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48. 恋せよ乙女、ただしハイエルフ以外で

 索敵をしながら、熊師匠を探す。



 拠点からコッコ(オス)で少し移動したところで、索敵に一体引っかかった。


「大地よ、獲物を捕らえよ」


 学園に熊が出た時に、咄嗟に土魔法で足止めしたとヴェリタスが言っていたのを思い出して、アンソニーが土魔法を使う。


 土が柔らかすぎたのか、熊足がモゾモゾ動き出しそうだったので、アンソニーは更にその上から、慌てて氷魔法で膝上まで凍らせた。


 すかさずグレイが高く飛び上がり熊の頭を切り落とし、その肩に着地すると、背面に回って背中から二撃。二つの心臓を仕留めた。


「足留めをしたら、わざわざ首を落とす必要は無かったかな?」


 アンソニーが固めた魔法の強度を確認しながらグレイが言う。


「ルタが土魔法使った時はどうやったんです?」

「乗せた土がそのまま石になって固まるイメージでやった」


 そこにアーベルが助言する。


「首は落としておいた方が、より確実だぞ。知恵を巡らせて思いもよらない攻撃してくる時もあるからな」


 騎士達も、熊の傷跡を観察して、どうやったらこんな深く剣を入れれるんだと話しあってる。


「そろそろ処理始めます」とマゴー解体班が作業を始める。


 その後もう一体熊を仕留めてその日はおしまいにした。



 夕飯は森のきのこや野菜がたっぷり入った、熊汁だった。



 自由時間には森は暗く、それぞれテントや家にこもって読書などしながら、身体を休める。


 マグダリーナ達の家の窓からは、ニレルとエデンが花弁の内側が球状に光る不思議な花をカンテラ代わりに外を散策しているのが見えた。


 マグダリーナが外を気にしているのを見て、エステラが説明してくれる。


「ここは魔獣の数が多いから、騎士達が討伐したり、見回ってきちんと処理してても、やっぱり魔素の澱みが溜まりやすいの。熊師匠が多いと火魔法も気を使うしね。だから穢れ具合を調査してるのよ。それによって、神殿の『仕込み』具合も想定より変わってくるかも知れないから」

「王様は辺境伯領の穢れ対策に、神殿建設を依頼したの?」


「それもあるけど、ここは国境近くじゃない? 地続きの隣国のギルギス国はダンジョンだらけでどこの国とも戦してる場合じゃないから安心だけど、聖エルフェーラ教国人が入国してくるルートの一つでもあるから、王都の女神像建造の邪魔するんだったら、まず玄関口に置いてやろうかってとこね。諸外国にも《女神教》の存在を知ってもらいやすくなるし」


「と言うことは、今辺境伯領にいる教会関係者はどうなるの?」

「自国に帰っていただくわ。もちろん丁寧に送り帰すから大丈夫よ」


 それからエステラは、じっとマグダリーナを見て笑った。


「きっと前世じゃこんな歳で、こんな政治っぽい話する未来なんて想像もしてなかったわ」

「たしかにそうね!」


 マグダリーナもくすくす笑った。

 そしてずっと気になってた事を、聞く。


「エステラとニレルって……もしかして将来結婚するの?」

「え……っ、ああ、うん……うん、そうね。そうなるのかな? ずっと一緒にいる約束をしたもの」


 少し照れて、女の子の顔になったエステラがそう言った。とても可愛い。


「……人族はね、恋するように出来てるのよ。地に命を増やすためにね……だから他の種族とも混血出来るし、失恋したら次の恋を見つける……」


 エステラがひどく真面目な顔になった。


「ハイエルフは滅多に恋をしないけど、その滅多が起こると変になるのよ。エデンみたいに」

「恋が変……」


「相手への執着が半端ないし、絶対忘れないし忘れられないの。彼がショウネシー領に来た目的は、私から女神の名を聞き出して、お師匠の後追い自殺するつもりだったからよ」

「……っ、よく思い留まってくれたわね」


「ほんと……彼、黒のハイドラゴンに神命の刻を知らせる《黒の神官》だから、ただ死ぬだけなら世界を道連れにしてできたんだけど、それだとお師匠と同じとこに行けないから、まあなんとか……」


 いまなんかとんでもないこと言わなかった?


「私はニレルに対して、執着を持たせた責任があるから……」


 ふらふらと冒険者をしながら、時々ディオンヌの元を訪れていたニレルだったが、生まれたばかりエステラを抱いて「僕はこの子が欲しい」と言ったそうだ。


 それからずっと、ニレルはエステラと一緒にいる。


「ニレルに関しては、エデンみたいにならないようお師匠が躾けてくれてたから助かってる。リーナは? 誰か気になってる人いるの?」


「え? ええと、正直なんだかよくわからなくて……」


 エステラはじっとマグダリーナを見た。


「同じ年頃の子はなんとなく幼く感じるし、かと言って前世の年齢的にいいなと思う人が、今の私を好きになってくれたとしても、ロリコンで嫌だなと感じるし……」

「あー……」


「そもそも貴族の結婚って政略的なものでしょう? だから、傷物令嬢で、縁談来ないっていうのは楽だなと思ってたのに、王家からあんな話しが来ちゃったし、ずっと領で暮らすつもりだけど、それはそれで結婚してない小舅ってアンソニーのお嫁さんからしたら嫌かもとか色々考えちゃって」


「そっか。でもダーモットさんはリーナの好きな人と結婚させるって思ってるんだし、リーナは考えすぎずに、どんどん恋愛すれば良いんじゃないかな」

「どんどん?!」


「そ。失恋したら慰めてあげるから! 怖がらずにどんどんチャレンジしたらいいよ!」


 気づけば、マグダリーナの手をエステラが優しく包んでいる。


「もう! 失恋前提なの?!」


 マグダリーナは照れ隠しに膨れて見せた。

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