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ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活  作者: 天三津空らげ
七章 腹黒妖精熊事件

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131. 塩釜焼き

 ドリーことドロシー王女は、ハイエルフ達が気になるようなので、マグダリーナもそっと水を向けてみた。


「そういえばエステラ達はさっき、シーラさんを見て何か言ってたけど、何かあったの?」


 エステラが答えた。

「今までなら、エルフの女性として寿命が来てそうなご年齢なのに、とても健康で長生きの相が見えたので、おめでたいなと」


「ほ……本当ですの?!」

 ドロシー王女は驚いてエステラを見た。

 エステラはにこやかに頷く。

 シーラとキースも信じられないと顔を見合わせた。


「実はシーラは昨年末から体調を崩して、ずっと寝たきりだったんですの……ところが、あの決闘後から体調が回復してきて、嬉しいけど不思議で少し不安でしたの」


「大丈夫よ。理由はこれから説明するけど、シーラさんの身体は健康を取り戻して、長命と云われるエルフの寿命の長さを得ているわ。ドリーさんもキースさんも、これからもシーラさんと一緒にいられるわ」

「よかっ……良かった……」


 手を合わせて喜ぶドロシーの頬を、涙が伝った。


 マグダリーナがそっとハンカチを渡すと、ドロシー王女はありがとうと受け取って、そっと涙を拭う。その姿さえ、彼女は優雅で美しかった。


(王妃様は色々とおっしゃってたけど、きっとドロシー王女の一番の心配事が、シーラさんのことだったんだわ)


 何が起こって寿命まで延びたか知らないが、とにかくドロシー王女の心労が軽くなるならそれでいい。マグダリーナはレベッカに視線で合図を送った。

 既にケーレブやフェリックス、アンソニーと、準備万端のレベッカが、お茶とお菓子を用意していた。


 レベッカは頷くと、すっとドロシー王女の前にお茶とお菓子を置いた。

「どうぞドリー様、今年ショウネシーで育てた果物と蜂蜜を使った、冷たい紅茶ですわ。それと果物とクリームのお菓子です。紅茶は私が、お菓子はアンソニーが作りましたの」


 その言葉で、完全に涙が止まったようで、ドロシーはレベッカとアンソニーを見て、目を瞬かせた。


「まあ、二人はお料理が出来ますの?」

「はい、まだまだ勉強中ですが、お茶や簡単なお菓子でしたら作れますわ。魔法の練習も兼ねてエステラお姉様に教わってますの」


 アンソニーも笑顔で頷いた。

「今はメイドの皆さんが赤ちゃんのお世話をしているので、お茶の時間限定でケーレブから給仕の仕方も習っています!」


 ドロシーは再度目を瞬かせた。


「まあ……伯爵家の跡取りでいらっしゃるのに、何故給仕まで……?」


 アンソニーは頬と耳を朱に染める。

「実は以前、ニレルが食事を作ってエステラに給仕してる所を見て、なんかかっこいいなと思って……」


 あの顔と姿だと何をやってもかっこよく見えるだろう……


 ニレルなら許すが、エデンとルシンの真似はしないよう気を引き締めないと! とマグダリーナは強く思った。


 そしてそっとドロシー王女に補足……というか、言い訳をする。

「弟はまだこのショウネシー領に居ることが多いので、身近な大人の中でも、師であるニレルをとても慕って憧れているのです」

「ええ、そのようですわね。それに憧れの人と同じ事をしてみたい気持ちは、わかりますわ。アンソニー、素敵な給仕姿でしたわ」


 ドロシー王女に褒められて、アンソニーはとても可愛くにこっと笑った。嬉しさが溢れていた。


「それで、シャロン。夜会での他国の要人達はどんな様子だった?」

 エデンが聞く。

 ダーモットでなくシャロンに聞くあたり、ちゃんとした情報が欲しいという事だ。


「予想通りエルロンドのことを聞きたそうでしたわ。それから塩の流通についても。塩の方は直接商団と取引したそうでしたけど、リオローラ商団は知る人ぞ知る、でしょう? きっと殆どの方が手ぶらで帰ることになりましてよ。ああ、塩釜焼きもとても好評で王様も満足していましたわ」


 エステラとニレルが頷いた。

「肉質によっては、塩を練り込んだパン生地で包んで焼いた方がいい場合もあるんだ。あの調理法に合う肉を厳選した甲斐があったよ」


 その肉のために、ニレルはアーベルとヨナス、そしてチャドを連れて、「辺境伯領」にわざわざ狩りに行っていた。

 ヨナスの訓練も兼ねてとのことだったが、ハイエルフブートキャンプを見て、チャドと相棒の更生妖精熊は、世界の果てでも見たような、形容し難い顔をしていたらしい。


「昨日はこっちでも、急遽公園で塩釜焼き肉の大量安売り販売をしたのよ。今年の夏は暑いから、体力つけないとね」

「あ、もしかして王都の館にも送ってくれた?」

 マグダリーナは昨晩出された、美味しい肉料理を思い出した。マグダリーナとアンソニー、レベッカとライアンの四人は、まだ成人前なので王宮の夜会には参加してない。王都のアスティン邸で過ごしていた。


 エステラはニヤリと笑う。


「ふふふ、フェリックスが作った分をね」

「え?! フェリックスも料理始めたの? すごく美味しかったわ」


「ありがとうございます。皆さんがいらっしゃらない時は、うっかりハンフリー様がお食事を忘れてこちらのお邸にいないこともありますので、料理を覚えておけば便利な時もあるかと思いまして」


 マグダリーナは真顔になった。


「すごい助かるわ」

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