪徳を我が国に持ち込む事は罷りならん」



 セドリック王の言葉に、意気揚々と苦情を言いに来た、虚偽の資料を提出した貴族達は、一様に震え上がった。


 マグダリーナとヴェリタスは、今日も学園を休んでダーモットとシャロンと一緒にこの会議の場にいた。

 覇気のあるセドリックの姿を見て、ダーモットはほっとしているようだった。


 王の後を宰相が引き継ぎ、今回の改革にショウネシー領の魔法使いと、シャロン、ヴェリタス、マグダリーナの鑑定魔法の貢献が大きいことを説明する。

 ショウネシー子爵家は伯爵家に、マグダリーナは子爵に陞爵し、ヴェリタスも子爵に叙爵され、シャロン、ヴェリタス、マグダリーナにはそれぞれ褒賞金が与えられた。


 マグダリーナは自身が子爵になったことより、ショウネシー家が伯爵家になったことが嬉しかった。

 だって、可愛いアンソニーに『伯爵家の嫡男』という魅力的なオプションが付けば、将来良いお嫁さんが貰えるに違いない。


 もしかしたら、ハンフリーよりはやく、婚約者が出来ちゃったりするかも知れない。



 会議が終わり、別途事情聴取のある方々以外解散となり、そんな呑気な事を考えていた時だ。

 白髪の混じった男性が勢いよく近づいてくる。


「シャロン!!」

「あら、ベンソン様」

「貴様、よくも余計な事を!!」


 ベンソンと呼ばれた男性は、いきなり手に持ってた杖を振り上げ、シャロンに殴りかかる。

 だが、側にいたマゴーが、ガッチリ魔法で防御していた。


 ベンソンはそれでも諦めずに四、五回殴りつけたあと、火炎魔法を放ってきた。

 もちろんマゴーの防御で、シャロンには擦り傷一つ付いていない。


(こわい……人に暴力だけじゃなく魔法までって……異常だわ……)


 なんとかしなきゃと思うけど、どうしたらいいか分からず、マグダリーナは立ちすくんだ。

 熊師匠のように、首を切ってしまえば良いわけではないのだし。



「やめろ!!!」


 ヴェリタスがベンソンの腕を掴む。


「いきなり母上に襲いかかるなんて、あんたとうとう耄碌したのか!」

「放せ! 漸く妻の仇を切り捨てる事が出来ると思った瞬間、教会と共にあの女が消えたのだぞ! 貴様らさえ余計な事をしなければ……!!!」


「あの女……どなたか教国の関係者でしたの?」

「パイパーだ! お前がさっさとあの女を追い出して居れば、アビゲイルは死ななかったものを……伯爵家風情の小娘が、我がオーブリー家の嫁にしてやったのに、この役立たずが!」


 その場に居た伯爵の皆さんの鋭い視線が、ベンソンに集まる。


「パイパーさんが居なくなったのなら、お子様達はどうしてますの? ヘンリー様は……ああ、事情聴取でしたわね」

「平民の血が……しかもあの女の血が入った子など知るものか!」


 ぎりりとヴェリタスがベンソンの腕を捻じ上げた。


「あんたほんっとう、相変わらずだな。白髪が増えてんだから、そろそろ大人しくなれよ」

「放せ! 小僧!!」


 ベンソンが火炎を放とうとするのを、ヴェリタスは己の掌で抑え込んだ。


「わりぃ、もうあんたの魔法、見たくないんだ」

「……っ!! お前、ヴェリタスか!」


「気づいてなかったのか、本当に耄碌したんだな」

「ふっ、仕方ない。シャロン、お前の事は許してやらなくもない。その代わり、ヴェリタスは返してもらうぞ」


「別に許して頂かなくて、構いませんわ。貴方とは一生ご縁が無い方が良いと思っておりますの。ヴェリタス、行きましょう」

「はい、母上」


 その時ベンソンは、もう一度火炎魔法を放った。シャロンにではなく、呆然と戸惑っていたマグダリーナを狙って。


「リーナ!!」

 ずっと傍観していたダーモットが、マグダリーナを引き寄せる。そして。


 無詠唱で風魔法を発動させ、ベンソンの火炎をそのまま相手に返した。

 ベンソンは防御魔法で躱す。だが次の攻撃を放つ前に、ダーモットの鋭い風魔法に吹き飛ばされて、意識を失った。


「あら、手加減しなくても良かったのよ」

「話には聞いてましたけど、とんでもない人だね……」


「そうでしょう? 私の苦労がお分かりになって? さて皆さま、その方に介抱は不要です。下手に関わりますと大変面倒ですので、すぐこの場を離れる事をお勧めしますわ」


 皆シャロンの言に頷いて、そそくさと王宮を後にした。



 何が起こったか理解すると、マグダリーナは震えが止まらなかった。

 腕輪の自動防御で大丈夫だと理解してても、やっぱり恐い。


「ごめんなさい。せっかく陞爵したおめでたい日に、恐い思いをさせてしまったわね」


 コッコ車の中で、ぎゅっとシャロンがマグダリーナを抱きしめる。


「シャロン伯母様のせいじゃないわ……でもどうして城の衛兵が誰も止めに来なかったの?」

「あの部屋に結界を張られました」

 茶マゴーが答える。


「そういう小細工には頭が回る方なのよ」




◇◇◇




「パイパーが、教国人……まさか、私の妻ですよ?」


 ヘンリー・オーブリーが虚偽の報告をしたのは、愛するパイパーに「私達が出会った場所を無くしたくない」と言われたからだ。


 マゴーがパイパーに関する詳細な鑑定結果を、文官に渡していく。


「パイパーは侯爵を隠れ蓑に、何人かの国民を人身売買組織に渡していたようです。侯爵との婚姻契約書もワザと不備があるようにして、正式に受理されないようにしてありますね。ですから、パイパーは侯爵夫人ではなく、妾であり教国人です。他にも罪状として、前侯爵夫人……侯爵の母君を殺害して、その子を侯爵との間に産まれた子だと偽装し、頃合いを見て子を連れ去る計画だったようです。貴重な聖属性持ちの子を狙っていたんですね」

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