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ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活  作者: 天三津空らげ
七章 腹黒妖精熊事件

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125. エルロンド領

 エルロンド領の運営方針がかたまって、エステラとルシンが主要都市を作り上げる頃には、ジョゼフ・ショウネシーは妻の顔をゆっくり見るまもなく、エルロンドの領主として連れ去られてしまった。


 一応他にも、国からの派遣で学者や護衛の騎士達も居たが、相手はエルフである。

 兄を心配したハンフリーがフェリックスを付けようかとしたが、これにはハラがぷるんと


「ケントはジョゼフも自分も守り切れる出来る子だよね? 絶対信頼出来る後任ができた時だけ、帰ってきていいよ。それからジョゼフの云うことちゃんと聞くこと」


と、笑顔で命令したので、ケントはショウネシーの生活を満喫するまでもなく、エルロンドに帰った。


 やむなく占領してしまった元エルロンド王国だが、抵抗していたのもはじめのうちだけで、エステラとルシンが、緑の美しい居住区や行政区、街並みに、白亜の神殿を瞬く間に作り上げて、更に高位精霊を召喚して領の守護者にしてしまったのを目の当たりにし、リーン王国民になる事を望む者は少なくなかった。


 中には邪な思いでリーン王国民になろうとする者も居たが、そういう者達はルシンが作った選定の間で、容赦なく間引かれた。


 つまりカエルになって、結界の外の森に放り出された。



 今や平民になったのに、貴族意識の抜けきらないエルフには、サトウマンドラゴラで作られた白マゴー達の厳しい教育的指導がとうとーうと入る。


 当面の彼らの業務は、フィスフィア王国の小麦その他穀物類、綿や麻等の輸入業務、そこからリーン王国各商会への販売に関わる労働だ。

 外交的にもそれなりの振る舞いが要求される場面もある。


 「男ならば紳士たれ」これがジョゼフがまず、エルロンド領に課した理念だった。


 そして次に掲げたのは「男の魅力は労働力」だった。


 なんせエルフは全員、元お貴族様でお顔が良いのに、お育ちが野蛮だからだ。


 エルフの他にも行くアテのないハーフの元奴隷や、同じように故郷に帰っても家族もいない拐われてきた人も、望めばエルフと同様に、選定の間で害意のない者は受け入れ、名のない者には名を与え領民とした。


 ショウネシーと同じ領民カードを使ったシステムも導入されていた。


 悲しい事に、現在エルフの女性はおらず、残っているのは完全に男の集団であった。


 時々やってくる、エステラとドーラだけが、今のところエルロンドで見かける女性である。


 ジョゼフはエステラに、エルロンドに来た際には「優しく思いやりのある、働き者の紳士が好み」と吹聴するよう頼んである。男しかいないエルフの、老いも若きも、まだ幼い少女のエステラの美貌に夢中だからだ。


 ドーラも、紳士的な男性が増えて女性にとっても安全な場所になれば、リオローラの支部に女性職員を置く事も考えなくはないと匂わせている。


 なんとかと芸術家は紙一重的に、時にエルフの中には飛び抜けた芸術性を発揮する者もいた。

 素晴らしいエステラの似姿絵を描いて売買をする者が出没したのだ。

 そこにリオローラ商団が目をつけ、カレンの例の小説の挿画をエルフの人気絵師に描かせて、試しにエルロンド領内で売ると、大人気となった。


 本は高額商品だが、マゴーの魔法製紙と魔法印刷技術で、頑張れば手に入れられる格安書籍が出来上がると、エルフ達は各々仕事に邁進し、賃金を貯めて「わたしの魔法使い」を購入した。


 美少女と美少女の友情以上恋愛未満の、純粋な愛と友情の物語は、美しいものに飢えていた彼らの心を満たし、彼らは「尊い……」を覚えた。


 そしてカレンは、自身の書いた物語が本になって、元他国で売りに出されたなど、給金に書籍の売上配当が上乗せされ、特別手当が出るまで、全く知る由も無かった。

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