30. ゲインズ領の魔獣討伐依頼
ショウネシー領に、東隣のゲインズ領の領主、アルバーン伯爵がやってきた。
雪の中はるばると。
冒険者をしていたニレルに、領地の魔物討伐に参加して欲しいという依頼のために。
ゲインズ領には、マグダリーナとトニーが妖精のいたずらにあった時に、お世話になったので子爵邸で歓待する。
アルバーン伯爵は小太りのほんわかした雰囲気のおじさんで、最初はショウネシー領の状態を見てとても驚いていたが、ニレルとエステラがいればこういうこともあるかなとふんわり納得していた。
そしてなんと、マグダリーナに王立学園の制服を持って来てくれた。
「ディオンヌ御婆様には、僕が小さな頃からお世話になっててね。ゲインズ領の守り神みたいな方だったよ。だから去年スーリヤさんも御婆様も立て続けに亡くなった時に、エステラちゃんを養女に迎えようと思って用意してたんだけど、結局必要無くなってね。良かったら貰ってくれないかな」
エステラはニレルがいるから大丈夫と、養女の話は断ったそうだ。
「ありがとうございます。大切に着させていただきます」
「今年は王都からの討伐隊は、間に合わないのかい?」
ニレルの問いにアルバーン伯爵は表情を曇らせた。
「王都に流行病が入ったみたいでね、こちらに魔法使いをまわす余裕がないみたいなんだ」
「わかった。じゃあ僕とエステラと……多分あと何人かで討伐に行くよ」
「エステラちゃんも討伐に参加させるのかい?」
アルバーン伯爵は心配そうな顔をした。
「あの子は優秀な魔法使いだよ。心配いらない」
「そうか……御婆様の弟子だものな」
ニレルは明後日一日で討伐できる分だけ、と条件をつけて討伐を請負った。
アルバーン伯爵は一日だけでも助かると承諾してゲインズ領へ帰っていった。
エステラの周りにふわふわと小精霊達が集まっている。
エステラは小精霊に何か話しかけているようだった。
「明後日は雪が止んでるみたいよ」
「だったら丁度いい」
ニレルはダーモットに「明後日トニーを連れてっていいかい?」と聞く。
ダーモットは割と軽く「いいよ」と答えたので、アンソニーは不安になってニレルに聞いた。
「僕は役に立てますか?」
「もちろん」
マグダリーナは慌てた。ニレルが一緒とはいえやっぱり心配だった。
「私も一緒に行くわ! いいでしょう、お父さま」
ダーモットはため息を吐いた。
「仕方ないね。後からマゴーを連れて追いかけられても困るし……悪いがリーナも頼めるかい?」
「ああ、わかった。じゃあリーナはエステラの側を離れないでね」
「ええ、わかったわ」
それからふと、マゴーを連れて追いかけて来そうな人物が脳裏に浮かぶ。
「ルタは領内で大人しくしてくれるかしら」
ダーモットは盛大なため息を付いて、アッシでシャロンに通信を入れた。
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