253. ステータス
三階層ボス部屋をでて、ホールに出る。
そこは入り口のエントランスホールと同じくらい広く明るく、休憩用のテーブルや椅子まで置いてある。ダンジョン内というより、高級ホテルか宮殿にいるかのような、贅沢な内装だ。しかもここにもちゃんと、男女に分かれたお手洗いもある。
マグダリーナが前世のライトノベルや漫画知識で想像していたダンジョンの、はるか斜め上を行っている。
そして壁面に大きな映像画面があり、
そこに大きな字で、【「ステータス」と唱えると自分のレベルが確認できます】と表示されていた。
「ステータス」
早速マグダリーナは唱えてみる。
【名前】マグダリーナ・ショウネシー
【種族】人族(12)
【職業】リィンの町の町長
【レベル】23
【体力】213/230
【魔力】443/500
【攻撃力】3(+300)
【防御力】3(+300)
【敏捷性】30
【魔法】エステラの魔導具次第
【習得スキル】特別魔導車運転B 薄い本制作B 図解作成A 日◯簿記2級 事務処理S
【◼️◼️スキル】夢神託 二十一番目の血筋
【ギフト】神霊感応 妖精のいたずら
【従魔】タマ(ハイスライム)Lv3
【称号】熊殺し 女神の姿を見たもの
前世で苦労して取った資格がスキルとして表示されたのには驚いた。
それになんだか何スキルかわからないのがあるが、特に気にしないことにした。
きっと固有スキルとかそういうのだろう。二十一番目の血筋とは、二十一番目のハイエルフ、エヴァの子孫という事に違いない。マグダリーナが、夢で色んなメッセージを貰うのは、その血筋の影響なのかも知れない……
さりげなくギフトになってる妖精のいたずらには、なんて図々しいと思いつつ。
それ以前に問題は、攻撃と防御の素の値だ。敏捷性から予測するに、低すぎる。エステラの魔導具の補正が無ければ、マグダリーナは何かのはずみに、簡単に死んでいたかも知れない。
(女神様、エステラに会わせて下さって、本当に……本当に、ありがとうございます)
「リーナ! タマ、レベル3しかなかったー。もっと丈夫になりたいー」
休憩用の椅子に腰掛けたマグダリーナに、タマがぷるぷる甘える様に、スライムボディをくっつけてくる。
(レベルの高さと、丈夫さは比例するのかしら……?)
「エステラ、レベルが上がると、防御力とかも高くなるの?」
「ちょっとずつだけどね。でも魔獣の場合は、レベルが上がることで、進化条件に達することも多いし、進化すると各ステータス値も上がるはずだから。レベル上げは有効よ」
「なるほど」
エステラも隣に座って、呆然とステータスを確認しているメンバーに、座って休もーうと声をかける。
(タマちゃんはまだまだひ弱だから、はずみで儚く散ってしまわないように、レベル上げはした方が良さそうだけども)
マグダリーナは先程のボス戦で、危うかったタマの様子を思い出す。
「うん、タマちゃんは上の階層へはまだ危ないから行けないわね。まずは一階で上げれるだけレベル上げないと……」
「シンもその方が良いみたいです。レベル5でした。お姉さまが忙しい時は、僕がシンと一緒にタマちゃんも連れて、ここに来ますよ」
アンソニーが魔法収納からティーセットを取り出して、マグダリーナとエステラの前に淹れたての紅茶を置いた。シンも手伝って、皆んなに紅茶を配る。
マグダリーナの視界に、ダーモットがでれでれとシンにチョコレートを渡してる姿が目に入った。
「ありがとうトニー。多分任せっきりになると思う。でもタマちゃんの安全の為にも、最低でもレベル10にはしないといけないみたいだから、よろしくね」
「はい!」
エステラはスライムはレベル10から強くなると言っていたし、まず目標はそこだろう。
「じゃあねぇ、ヒラのお古でよければぁ、スライム用の装備あげるよぉ」
ヒラが魔法収納から、小さなフード付きマントを二着出した。パステルピンクとパステルイエローの色違いの可愛いマントだ。裾がスカラップで、刺繍も入っているし、フード部分も猫耳型でおリボンも付いている。可愛い。
「タラがねぇ、可愛いヒラの為に、過保護に作ってくれたから、防御力ばっちしだしぃ、他の冒険者と遭遇した時に、魔物と間違えて攻撃されないよぉ」
「そんな大切なもの、いいの?」
どのマントも、大事に手入れされている。ヒラの宝物だったに違いない。
「いいよぉ。ヒラはもう、強く丈夫になったのでぇ!」
マグダリーナとアンソニーは、お礼を言って、ヒラにぷるんと頬をくっつけた。
「お姉さまは、レベルいくつでしたか?」
アンソニーは、マグダリーナの向かいに腰掛けて聞いた。
「うん、23だったわ。トニーは?」
「33です」
「凄いわ! 10も上じゃない」
「まだまだ頑張ってレベルを上げて、お姉さまをお守りします!」
「嬉しいけど、無理はしないでね。トニーが元気でいてくれることが、私には一番なんだから」
マグダリーナの言葉に、アンソニーは嬉しそうに微笑んだ。
因みにヴェリタスのレベルは僅差で34、ライアンは29でレベッカが27……そしてナードとヴヴは1だった。
ヴヴはペット扱いだから仕方ないとして、ナードはどうするべきか……
「防御魔法は可能なのだから、一階層をナードに防御してもらいながら、タマちゃんとシンで魔物を倒していくのはどうでしょう?」
アンソニーの提案に、レベッカは頷いた。
「だったら私も夏休みの間は、トニーと一緒にこの町で過ごすわ。どうせリーナお姉様はそうなるでしょうし」
どうせ私はそうなります。
マグダリーナはもう諦めた。夏休みの間に、マグダリーナが学園に行って不在でも何とかなる体制を作らないと行けない。
そして今回戦闘に参加していなかった、ダーモットやアーベル、エデンも自己鑑定のスキルが得られていて、これは創世の女神を信じる者、女神教に属するものが、このホールまで辿りつくと自動で貰える恩恵のようだった。
「ヒラとハラはレベルいくつなにょ?」
シンに聞かれて、ハラは、むむっと可愛らしく、お口をきゅっと尖らせた。
「まだ204なの。ニレルより歳上なのに……なの……」
「しょうがないよ。戦闘は殆どお師匠がしてたでしょう?」
エステラが慰めた。
アーベルが紅茶を吹き出した。
残念ながら無かったことにしてくれるマゴーはいなかった。彼は目を見開いて、ハラを見ている。
「んっははー、アーベルさてはハラよりレベルが低かったな。くはははは」
アーベルは自分で口元を拭いながら、魔法で周囲を片付け、エデンを睨んだ。
「そういうエデンは、いくつだったんだ?」
「くっは、教えるわけないだろう、若造め」
「私の予想だと、アーベルとどっこいどっこいね。エデンは進んで戦闘行為はしないタイプだし、もっと下かも知れない」
エステラの挑発に、エデンは簡単に乗っかった。
「失礼な。これでもウシュ滅亡後の長い戦乱の時代もこえてきたんだ。300はあるぞ!」
「始まりのハイエルフ、レベル300……」
エステラが、皆んなのレベルを手帳に書き込んでいく。
「ハイドラゴンのゼラのレベルも300だから、丁度レベルの上限が300になるのかしら」
エステラの呟きに、視線が集まる。
「なあ、やっぱり、エステラのレベルも聞いて良いか?」
ヴェリタスにエステラは頷いた。
「375。女神様の落雷を受け止めた事で、私は300の、ニレルはレベル上限自体を撤廃されて、莫大な経験値を貰ったみたいなの。あの時現場にいた従魔達もね。ヒラも一気にレベル320になっちゃったから、ハラは置いていかれた気がして寂しいのよね」
エステラは、ハラの頭を撫でた。
「なの! ハラもレベル上げするなの」
ヴェリタスは小さく唸った。
「待った、……じゃあレベル34て、めちゃくちゃ低くねぇ?!」
「落ち着いてルタ、多分一般的に普通に強い方よ。熊師匠と渡り合えるんだから。100越えるのは魔獣かハイエルフくらいじゃないかしら? 私は女神様の配慮でレベルが上がっただけ。じゃないと、ニレルのレベル上げに付き合えないから……」
ヴェリタスはニレルを見た。彼は背中を向けていて、その表情は見えない。
「ニレルのレベルは、エステラの倍あるんだろう? まだレベル上げる必要あんの?」
「レベル999で最上階のボス討伐の宝箱……そこからじゃないと、アレが手に入らないのよ」
アレが何か察して、ヴェリタスは微妙な顔をした。
「つまり、エステラもレベル999を目指すのか?」
「ううん。流石にニレル以外はレベル500がギリギリ上限みたい。だから、私が目指すのはそこまでかなぁ。でもニレルは多分、私が一緒にいないと、わざわざレベル999になるまでダンジョンを周回しないでしょ?」
「ああ、うん、なるほど。大変だな、エステラも」
マグダリーナも横で聞いていて、唖然とした。レベル999なんて途方もない……確かにダンジョンじゃないと、レベル上げは難しいかも知れない。
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