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214. モモしゃべる!

 ショウネシーの朝は早い。朝練があるからだ。


 マグダリーナは朝練前にダーモットを捕まえて、夢でクレメンティーンと話した内容を……そのまま伝えた。


「……そうか。とりあえずマゴー達に伝えて、領内の警備を強化してもらうよ。グレイにも、いつもより気を引き締めて護衛にあたるよう、頼もうか」


 マグダリーナは頷いた。


 朝練中のシャロンの散歩には、エステラの他にイラナも付き添うようになった。

 何かあった時に、直ぐに対応出来るようにだ。


 通常の人の女性だと、もう臨月だ。


 だがハイエルフの子は、必ずしも人のように十月十日で産まれる訳では無い。

 デボラの話しでは、自分の場合は産まれるまで五年かかったらしいと言っていた。因みにヨナスは卵で産まれたらしい……ハイエルフの繁殖には謎が多すぎる。


 とにかく精素を十分に取り込んで、赤ちゃんの身体が安定した時が出産時期になる。

 真珠のポーションの効果もあって、初めの予想より早く、次の新年前後が出産予定日になりそうだった。


 そしてもっと不思議なことに、妊娠してからのシャロンは、どんどん美しくなった。まるでハイエルフのように。

 今までハイエルフの子を宿した人族が居なかったので、これに関してはハイエルフ達にも謎である。体内の精素量が影響しているのかもというのが、エステラの仮説だった。


 この頃にはもう、ショウネシー邸の近くには立派な朝練場が設置され、天候が悪い時用の訓練館も建てられた。どちらにも、休憩所がある。


 シャロンは散歩の後には、休憩所でサトウマンドラゴラのお茶を飲みながら、朝練の様子を見学していた。


 マグダリーナはちょっと寝不足感を感じたので、早めに切り上げて休憩所に合流した。


「おはようございます、シャロン伯母様、エステラ、イラナ」

「おはよう、リーナ」

「おはよう! 何か頼む?」

「リーナ、こちらの席にどうぞ」

 イラナが一緒のテーブルに付きやすいよう、場所を空けてくれる。


 朝練場の休憩所にもちゃんと白マゴーがいて、ちょっとしたお茶やお菓子などを頼めるようになっている。でもまだ朝食前の早朝なので、リモネ紅茶を頼んだ。


 エステラは従魔達にフルーツソースのかかった、ウモウのソフトクリームを頼んでいたようで、先に白マゴーはそちらを運んで来た。皆んなスプーンを上手く使って食べている。


 モモのお口の端に、溶けたクリームが付いているのを見て、エステラは魔法で綺麗にしてあげた。


 するとモモが、モゴモゴと鳴きだした。


ピュイ ピュ……ナ ピュ……


「ん? モモちゃんどうしたの?」

 エステラがそっとモモを撫でる。

『ピュッ……ラ……チュッ……リャ』


 ヒラとハラの視線も、モモに集まった。


『チャラ……ピュラ……ピャラ……』

 モモは一生懸命、そう言った。


「…………しゃべった」

 エステラは目も口も丸くして、モモを見た。


 モモは頑張って、繰り返す。

『チャラ……ピラ……ピャラ……タラ! ヒラ! ハラ!』


 ヒラ、ハラ、ゼラから、宝石の涙が流れた。


「しゃべった……!! モモちゃんがしゃべった!!!! お赤飯炊かなきゃ! 餅米はあるっ!」


(あるの……?!)


 マグダリーナは知らないが、すで餅米だけでなく、清酒の製造もコッソリされていた。


「小豆よ! バンクロフト領に買いに行かなきゃ!!!!」


『ピュキ!』

 モモはエステラにくっついて、もう一度言った。

『ぴゅき! タラ すき!』


「ち……ちらし寿司も作るーうぅぅ!!!」

 ヒラとハラも、見事な横回転ジャンプをし、イケスラパウダーを撒きながら、喜びを表現した。


「ちょっと私、バンクロフト領まで買い物行ってくるから」

 エステラはそう言って転移魔法で消えた。


「お赤飯にちらし寿司……聞いたことのない料理だわ。リーナはどんなものかわかって?」

 シャロンがマグダリーナに聞いた。


「お赤飯は小豆っていう赤い豆と、普段のお米より、もちもちした品種のお米を一緒に炊いた、縁起の良い食べ物です。ちらし寿司は、酢を使った調味料で味付けした米に根菜等の具材を混ぜて、上に卵焼きやエビなどの海の幸を乗せて飾られた豪華な料理で、どちらもお祝い事に使われることが多いのです」


 イラナの瞳が輝いた。

「とても美味しそうですね! 御相伴にあずかれるといいのですが……」

 マグダリーナはちらっと白マゴーがうまみ屋に連絡をとっているのを視界にいれる。

「きっと大量に作るんじゃないかしら」


 マグダリーナがそう予想してまもなく、エステラが慌てて戻ってきた。



「危機! バンクロフト領の危機よ!」


 エステラはそう言って、とりあえず小豆の袋を取り出した。

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