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154. 聖獣カーバンクル

「くっはは、ウシュ帝国時代に俺たちハイエルフが暮らしていたのは何処だと思う? このリーン王国があった場所だ」


 ああ、とレベッカは呟いた。

「エルフェーラ様がいらした、金の神殿が王都にありますものね」

「その通りだ。殆どのハイエルフはもう少し女神の森寄りに居を構えていたが、ウシュ帝国の王は金の神殿の近くに城を建てていた。いまの王宮の位置がそうだな」


 ショウネシー領に戻って、仮の貴族令嬢ドリーに戻ったドロシー王女は、頷いた。

「王宮は元々ウシュ帝国時代の遺跡に手を入れたと聞いてましたけど、まさかそんなすごい場所でしたの……」


 エデンは長い足を組み直した。

「そしてそこから一番近くの国が人族の国……その国で精霊と人との橋渡しの神祇を執り行っていた神祇官の一族がこんな青い髪と瞳で、精霊を見る能力を持っていた」


 エデンは隣に座るヴェリタスの髪を掬うと、サラサラと流して続ける。


「人族の王から原初魔法を授かり、よく金の神殿にも参拝していたな。そしてアルミラージ……はエルフェーラが作った《聖獣》カーバンクルが、ウシュ滅亡後に変化した魔獣。そのカーバンクルの世話役をしてたのも、その一族だ。となると、そこのドミニククンとヴェリタスは正統なその血筋の後継で間違いない」


「聖獣があんなグロい脱皮で生まれていいのか……」

 実際その場面を見たライアンが、ボソっと言う。


「そんな歴史ある家門が、あのどうしようもない人のせいで無くなってしまったのね」

 ため息をつくシャロンだが、その横でヴェリタスは呆然としていた。


 そしてヴェリタスはドミニクを見た。

「じゃああんた、小精霊が見えてたのにあんな……小精霊を無理矢理消費して、殺すような魔法使ってたのか?!」


 ヴェリタスに詰め寄られ、ドミニクは「如何にも」と肩をすくめただけだった。


 エルフェーラが造った聖獣と聞けば、レベッカも黙ってられない。潤んだ瞳でドミニクを見つめた。

「カーバンクルを従魔にしても、よろしくて?」

「いいさ、やってみるがいいぜ」


 ドミニクは肩に乗っている一羽を、レベッカに向けて軽く投げると、カーバンクルは短い手足も羽根もばたつかせながら、懸命にレベッカに向かって飛んでいく。


 レベッカは意識を集中して唱えた。


「テイム!」


くっまぁぁぁぁ!!!!


 飛んでいる途中のカーバンクルがテイムの魔法の輝きに包まれると、レベッカの膝の上にいた更正妖精熊のナードがカーバンクルを付き飛ばした。

 ナードにつき飛ばされてきたカーバンクルを、ライアンが咄嗟に受け止める。


 テイムの魔法の輝きも弾け飛ばされて、失敗に終わった。


「先従魔との相性が悪いようね」

 エステラは冷静にそう言ったが、ナードは涙を流しながら、くまっくまぁっとレベッカの胸に抱きついて、その頭を擦りつけている。


「相性以前に、ナードの独占欲が強すぎるんじゃないかしら? レベッカに恋人が出来たりしたらどうなるか心配だわ」


 マグダリーナがそういうと、ダーモットが首を横に振って、まだ早いまだ早いとぶつぶつ呟いている。


 レベッカはヨシヨシとナードをあやした。


「ナードの性格的な特徴なのか、種族的にそうなのか興味深いわね……」

 エステラは後で、他の更正妖精熊でも試してみたそうな顔をしている。


 ライアンは、なんとなく流れで自分の手元にいるカーバンクルに、お茶のお供に配られた熟した桃を一切れ、フォークでさしてその口元に持って行く。カーバンクルはぶっぶ鳴きながら、夢中になって食べ始めた。


 エデンがソファの背もたれにもたれ、仕切り直す。


「それで、俺が気を失ってる間、どうやってあの精霊どもを降伏させたんだ? ニレルもエステラも錬成空間の維持で手一杯だったろ?」


 ドロシーも気を失っていたし、ライアン、ましてやドミニクなどは現場にすらいなかったので何のことやらという顔をしている。


 残りの全員がエステラを見た。

 エデンに話していいかわからないからだ。


 エステラは当然だとばかりの顔をして言った。

「そんなのお師匠が助けてくれたのに、決まってるじゃない」


 エデンは目も口を開けて、エステラを見た。


「エデン、初めて会った時に云ったでしょう? ちゃんとお師匠の心は偶にエデンの側に来てくれる、ただし気付かれるようなヘマは絶対しないって。かわいい弟子の為に、私のかっこいいお師匠は頑張ってくれたの」

 ふふーんと自慢げにするエステラは、とても可愛らしかった。


 マグダリーナはレベッカと一緒に、ライアンとトニー、ドロシーに何があったのか簡単に説明する。何故かケントとドミニクも真剣に聞いていた。


「はっはーん、その上位精霊を操ってたってやつ、クソ親父に入れ知恵してた耳長と関係ありそうだな」

 ドミニクは何やら考えこんだ。


「そうだ」

 ふとエステラが、エデンの側に寄った。

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