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ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活  作者: 天三津空らげ
十一章 笛吹き

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212. 聖スライム?!

「え!? リーナお姉様とトニーは、額に女神様の精石を付けていらっしゃるの? ヴェリタスも? 今まで全然気付かなかったんですわ……」

 レベッカはマグダリーナの額を見て呆然とした。


「人に付いてるのは、知らない人には感知されないみたいなの」

「私は今知ったから、やっと見えるんですのね」


 レベッカは納得すると、精石を付けた場合の変化について説明を受けて、考え込んだ。


「私は付けるのは勿論構いませんし、どちらかと言うと付けたいんですの」


 そうだろうなと、マグダリーナとエステラは頷いた。


「……ただ、ライアンお兄様の心には、やっぱりまだ自身の出自に関して深く傷がありますわ……きっと、付けようとして付かなかったらとか考えて、遠慮されそうで心配なんですの」


 マグダリーナはレベッカに肩寄せた。

「大丈夫よ。お父さまとハンフリーさんはくっ付かなかったんだから」

「そうなんですの?」


 マグダリーナは頷いた。

「ハンフリーさんはコッコ達が首飾りに加工したのを身につけてるわ。お父さまは……」


 どうしたっけ?


「ヒラがぁ、使っちゃったのぉ。だからタラ、ダモの分もう一つちょうだぁい。後でぇ、ヒラのお石と一緒に首飾りにして渡すぅ」

「あ、じゃあついでに真珠も付けちゃう? 男性用なら黒真珠がいいかなぁ」

「待って、うちのお父さまに、そんなお洒落なのは似合わないと思うの! エデンじゃないんだから」

「そうかしら? そりゃエデンには似合うだろうけど、だからってダーモットさんに似合わないわけじゃないと思うの……あ、そうね、ダーモットさんなら黒真珠じゃなくてグレーの色の方が似合うわ、きっと」

 エステラはハラに女神の精石を渡す。


「そして、これはシンとタマちゃんの分ね」

 エステラがアンソニーに二粒渡す。


 アンソニーは少し考えて、シンの分は魔法収納にしまった。

「僕はスライムの進化過程も知りたいので、まずヒラのように自力でディンギルまで進化させてから、シンにこれを渡すことにします。タマちゃんはどうしますか? お姉さま」

「タマちゃんに渡してちょうだい。本人の意思に任せるわ」


 タマはアンソニーから精石を受け取ると、早速額に付けた。


「み……漲るぅぅ〜……!!」


 タマのスライムボディが、進化の輝き……とは明らかに違う、純白の光に包まれる。


「んん?!」


 呼応するように、マグダリーナの身体も淡く輝いた。


「エステラ!!」

 いかにも『入浴中でしたが慌てて服着て出てきました』という姿のニレルが、転移魔法で現れた。濡れた髪の数筋に、金と星の魔法工房にいるスラゴーがくっ付いて来ている。


「何があったんだい? 女神の神力を感じたけど」

 金色の魔力に包まれて、雫を滴らせた湿った美青年を、少女達は穴が空きそうな視線で見つめた。


「なにこれ、どういう状況?」

 丁度そこに、海から帰ってきたヴェリタスとライアンがやって来る。


「タマとリーナが光ってる……」

 ぶっぶっとライアンの頭の上で海藻を齧っていたカーバンクルも頷いた。


 タマは輝きが収まると、額の精石をキラリとさせてニレルを見て、堂々と宣言した。


「ニレルはこのままだと百年後には確実に、エステラに振られるー!!!」


 …………辺りに沈黙が漂う。


「そりゃ、その頃にはニレルはもう神になっていて、ここには居ない予定だし?」

 ゼラのお手入れを終えて、そのつるぷにっぷりを堪能しながらエステラは頷いた。


 ニレルは雷に撃たれたような顔で、エステラを見た。


「エステラは、たった百年で僕を忘れるつもりなのか……」


「つもりは無くても、先のことはわからないもの。それが嫌なら、百年後もずっとずっとニレルのまま側に居ないと無理よ。勿論神にならない選択肢は無しで」


 ニレルは立ち尽くした。


 あ、これ今、実質振られたんじゃね?

 誰もがそう思った瞬間だった。


「そう……そうか……エステラ、君達が本当に望むのはそういうことだったんだね……本当に……女神はどれだけ僕を翻弄すれば気が済むんだ……気付けなかった僕が莫迦だったけど。三発殴られるわけだ」


 ニレルは以前、ディオンヌに殴られたことを思い出して、己の頬に触れた。その瞳には、鋭く熱のある光が宿っている。

 マグダリーナ達は以前、ニレルがディオンヌに殴られて吹っ飛んだ事を思い出し、身震いした。その瞳には、恐怖の色が宿っている。


 この緊迫した空気を、当事者のエステラだけが感じていないようだ。


「濡れたままだと、風邪ひいちゃうわ。ハイエルフだからって油断しちゃダメよ」

 エステラは魔法で、ニレルの濡れた髪や服を乾かす。


 翳されたエステラの小さな手を、ニレルは指を絡ませて握る。


「エステラ、僕が神になった時、最初に起こす奇跡は君の側にいる事だ。僕以外に目が行かないように、してみせるよ」


 エステラは一瞬目を見開いて、それから泣きそうになってから、笑顔を作った。


「あのね、私の理想のひとは、お師匠を超えられるひとなの。頑張ってね」

「全く手厳しいよ……だけどやり甲斐のある目標だ」


 エステラはそのままニレルに抱きついた。うっとりと目を瞑る。

「ニレルがこんなに魔力を漏らしてるなんて珍しい……これが、精霊王の魔力……」


 その言葉に、エステラの従魔達も一斉にニレルに飛びついた。

「あ。俺もいいですか?」

 ライアンもニレルの腕を抱えた。

「タマもー! ニレル、タマを受け止めてぇー」

 タマが、ライアンの抱えているニレルの腕にとびかかり、その手のひらに受け止めて貰う。

 何かを察したアンソニーが、さっとライアンと反対側の腕をシンと一緒に陣取った。


「ナニコレ?」

 呆然とするヴェリタスに、ライアンがニレルの腕にしがみついたまま説明した。


「ニレルさんの魔力を浴びると、自分の魔力も強くなるんだよ」

「え!? もう俺の入る隙間ないじゃん!!」


 エステラがそっとニレルから離れて、場所を開けた。

「私はもう、十分堪能したから」

「いや、流石にそこには行きたくない。気まずさが半端ないから」


 もちろん乙女として、マグダリーナとレベッカも遠慮する。しかし勿体ないので、マグダリーナはいつも乗せて貰うコッコ(オス)をニレルの正面に置いた。




◇◇◇




「おお! 鑑定の結果、タマが《聖スライム》ってなってる。聖属性魔法特化型スライムなのか……」

 ヴェリタスが面白そうにタマを見た。


「それでこの『特殊スキル:恋愛神託』ってなんだ? 俺の鑑定じゃ詳細までわかんねぇみたいだけど」

 ヴェリタスはマグダリーナを見た。

「えっと……?」

 マグダリーナはエステラとニレルを見た。


「神託は星読みの高等技術だよ。この場合は言葉通り、恋愛に特化した星読みが出来るってことじゃないかな。随分と変わったスライムだね」


 ニレルの言葉に、マグダリーナはそっと目を閉じた。

「そう……タマちゃんの興味分野が更に伸びたのね……」


 マグダリーナ的には、もっとこう……防御とか防御とか強くなって欲しかった。

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