21. 父親?
「冒険者ギルドねぇ。それ俺に関係ある? 神官なんだけど俺」
気を取り直したエデンは、エステラと役所に来た。
ついでに領内で運営する冒険者ギルドで働かないか聞いてみたが、いまひとつ乗り気ではないようだ。
彼はマゴーをすっかり気に入って、抱き上げようとしたので、慌ててエステラが止める。
「他の領民が真似したら、業務に支障をきたすので、やめて」
「くはっ、この子達がその気になったら、造物主のキミしか触ることなんてできないだろう? ああ、そういえばまだキミの名を聞いてなかった」
「エステラよ?」
「星か! いかにも月の娘らしくて、益々イイ!」
「私、母親はちゃんといたわよ。お師匠はお師匠」
「キミはそうでも、ディオンヌはキミを娘のように思ってたはずだ」
娘というより、孫じゃないかなーとエステラは思ったが、口には出さなかった。
「さて俺はこれからここの領民になるんだ。マゴーくん、手続きよろしく頼むよ」
エデンは魔導具に手を翳し、生年月日を告げる。
「名はエデン、娘が1人。娘の名はエステラだ」
「はあ?!」
エステラが素っ頓狂な声を上げた時、マゴーがエステラとエデンに鑑定魔法をかける。
「親子関係を認めました。エステラ様の領民カードも更新しますので、お貸し下さい」
「ええ????! なんで???」
驚くエステラにマゴーは
「鑑定の結果、エステラ様がディオンヌ様より受け継いだ精石に、エデン様の魔力が混ざっているのを確認しました。そのため肉体的にはスーリヤ様と未登録の男性の子ですが、魔力系譜としてはディオンヌ様とエデン様の子と認められます。なお精石の詳細鑑定は元の持ち主であったディオンヌ様の死後3年経つと不可能となります」
「はぁぁ?! なんでお師匠の精石にあなたの魔力が混ざってるの?」
エステラは珍しく目を吊り上げて、エデンを問い詰めた。
精石はハイエルフが生まれた時から額に持っている強力な魔力器官で、とても私的なものでもある。例えば家族や伴侶等ごく親しい相手にしか触らせないような。
エステラはまだ母の胎内にいる時にから、ディオンヌの精石の魔力を与えられ続け、ディオンヌが亡くなる直前、その精石を額に受け継いでいた。
「くはは、それはもちろんこうやって」
エデンはエステラを抱き上げると、その額に自らの額をこつんとつける。お互いの精石が触れ合った。
「会う度に俺の愛を注いでたからだよ」
「これお師匠の合意はなかったよね?」
「何故か毎回攻撃魔法を放たれたね」
んははははーと笑うエデン。
エステラはカウンターに突っ伏し自らの領民カードをマゴーに渡した。ハラとヒラがそっとエステラの頭を撫でる。
「エデン様の住所はエステラ様と同じでよろしいでしょうか?」
「ダメダメ、ニレルが怒る。とりあえず今は住所未登録で」
慌てるエステラに、エデンは口を尖らせる。
「ひどくない? 俺今日からどこで寝るの?」
「エデン様は昨夜道路で寝ているのを、記録されています」
役所のマゴーは、魔法の映像表示装置を出し、警備担当のマゴーが昨夜記録していた映像を流す。
エステラは冷たい視線でエデンを見た。
治療院には住居スペースもある。イラナはそこで生活する事にし、開院の準備が整ったらアッシが領民に知らせるよう手筈を整えた。
回復薬はマゴーも作ってくれてるし、今年の冬はなんとか乗り切れそうだと、マグダリーナとハンフリーは一息ついた。
意外だったのは、イラナが治療院や住居の設備に大いに感動していた事だ。
ハイエルフには普通かと思っていたけど、そうではなかったらしい。
というか、そもそもこんな魔導具を作るという発想がなかったそうだ。マグダリーナの腕輪も確認して、素晴らしいを連呼していた。
因みにイラナの見立てでも、ニレルと同じで魔導具で魔力を使うのが最適とのことだった。まだ使いこなせてない機能や魔法もあるので、練習していかないとね。
領主館の執務室に入ると、ハンフリーの他にニレルが酸っぱいものでも食べたような顔をして、アッシから送られてきた書類を見ていた。
そんな顔をしていても、彼は顔が良い。
しかもエステラから通信が入っているようす。
映像も受信する、アッシの上に展開された魔法画面には、役所のカウンターにエステラと、とてもとてもハンサムな黒髪の大人の男性が一緒にいるところが映っている。
『という訳で、彼の住所どうしたらいい?』
『んはははーっ、どうしたもこうしたも、親子は一緒に住むのが普通だよな! 俺は保護者だもーん』
「エステラの保護者は僕だ」
『くっは! 悔しかったら婚姻届出して見ろ! 君も俺の息子になる。んはははっ』
『煽らないでよ、ニレルと仲良くしたいんでしょ』
『えー、なんでそう思うー?』
『ニレルはお師匠の家族だもん』
『……』
図星を指されたのか、男が黙った隙に、マグダリーナはすすすとハンフリーに近づいた。
「何があったの?」
「血は繋がってないが、あの男性が魔法使いの事情的にエステラ嬢の父親になると判明したらしい。詳しく聞こうと思わないでくれ。私もわからない」
とりあえずエデンはニレルとエステラの家に一緒に住むことに落ち着いたようだ。
ニレルが大きなため息をついた。
ハンフリーはアッシから渡された書類を確認する。
「ふむ、今日増えた領民は2人。2人とも……ハイ? ハイエルフ? エルフじゃないのか? なんだこの年齢……4千……??」
ハンフリーはハイエルフのことを知らないらしい。
そういえばニレルがハイエルフだということは、マグダリーナもアンソニーも、ダーモットには話してなかった。
「間違いじゃないのか?」
エデンの年齢を確認して、ハンフリーは眉間に皺を寄せる。
「間違いじゃないよ。現存してるハイエルフの中で、エデンは最長老だ。あんななのに」
ハンフリーは真顔でニレルを見た。
「勉強不足ですまない。ハイエルフとは何なのか教えてほしい。君もそうなんだろう? ニレル」
「うん、僕はわざわざ隠すことでもないと思うからね、聞かれたら答えるよ。でも面倒だから、全員集まってからにしないかい?」
ショウネシー子爵家のサロンに、一家とその従者達、そしてエステラとニレル、今日領民になったイラナとエデンが集まった。
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