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274. マグダリーナの武器

 ハンフリーに町の状況報告をし、マンドラゴンの一体を町長代理に任命したので、マグダリーナもダンジョンでレベル上げをすることにした。

 ちょうど税金の検討も終わったようで、ライアンもレベリングに合流出来るとのこと。


 本来なら中等部ともなれば、そろそろこの時期は、お茶会などの小規模な社交に参加しはじめるところだ。

 だが今のマグダリーナには、そんな暇はなかったし、悲しいかな、王都に邸宅がないので遠慮してか、招待状も届かない。


 「リーナ! リーナ! タマいまレベル七なのー」

 「すごいわ。レベル十までもう少しね! ありがとう、トニー、レベッカ」


 ところがアンソニーとレベッカは、二人揃って難しい顔をしている。


 「どうしたの?」

 「オーズリー公爵とヴィヴィアン様を、三階まで案内したのです」


 珍しくアンソニーの眉間に皺ができる。公爵様、何かやらかしたんだろうか……。


 「…………セワスヤンのレベルが百を超えていたのです……」

 「は? え? あの可愛い眠り妖精、そんなに強かったの?!」


 公爵は先代から引き継いだと仰ってたが、セワスヤンはきっと公爵家で何代にも渡って引き継がれていたに違いない。マグダリーナの夢に介入するほどの力を持っていたのだから。ハラとヒラがライバル視していたわけだ……。


 「つまり公爵が本気だったら、私とリーナお姉様は傷物どころか、死体になっていたのですわ……」


 ぶるりと身を震わせるレベッカと手を取り合って、マグダリーナは女神に感謝の祈りを捧げた。






 せっかく家族四人でダンジョンに入るのだから、大体の目標を決めておこうと冊子を広げる。

 いつになく積極的なマグダリーナの様子に、アンソニー、ライアン、レベッカの三人は驚いた顔をして見た。


 「リーナお姉様、どうなさいましたの? 今まで戦闘行為は、あんなに避けていらっしゃったのに……」

 「……あんなことがあったんだもの。流石に私も身を守るだけじゃなく、抵抗して逃げ道を確保出来るくらいには、強くならないとと思ったの。それにパイパーさんにも偉そうに強くなるよう言っておいて、自分が弱いままなのは、格好良くないでしょう?」


 ライアンは、ふ、と微笑んだ。

 「リーナはいつでも強かったよ。心がね」


 アンソニーとレベッカも、頷く。


 「でもリーナお姉様の決心は素敵なのですわ! せっかくなのでガンガン強くなりましょう!! 熊師匠を倒したくらいで強くなったと過信してる場合じゃないのですわ……!」

 レベッカも流民達とのことを思い出して、唇を噛んだ。


 「ではまず、夏休みの残りの間に、十階踏破を目指しましょう。エステラに聞いたところによると十階までが中級者用とのことですので」

 アンソニーがそう提案する。


 「十階って、お父さま半日で踏破してなかったっけ?」

 思わずマグダリーナは言った。


 アンソニーは神妙な顔をした。

 「それはお父様のレベルやステータス値他諸々が高かったからです……」


 自分たちのレベルとステータス値くらいしか知らないマグダリーナは、ダーモットの強さが普通よりどのくらい強いのか、正直わかってない。怪我をせずに帰ってきてくれればそれでいいとしか思ってないので。


 「今お父さまは、何階まで行ってるの?」

 「一旦十九階のボス部屋までクリアして、今は十四階のボス部屋周回されています。そこのドロップ品や宝箱が一番実入りが良いようで……」


 「そうなんだ……二十階は熊師匠が居るんだっけ? お父様は単独だし、複数の師匠を相手にすることになったら、苦戦するかも知れないからその方が良いかもね。そもそもの目的が資金集めだし」


 ドロシー王女との婚約が正式に発表されてしまったので、配信の視聴者達からも『王女もらうんだったら、もっと気合い入れて稼げ!!』『子供達の結婚資金も忘れるな!!!』と激しく応援が入っているらしい。投げレピは減ったが。


 レベッカが首を横に振った。

 「十三階以上のボス部屋からは、低確率で魔獣の卵が出るそうなんですの。十四階のボス部屋には、キングスライムが居るのですわ」

 「……!!! まさか、スライムの卵狙いなの?!」

 「私とトニーは、そう確信していますわ」


 全く否定できない……!!!


 「スライムが欲しいなら、そこら辺にいるのをテイムすれば良いのに……」


 マグダリーナは呆れた。道路や住宅地以外をちょっと探せば、スライムはどこにでもいるのだ。


 「お父さまにはテイムの適性が無いようなのです……。でも、ダンジョン産の魔獣の卵でしたら、自動的に所有者の従魔になってくれるそうなのです」

 アンソニーがエステラから聞いた説明をしてくれる。


 タマもマグダリーナの肩でふるふるしながら言う。

 「スススのメンバー達にも断られてたよー。良いお友達のままでいましょうねーって」


 何その、恋の告白して玉砕した感じ。


 「お父さまに関しては、順調にお金を稼いでると思って放っておきましょう。私も何か武器を持っていった方が良いかしら? 剣は重たいし、短剣とか」


 ライアンが顔を顰めた。


 「短剣は敵と至近距離で戦闘することになるから、結構危ない。弓、使ってみる?」

 「ぴったりの武器がある」


 いきなり背後から声がかかったが、誰も驚かなかった。もう、慣れたものである。

 振り向くとやっぱり、やつがいた。

 武器の入った箱を持った、ルシンが。


 「これは先日女神の塔で宝箱から出てきたんだが、俺には不要なので進呈しよう」


 「ルシンお兄様いつの間に、ダンジョンに入ったんですの?」

 「夜に行ってる。俺の身体はエステラほど睡眠を必要としないから。野生のスライム達も夜、人気のない時間に入っているな」


 ルシンは箱をテーブルに置いて、蓋を開ける。中には持ち手から革を編んだ紐が伸びている……そう、鞭だ。


 「魔鞭だ」

 「まべん……」


 それを私に扱えと?


 「鞭は軽いから、マグダリーナが扱うのにちょうどいい。普通は軽い分、武器としての威力は期待出来ないものだが、これは使用者の意思で対象を捕縛したり切り裂いたり粉砕にも使える魔法武器だ」


 「ふんさい……」

 マグダリーナは、ルシンの言葉をゆっくり繰り返した。


 ルシンはそのままマグダリーナに魔鞭を差し出してくるので、マグダリーナはつい受け取ってしまったのだった。

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