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ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活  作者: 天三津空らげ
十三章 女神の塔

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260. めんどくさい訪問客

 ドワーフ達をマンドラゴンとエデンに任せて、一旦マグダリーナだけが帰って来た。


 ショウネシー邸の前に、アスティン家のコッコ車が見えた。ヴェリタスもシャロン伯母様の代理で行っていた王都でのお使いから帰ってきたのだろう。


(でもルタが一度もアスティン邸に帰らず、真っ直ぐうちに来た……の?)


 ゆっくりサロンのドアを開けると、見覚えのある桃色髪が目について、マグダリーナはそっとドアを閉じた。


(めんどくさいのキターーーーー!!!!)


 そうだ自室に避難しよう。そう思った瞬間、サロンの扉が開いた。

 執事のケーレブだ。


「お帰りなさいませ。マグダリーナ様。お待ちしておりました」

「ケーレブ、見逃して」


 小声でお願いするマグダリーナに、ケーレブは黙って首を横に振った。諦めてマグダリーナは、中に入る。


「挨拶が遅れまして、申し訳ございません。我が家へようこそ、エリック王太子殿下、アルバート王弟殿下、ドロシー王女殿下、ご訪問いただき光栄に思います」

「ご機嫌よう、マグダリーナ・ショウネシー子爵。私達の仲だ。堅苦しいことはやめよう、座って」


 エリック王太子に許可を得て、マグダリーナはしずしずと、ソファに腰掛ける。


「マグダリーナ嬢、まずは町長就任おめでとう。学業と兼任は大変だろうが、君なら大丈夫だろう。だがもし、何かあったときは遠慮なく相談してくれていい」


 優しげなロイヤルスマイルのエリック王太子に、マグダリーナも淑女の微笑みを返した。

「ご配慮、感謝いたします」


「まあまあ、二人とも。そんなお見合いみたいな堅苦しい空気まとわないで、楽にしなよ」

 アルバート殿下が、ふふふと微笑む。


「察しがついてるとは思うけど、今回私達が来たのは、ダンジョンの視察なんだ。私はダンジョンアタックの経験もあるから、適任だよね。でもここのダンジョンは、私の知ってるどのダンジョンとも違う。それにスキルの卵石、売買計画書と共にすぐに王家に献上してくれた判断は流石だったよ。あれは早急に売買規制をしないとならない」


「ドーラ伯母様の、助言のお陰です」

「ショウネシー領独自の冒険者ギルドがあったことも、良かった。でなければ、あの卵石の売買規制がそもそも不可能だからね」

「……そうだったんですか?」

 そういえば普通の冒険者ギルド本部は他国にあったわ。マグダリーナは、言われてようやく思い出した。


 ドロシー王女が微笑んだ。

「それもこれも、ショウネシーの方たちが、思慮深く、自分達だけの利益を追求しないお陰よ」

「そうなんでしょうか? 私達は、自分の手に届く範囲のことしか見ていないのですが」


 そもそも領独自の冒険者ギルドも、過去に冒険者ギルド支店設立の申請が通らなかったからみたいだし……理由はまあ、領地の運営資金や人員が足りないなどお察しだ。ショウネシー領は過疎化していたのだから。


「その範囲の中に、ちょっとは国のことも入れてくれてるでしょう?」

「……それは……そもそも国がどうにかなったら、ショウネシー領もどうなるかわからないじゃないですか?」

「そういうところよ」

 ドロシー王女は優しい目で、マグダリーナを見た。


「ところでリーナちゃん、良いお買い物はできた?」

「ええ?! ドロシー王女様、一体誰から……」


 そういえばみんな大人しい……そう思って、見渡すと、レベッカがそっと手を上げた。

「すみませんですわ。リーナお姉様……」


(レベッカを落としたの?! ドロシー王女様、なんて恐ろしいひと……!!)


「別に罰することはしませんわ。私も叔父様に強請って、シーラとキースを買っていただいたのですもの……ただ、新しい国民のことが知りたかっただけ」


 マグダリーナは、ほっとした。

「なんでも国の政権抗争に負けた側の、ドワーフ達を、家族ごと買取ました」

「え? ドワーフ?!」

「まさか、純血か?」

「まさか……純血のドワーフなんて、滅多に見ないよ。もしそうなら、とんでもないことだ」

 ドロシー王女と、エリック王太子、アルバート王弟殿下の驚きに、マグダリーナは何か不味ったかしらと、内心冷や汗をかく。


「リーナちゃん、何人くらい購入したの?」

「男女や家族合わせて、五百人程だったかと……」

「まあ! ドワーフをそんなに? 財政は大丈夫?」

「皆さん腕を切り落とされてしまっていたので、その、とても……お安かったのです……あ、もちろん全員エステラが健常な身体にしてくれたので、大丈夫ですよ」


 むしろ、お金で人を買ってしまった罪悪感が半端ない。金三十は大金だが、人数で割ると、安すぎる。ついでにエデンが金二十負担してくれた。しかも単価はエルだ。未だレピ高が続いているので、更にお安い。

 マグダリーナは、金十はメイティアまでの旅費だったと思い、ドワーフ達がリィンの町が気に入らずに嫌だと言うなら、自由にしてもらおうと思っていた。


 そう伝えると、アルバート王弟殿下は頭を抱えた。

「マグダリーナ嬢、君は国外の事情には精通していないようだから、説明しておこう。純血のドワーフは、デメル王国の一角で、細々と暮らしている。ドワーフ職人の作る神がかった品物は、各国の貴族に大人気で、あの国はその技術と職人が他国に取られることを極端に恐れて、ドワーフを里から出さないようにしていたんだ」

「ええ? あ、だから皆さん腕を切り落とされて……」


 アルバートは頷いた。

「人数的に、ドワーフの里にいたものほぼ全てだと思われる。つまり、あの国の新しい指導者についたものは、収入源であり貴重な種族を、短慮に根絶やし、もしくは少人数のみ残して希少性を上げようとする者だと言うことだ。あの国の情報は、山に囲まれた地理的にも入手しにくい。よく彼らを保護してくれた、マグダリーナ嬢」


「それは……おそらく……エデンの人徳かと……」


 エデンの人徳……この世にこんな言いにくい言葉が存在することを、マグダリーナは初めて知った。


「ンっはは! たまたまあそことは長い付き合いがあったからな」

 エデンが転移魔法でサロンに入ってきた。


「ドワーフ達は竜種も崇めるんだ。ドラゴンの火焔の種火を守って、彼らはずっと生活して来たからな。マンドラゴン達と早速仲良くなってたぞ。ついでに興味があると思って、こっちの図書館の利用方法も教えておいた」

「ありがとう、エデン」


「逞しいやつらだよ。早速男達の何人か、女神教に改宗して、着てるもん全部売って、ダンジョン入っていったからな」


 …………。


 マグダリーナは、思い切り目を見開いて、エデンを見た。


「着てるもん全部売ってって……まさか下着も……まさか!?」

「ンハハハハ!!」


「笑いごとじゃないわ! 全裸はダメよ! 公序良俗に反するわ! 町役所でお金を借りれる制度を作るから、止めてきてちょうだい! マンドラゴン達は止めなかったの?!」

「ギリ最後の一枚が残ってたからな」

 ――ぱんつ一丁……!! アウト!!


「マゴー、今すぐ止めてきてぇぇ」

 テーブルに拳を当てて、マグダリーナは悲壮感を漂わせて唸った。


「かしこまりました!!」

 秘書マゴー2号が、ピシッと敬礼して消えた。

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