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10話 気配①

 冬馬さんが我が家にやってきてから四日が経過した。

 冬馬さんと父さんはこの四日で屋敷を離れる事が多く、お昼の稽古の時間すらも取れていない。


 やっぱり以前庭で話していた妖魔の気配が関係するのだろうか? そう思って家の影から二人の様子を伺っていると、二日目にして門を潜って車へ乗り込む姿を発見した。

 その表情には緊張感が見て取れ、ただならぬ事態ではないというのが嫌でも伝わってきた。

 もしかすると話していた妖魔の顕現が近いのかもしれない。


 ……だけどまぁ、冬馬さんと父さんが居るなら大丈夫だとは思う。

 二人は日本国内で見ても突出した実力を持つ陰陽師なのだ。その二人が対応するなら問題はない筈。


 だから俺は、俺のやるべき事をやる。

 妖魔の件は二人が解決してくれる、そう信じて。


「もう、動けない……」

「まったく……情けないのぅ……」


 と、そんな俺は今、庭で大の字に伸びていた。横には呆れた様子で俺の頬を肉球で突く銀子の姿がある。


 『譲雷』の特訓、これが思っていたよりも遥かにキツい。

 インフルエンザの関節痛と倦怠感を倍にしたような感覚が全身を蝕むのだ。


 出力増加の特訓による急激な回路の拡張による痛み。そして膨大な呪力を使い続ける事への疲労感。

 この二つが合わさった事でもたらさせる症状は、前世でも覚えがないくらい耐え難いモノだった。


 かれこれ一時間はこの状態の中で特訓を続けている。

 この三日間で途中に何度もリタイアを考えたが、脳裏をよぎる雫の姿を糧に、俺は死に物狂いで特訓に励む事が出来ていた。

 だけどそれももう限界。いよいよ身体が思うように動かなくなってきた。


 時刻は昼過ぎ。明日の朝までろくに動けそうにない。

 まぁ、リアルの身体が動かなくても夢の世界で銀子と訓練するから関係ないんだけど……。


「まぁ、今日はこれまでとするかのう」

「……うん」

「どうじゃ、感覚は掴めたか」

「そうだな……なんとかって感じだけど」


 成果はあった。

 木刀に紫電を纏わせる事も短時間だけどできるようになったし、ほんの一瞬なら宙に帯電することも可能になった。

 最初は静電気のような微弱な雷だったけど、流石は天智のスペック──飲み込みは異常なまでに早かった。

 焼け焦げた庭の地面を見て俺は内心で感嘆する。


 勿論銀子の指導の賜物でもあるけれど、天智の成長速度は凄まじいの一言だ。

 だから、俺はとにかく根性を持って努力に専念するだけ。

 何をしてでも俺は強くならなければいけないのだから。


「ふむ、ならば良い。では儂は一旦消えるとするかの」

「あぁ、わかった」


 景色に溶け込むように銀子の身体が霞んでいき、やがて掻き消える。

 すうっと自分の身体に呪力が戻る感覚。


 この感覚は銀子の顕現によって消費している俺の呪力、その供給が止まったことと、余っていた呪力が帰ってきた事によるものだ。


 現実では銀子が小狐の姿で、夢では人型なのにもしっかりとした理由がある。

 人型の姿は子狐の形態とは比較にならない量の呪力を消費するらしい。

 儀式当日に人の姿を保っていられたのは、あの一室に俺の全呪力が漂っていたからなんだとか。


 ちなみに現状の俺の呪力量では、現実での人の姿による活動時間は一分にも満たないと聞いている。

 それを原作の天智は数十分も維持していたとなると……はは、つくづく怪物なんだと知らしめられる。


「まだまだ、だなぁ……」


 足りない。

 全然足りない。何もかもが違い過ぎる。

 体格や訓練に費やした時間が違うとは言えど、悔しいものは悔しい。


「だけどいつか絶対追いついてやる。いや、追い越してやる」


 今も鮮明に蘇る天智の戦闘シーンに胸を熱くさせながら、俺は自分自身に誓った。




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