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マギアマキナの初仕事

 バテルたちの新たなる仲間、マギアマキナの開発は順調に進んだ。


 最初に作られたマギアマキナたち、第一世代のヘレナ、リウィア、クレウサ、ベリサリウスの四人に続いて、新たに第二世代マギアマキナもバテルの錬金術(アルケミア)によって生み出された。


 第二世代のマギアマキナお披露目のために、バテルはマギアマキナたちを連れて、ディアナを訪ねていた。


「ディアナ様っ!」


 執務室に入った途端、ヘレナがディアナに飛びつく。


「ぐふう……あら、ヘレナちゃん、いつも元気いっぱいね……」

「えへへっ」


 ヘレナの當津劇でダメージを受けたディアナが青い顔でヘレナの頭をなでてやる。


「ヘレナ! ダメですよ。いきなり飛びついては」

「うう、ごめんだよっ。お母さん」

「まあ、いいのよ。イオちゃん」

「バテル様もディアナ様も少しマギアマキナたちに甘すぎます」

「みんな甥っ子姪っ子みたいで可愛いんですもの。ふふ、なんだかイオちゃんも母親みたいね」

「わ、私は、あくまで、従者であって、母親、バテル様の妻なんて……」


 赤面したイオは黙りこくってしまう。


「にしても。すごいわね。ヘレナちゃんたちを見た時も、驚いたけど、やっぱりみんな人間しか見えないわ。 本当にマギアマキナなの?」

「はい。この四人は第二世代のマギアマキナです。ベリサリウスたちと同じです。ほら、みんな自己紹介を」


 バテルの前に四人の第二世代マギアマキナたちが並ぶ。


「お初にお目にかかる! 我が名はガイウス! 戦さの先陣はこのガイウスにお任せあれ!」


 まず大音声で名乗りを上げたのは筋骨隆々の男、ガイウス。


 サファイアごとき鋭い蒼眼をぎらつかせ、バテルが錬成した蒼の大鎧を着こみ、威風堂々たるいかにも武辺者といった偉丈夫である。


「ちょっと、うっさいわよ。ガイウス」

「ぐぬう」


 隣に立っていた美少女が、ガイウスに肘鉄を食らわせる


「あたしは、ルピア。一番かわいいマギアマキナだよ。よろしくねっ!」


 ルピアはわざとらしくポーズをとってウィンクする。


 ピンクに緑や赤のメッシュが入った派手で奇抜な蛍光色の髪が揺れ、金色の瞳がきらきらと輝いている。


 露出が多く、へそ出しでシャツの胸元も大きくはだけ、下はいまにも見えてしまいそうなミニスカートで、豊満な体が露になっている。


 バテルはあまり詳しくないが、言動といい服装といいルピアは前世で言うギャルに近いかもしれない。


「ルピア、ディアナ様に対して無礼ですよ。それにその服もはしたない!」


 ディアナはなだめるがイオの小言は止まらない。マギアマキナたちの中でもひときわはねっかり娘のルピアにイオはいつも手を焼いている。


「いージャン別に、ママだって、相当きわどい格好してると思うけどな~」


 とルーナはイオのメイド服の短いスカートの下を手でまさぐる。


「ひゃあっ!」


 こそばゆい感覚にイオは思わず悲鳴をあげる。


「あはは、ごめん、ごめん、冗談だって許して」

「冗談にしてもひどすぎますわ。あなたがマギアマキナの中で一番かわいいなんて。お父様に頂いたわたくしの顔がこの世で一番美しいですわ」


 豪華なドレスで貴族令嬢のように聞かざるクレウサがルピアを嘲笑する。


「それだったらあたしだってパパにもらった顔だし。もっと近くでよく見ろ」


 ルピアはクレウサに頭突きを食らわせる。


「眉間にしわが寄っていましてよ。老けて見えますわ」

「ほんっとにムカつく奴ね!」


 また喧嘩が始まったとバテルは苦笑いする。


 マギアマキナたちはバテルの期待通り、個性的に生まれてきたが、個性が強すぎる上に、自分の能力に絶対の自信があるため、特にクレウサとルピアはよく衝突する。


「私もかわいいよねっ?」


 ヘレナがそう言うと


「もちろん、ヘレナちゃんもかわいいわよ」


 とディアナは膝の上でヘレナの頭をなでる。


「お父様……」


 喧嘩を止めようとおろおろしているリウィアがバテルに助けを求めると


「ん? もちろんリウィアも可愛いぞ」


 とバテルは、リウィアの頭をなでる。


「ふえええ」


 リウィアは顔を赤面させるばかりで動かなくなってしまう。


「けんかは~ダメですよ~」


 まだ残っていた第二世代にマギアマキナの美少女がゆったりとした口調で止める。


「あ~、私、アモルって言います~。よろしくです~」


 そしてアモルはマイペースに自己紹介を続ける。


 アモルも他のマギアマキナに劣らず美しい顔立ちで、ゆるくふわりとしたウェーブの金髪にピンク色のまんまるい瞳。天使を思わせる温かく可愛らしい美少女だ。


 フリル付きのふわふわした純白のドレスを着ているが、その背中には可愛らしい天使のような服に似つかわしくない狙撃銃を背負っている。


「……ファビウス」


 丸禿の寡黙な男がぼそりと呟く。


 深紅の両眼はぎらつき、職人気質といった雰囲気だ。ガイウス同様迫力のある体格の大男だが、存在感が薄い。


 手先の器用で美的センスに優れたマギアマキナで、今、マギアマキナたちが来ている衣装はすべてファビウスが拵えた。


「みな、いい加減にしなさい」


 低い声でイオがつぶやくと、マギアマキナたちは触れただけで凍り付いてしまうような冷たく重い殺気に包まれる。


 騒いでいたルピアが借りてきた猫のようにおとなしくなってしまった。


「ちょ、ママブちぎれてるんですけど」

「あなたがどうにかなさい。もとはといえば、あなたの軽はずみな言動が」


 ルピアとクレウサは小声で責任を押し付けあう。


「二人とも」


 イオの声にルピアもクレウサも蛇に睨まれた蛙のように縮み上がる。


「ご、ごめんなさい。ママ」

「申し訳ありませんでした」

「二度目はありませんよ」

「うん……」

「はい」


 あまりの恐怖に涙を浮かべるルピアとクレウサはそっと抱きしめ、頭をなでる。


「よしよし、わかればいいんですよ」


 その激しい鞭と飴の使いようにこの場にいた誰もが、イオは怒らせてはいけない存在だと悟った。


「えーこほん。実はバテルちゃんたちにやって欲しいことがあるの」


 ディアナが話をすすめる。


「姉上、また何か問題ですか?」

「また問題というかディエルナは問題だらけなのだけど、今回は、さらに大問題よ。帝都までの街道に現れる盗賊は知っているでしょう」

「はい。ですが、確か、他の貴族が対処するはずでは?」

「それが、負けちゃったらしいの」

「負けた?」

「どうやらかなり規模が拡大しているらしくて、歯が立たなかったみたい」

「いくら盗賊が増えているとはいえ、貴族の軍が負けるなんて」


 ダルキア属州の貴族連合遠征軍が、国境線での戦いで壊滅してから、貴族たちの兵力はだいぶ落ち込んだ。


 それでも、武勇で知られたダルキア貴族が、盗賊にあっさりと負けるというのはにわかには信じがたい。


「さらに厄介なことに町も占領されちゃったみたい。ここよ。メルタの町」


 ディアナは地図を指さす。ディエルナからそう離れていない。


「たかが盗賊風情に負けるなんて、だらしない貴族ですわね」


 ドロテアは呆れてため息をつく。


「あたしたちなら盗賊なんて一瞬なのに」


 ルピアが言う。


「油断は禁物。敵を侮るべきではありません。ですが、これは我々マギアマキナの実力を知っていただくいい機会かと」


 ベリサリウスはバテルにうやうやしく頭を下げる。


「頼もしいわ。今、周辺の盗賊はみんなメルタに集まってる。ここで一網打尽にしたいわ」

「お任せください。姉上」

「好きなだけ兵を連れていって頂戴。ベルトラも連れて行きなさい」

「いえ、それには及びません。ベルトラだけお貸しいただければ結構です」

「え? ちょ、ちょっと」


 止める間もなくディアナは置き去りにされてしまった。


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