クラス召喚に巻き込まれた教師・ラジオドラマ最終話記念SS:みんなでお風呂
「あー……今日も疲れた」
「情けない。まだ日が暮れる前なのに疲れた疲れたと……」
「いや、無理言うな……」
ある日。
ルーシアと手合わせした俺は疲労困憊でぶっ倒れていた。
地面に仰向けになり、青い空を見上げている。
太陽の位置は低い。あと一時間もすれば夕方になり、夜になる。
俺の傍にはボロボロの木刀が転がっている。首を傾けてルーシアを見るが、汗一つ流していない。
木刀を地面に刺し、俺の傍に来て手を伸ばした。
「ほら、立て」
「…………」
おおう……前かがみになると、ルーシアの巨乳がシャツ越しにぷるんと揺れた。
言ったら殺されるので言わないが、ルーシアはなかなか無防備だ。普段は堅苦しい鎧とか着てるけど、俺と訓練するときは鎧を脱ぎ、シャツとぴっちりしたズボンで行う。
おかげで、よく揺れる……まぁ、言わんけどね。うんうん。
ルーシアの手を掴んで立ち上がる。
「そろそろ、クトネたちも戻ってくる。その後は街に戻ろう」
「ああ」
ちなみに、ブリュンヒルデとクトネはスタリオンを洗いに川へ行った。いつもはブラッシングだけだが、たまには丸洗いをとクトネが言ったのだ。まぁ、最近シリカを丸洗いしたばかりだしな、それに影響されたのかも。
俺とルーシアは留守番。その間に、剣の稽古をしていたわけだ。
俺は、近くの岩の上で昼寝をしていたシリカを軽く撫で、その傍にあった水のボトルを取る。
「今日行く街、けっこうデカイんだよな」
「ああ。なんだ、行きたい場所でもあるのか?」
「公衆浴場はあるかな」
「中規模の町には必ずあるだろう。なんだ、風呂に入りたいのか?」
「そりゃ、こんだけ汗流せばな」
シャツが汗でべとべとだ。
ルーシアも「確かに」と笑った。すると、スタリオンを連れたブリュンヒルデたちが戻ってくる。
『センセイ、スタリオンの丸洗い完了です』
「ただいまでーす。いやー、疲れました……スタリオン、大きいからあたしじゃ背中まで届きませんし。あとあとすごいんですよ、ブリュンヒルデさんが頷くとスタリオンがしゃがんだんですよ。目と目で通じ合うってこういうことなんですねー!! あたしもシリカと……!!」
クトネはシリカをジッと見るが、シリカは何度か瞬きして大あくびするだけだった。
俺はブリュンヒルデに言う。
「じゃ、スタリオンも満足そうだし……そろそろ、街に行くか」
俺たちは、次の目的地である街に向かうことにした。
◇◇◇◇◇
確かに、街は大きかった。
中規模くらいの宿に入り、公衆浴場の場所を聞き、四人で向かう。
シリカは宿に入るなり、俺のベッドの上で寝てしまった……いやいいけどさ、シリカってなぜか、飼い主であるクトネと一緒に寝ることあんまりないんだよな。
さっそく公衆浴場へ。
男湯、女湯……あ、あれ?
「……あ、あれ? こ、公衆浴場って……こ、混浴なのか!?」
「そうですよ? あれ、セージさん知らないんですか?」
「で、でも……マジカライズ王国では男女別のところもあったぞ」
俺やブリュンヒルデはクトネの家の風呂使ってたけど、公衆浴場にも行った。そこでは男女別だった……ここは混浴みたいだけど。
するとクトネが言う。
「マジカライズは魔法の国ですからね。お湯は魔法で生み出してたから男女別も可能だったんですよ。でもここ、沸かし湯ですからねー……男湯、女湯と分けて浴槽いっぱいのお湯を張るとなると、かなりの水や薪を使うことになりますし。湯沸かしの魔術師を雇うとなると、それだけでけっこうな金額になっちゃいますし」
俺がマジカライズで見た公衆浴場では、従業員が全員魔術師だったらしい。
交代でお湯を魔術で生み出し、汚れを浄化・循環させたりしていたそうだ……し、知らなかった。
クトネ、ルーシア、ブリュンヒルデは迷うことなく公衆浴場へ。
俺もオドオドしながら入る。
受付カウンターには、いるわいるわ……仕事終わりのおっさん、若い女性グループ、夫婦っぽいじいさんばあさん。
みんな羞恥心ないのか!? ってか、ルーシアとか平然としてるし!?
俺はドギマギしながら金を支払う。
「いらっしゃいませ」
「よ、四人でお願いします!!」
金を支払うと、受付さんはニッコリ笑った。
◇◇◇◇◇
「……………………まぁ、そうだよな」
脱衣所は男女別で、服を脱いでいざ浴場へ!!
うんうん、わかってたよ。
「いやー、おっきい浴場ですねぇ」
「うむ。この規模なら、男女別も可能なのではないか?」
『…………』
女子はみんな、薄い浴衣みたいなのを着ていた。
湯着っていうらしい。
浴衣というか、袖なしの柔道着みたいだ。ズボンじゃなくて短パンだし、肩がむき出しだ。
当然、俺も着てる……というか、浴場の全員が装着してる。
洗い場を見ると、ここも男女別だ。洗い場では裸になって身体や髪を洗い、湯舟に浸かる時だけ湯着を着て入るようだ。
女子三人はキャッキャしながら洗い場へ……俺も行くか。
「……おおぅ」
洗い場は、見事なまでに『男』の世界だった。
工事現場で働くおっさんみたいなのが多い。ガチムチだらけの世界だ……うう、肩身せまい。
さっさと洗い、湯着を着て湯舟へ。
女子たちはまだ来ていない。ま、髪とか長いし洗うの大変なんだろ。
「ふぁぁ~……」
浴槽はかなりでかい。
二十メートルプールくらいの大きさかな。三十人くらいいるのに余裕で広い。
「あぁぁぁぁ……上がったらメシだな。つめた~いビールと、枝豆と、納豆入りオムレツ、ししゃも、アスパラとベーコンの炒め物……くぅぅ、最高じゃん。納豆入りオムレツ、俺の大好物なんだよな……納豆、こっちの世界にないかなあぁぁ」
「なっとう? なんだ、それは」
と、ここでルーシア……お、オォゥ。
「隣、失礼する」
長い髪をまとめ、濡れた湯着が身体に貼り付いてなんともエロい……周りにいる男たちがルーシアを見て「ゴクリ……」って唾飲み込んでるし。
湯着でしっかり身体をガードしているが、色っぽい首筋、上気した頬、そして恍惚の表情を浮かべつつ「ほぅ……」と息を吐く姿がやばい。
「一日の疲れが抜けていくようだ……」
「あ、ああ……と、ぶ、ブリュンヒルデたちは?」
「ああ。ブリュンヒルデの髪をクトネが洗っている。ブリュンヒルデのやつ、『センセイの元に行きます』なんて言って、湯を浴びただけで行こうとしたからな」
「あいつらしいな……」
「クトネがあの子の髪を丁寧に洗っているぞ。ふふ……同性だが、ブリュンヒルデの髪は本当に美しいな、見惚れてしまったよ」
「……お前も綺麗だろ」
「───……えっ」
やべ……ちょっとのぼせてるかも、変なこと言ったかな。
ルーシアが顔を赤くして黙り込んでしまった。
「あ、ああそうだ、ルーシア……その、上がったら一杯どうだ?」
「あ、ああ。つ、付き合おう」
「その、枝豆とかさ、納豆入りオムレツ食おうぜ!!」
「あ、ああ!!」
やばい、なんか照れくさすぎる!!
いや確かに、ブリュンヒルデの髪は綺麗な銀髪だ。でもでも、ルーシアの金髪もいいというか、俺の好みというか、うんうん。
「セージ……あの」
「お、おお?」
「その、ありがとう……世辞でも嬉しいぞ」
「…………」
俺に微笑みかけるルーシアは、上気した顔を合わさってとんでもない色っぽさだった。
公衆浴場、行く先々であるなら、これからも利用しよう!!