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ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活  作者: 天三津空らげ
十章 マグダリーナとエリック
191/285

191. 王子の婚約者問題

「アレ、の、説得は上手くいっていらっしゃいますか?」


 エリック王子のアルカイックスマイルが固まった。アレはハラが言っていた、寄生スライムのことだろう。

 これは、説得が上手くいっていないに違いない。


「それが、今何か?」

「……これは杞憂なら良いのですが、王子があまり異性に興味が無いのは、アレの影響もあるのでは、と思いまして……」


 エリック王子は少し考えこんだ。

「そう思う根拠を、答えてもらえるか?」


 ライアンは頷いた。

「アレは繁殖行為はしないので、性別はありません。本人達に聞いたので確かです」

「……それでどうやって、あんなに増えているんだ?」


 スライムは森や畑、川の近くで大抵見つける事ができるほど沢山いる。弱くてすぐ死ぬけど。

 すぐ死んでしまうからこそ、人に知られない謎も多くあった。


「魔素のある所でスライムベビーが自然発生する仕組みだそうです」

「自然発生……」

「小精霊が集まって物質化したような存在です。なので番いを求める習性もありません」

「…………」


 エリック王子はしばらく黙って、何かを思案しているようだった。


「正直私自身は、将来王として、訳の分からない色恋に振り回されて、間違った判断をするようにはなりたくないと思っている。だからこの状況に不満はないが、アレを身体の中に飼ったままで、今後影響はないのかは不安ではあるんだ……そもそも、どうやって説得が可能なのか分からないし……」


 マグダリーナはひとまず提案した。

「一度専門家にしっかり相談して、診てもらった方が良いのではないですか?」


「そんな専門家がどこにいるんだ?!」

 珍しくエリック王子が、途方に暮れた顔をした。


「もちろんショウネシーの魔法使いの側にいます。二匹も。ハラもあの時は時間もかけれないと思って、知っていること全ては言ってないかも知れませんし……」


 ヴェリタスも頷いた。

「そうだなぁ。あいつらが重要だと思ってる基準と、俺たちが思うとことズレてる可能性もあるし……」


 それは、大いにある。かもしれない。


「あの……私もお尋ねしてよろしいかしら?

 レベッカが、おずおずと声を上げた。


「エリック王子様のご成人祝いの舞踏会では、ご婚約者の方を発表なさるのですか?」

「されない。まだ決まっていないからね」

 エリック王子に即答された。


「父上が仲々決めないので……」

 これには、エリック王子本人のみならず、ドロシー王女やアグネス王女も溜息を吐きながら頷いた。


 ヴェリタスは、以前にシャロンに聞いた事を思い出す。

「セドリック王の時は、公爵家と侯爵家の令嬢から候補を選び、学園在中に候補者の様子を見て、最終的にセドリック王がブロッサム妃をお選びになったと聞いています。候補の令嬢もいらっしゃらないのですか?」


 セドリック王は軽く咳払いをした。

「マグダリーナは候補に挙げておる」


「エリック王子様は、リーナお姉様をどう思っていらっしゃいますの?」

 レベッカがズバリと聞いた。


 エリック王子は真摯な眼差しで、マグダリーナを見た。

「マグダリーナ嬢には何度も窮地を救って貰っている。賢く勇敢で、素晴らしい女性だと思っている。しかし、王妃となると、貴女は勿体ないと私は思う……私にとってマグダリーナ嬢は、臣下……出来ることなら腹心であってくれた方が、お互いを最も活かせる形になるのではないかと思う」


 それは。なんとなく、マグダリーナも感じていたことだった。


「父上と母上のように、仲睦まじければ何も問題はあるまい。だが私は自分がそのように上手く振舞えるとは思っていない。となれば、家門の力の大きい妃は、いずれ国に混乱を齎す元になりかねない。マグダリーナ嬢が妃になると、私は生涯胃痛と戦うこととなるだろう。どうか、そのまま父上に屈せず、私の味方でいてほしい」


 なんとエリック王子は、マグダリーナに頭を下げて頼み込んだ。


「あの……もちろん私は妃の位はお断りしますし、将来エリック王子をお助けしようとも少しは思ってます……あ、ショウネシーのことが第一ですから。あの、でも、そんなに?」

 そんなに自分と結婚したくないのか。助かるが、乙女心としては複雑でもある。


「今回の領地戦で、しみじみ実感したよ。君は……君達は、私が御しきれるものではない。想定外が過ぎる……」


 セドリック王も溜息をついた。

「そこまで己を理解して、そう思うのなら致し方ない。しかしアレが子作りの支障になるかだけは、早急に専門家に診てもらうと良い」


 とうとう王様が折れてくれて、マグダリーナ達は目を見合わせ、内心バンザイをしていた。


「それでは、エリック王子の予定の空いている日程を幾つか教えていただければ、友人の日程と調整します」

 マグダリーナが早速そう言うと、エリック王子はよろしく頼むと、微笑んだ。


 今はもう鑑定魔法で見ても、エリック王子には《女神の子》の表示が見えない。運命の分岐は、完全に未来の国王がエリック王子になる道筋に入ったのだ。

 もしかすると、エリック王子にとっては、いよいよこれからが王としての試練の道かも知れない……

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