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ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活  作者: 天三津空らげ
十章 マグダリーナとエリック
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190. 理不尽不可避

「ウィーデンさんの腕輪は、真珠貝なんですよね? そちらも素敵だわ」


 ドロシー王女の言葉に、ミネットは頷いた。

「星の魔女様には、大変良くしていただきました。私の幾つもあった悩みを、すべて解決して下さいました。あの日のことは、今でも夢のようです……特にずっと悩んでいた、背中の火傷跡を無くして下さったことには、感謝してもしきれません」


 マグダリーナは一緒にお風呂に入った時の事を思い出した。


「全然気づかなかったわ」

「運良く髪で隠れる所でしたので……私が小さな時に、乳母の粗相でついてしまった跡でしたが、母は父に内緒にして、知られないようずっと気を張っていました……私もその事で母が内心怯えているのが、とても苦しくて……傷物と言われても堂々としているマグダリーナさんの姿は、いつも勇気をくれましたわ」


 ミネットは静かに微笑んだ。

 マグダリーナは気恥ずかしさに、顔が熱くなった。慌てて話題を変える。


「そ……そう言えば、父から眠り妖精の生息地について聞きました。テイマーのお方は、また私とレベッカに迷惑をかけて来ますでしょうか?」


 王と王妃は顔を見合わせた。


「困ったことに、可能性はある……」

「なんとかなりませんか? 例の方、王都の邸宅にいらっしゃるんですよね? このままだと私とレベッカ、卒業まで学園に行かずにショウネシー領に籠ることになります」


「む、学業はどうする?」

「領地経営については、ハンフリー男爵とジョゼフ男爵に付いて実践で学んで行こうかと。家政についてはシャロン伯母様とドーラ伯母様がいらっしゃるので、こちらも教師をお願いするのに問題ないでしょう。必要なテストだけ受けにいく感じで、先生方には交渉しようかと」


 ドロシー王女が席を立った。

「そんな……学園で気軽におしゃべりできなくなるのは嫌ですわ!」


 アグネスとミネットも、激しく頷く。


 王様はこれ見よがしに溜息をついた。


「なんとかしてやりたいのも山々だが、貴族間の問題は、まずその家門同士で対応することが原則だ。それにあれは、我と妃が関与すると、ますます臍を曲げるであろう……」


 レベッカがマグダリーナの耳元で、何かを囁いた。マグダリーナは頷く。


「とりあえず、ドーラ伯母様に爵位を頂けませんか? シャロン伯母様は出産ギリギリまで社交されるつもりかもしれませんし、もし私達のとばっちりで何かあったら大変です。ドーラ伯母様が社交の場でシャロン伯母様や私達と同席出来るようにして頂きたいのです。税金の少ない爵位でお願いします」

「よしわかった。ブレア・バークレーが返還した爵位をそのまま渡そう」


「節税にならないって怒られます……」


 セドリック王は肩を竦めた。

「リオローラ商団のように、ある所から税を取るのは、国の大事な仕事なのでな」


 それはそうだが、素直に納得したくない悔しさはある。


 王と王妃の人間関係のとばっちりを受けるのが、全く無関係なこちらなのに、なんでその対応策に、更に関係ないドーラ伯母様が税金取られないと行けないんだろうか……


「理不尽です。私達は関係のない理由で公爵に目をつけられて、自分達でどうにかしないといけないんです。しかも、リオローラはまだ立ち上げたばかりの小さな商団なんですよ。爵位もどうせ一代限りなんですから、準男爵にしてリオローラ商団の税金を五年免除して下さい」


 国内だけの商いの商会の売上税は領主に納めることになるが、国外とも商いをする商団の売上税の納税先は国と領主の二箇所だった。


「其方達やシャロンの側に居るのに、準男爵では爵位が合わん。免税を受け入れる故伯爵位を持ってゆけ」


「では免税の証明書は後日発行していただくとして、免税の約束の証明書を一筆下さい」


 マグダリーナはタブレットで書類を作成すると、王宮働きのマゴーを手招きして、二部印刷してもらう。


「では王様、ここに署名をお願いします」


 マグダリーナはにっこり笑って、セドリック王に万年筆を渡した。


「こういうことは、しっかりして居るな。やはりエリックの嫁にならんか」

「なりません。伯母様方に比べたら、まだまだ未熟です。それにエリック王子にも好みとか色々あるでしょうに……」


 エリック王子は苦笑いした。

「私はあまり色恋に興味がなくてね。政治の邪魔にならない女性なら、誰でもいいよ」


 エリック王子は確か十四歳、一カ月後には十五歳になって成人する。王宮でお祝いの舞踏会も開かれる。

 異性に対し、興味が高まっているお年頃のはず……なのだが、本当に興味が無さそうだった。ちょっと心配になるくらい。


 因みにこの国の成人年齢基準は、平民は労働力として認められる年齢、貴族は夜遅い夜会に参加して社交可能とされる年齢であり、両者とも婚姻が可能な年齢……というのを考慮されて十五歳となっているらしい。


「エリック王子に、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」


 王族に囲まれた中で、珍しくライアンが声をかける。


「なんだい?」

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