自称天才博士、屋根裏から明らかに怪しいおふだを持ち出す。(※2週間ぶり2回目)
第4回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞応募作品です。タイトルキーワードは「天才/屋根裏/おふだ」ですが、実はキーワードを全て(↓)使っています。
天才/缶コーヒー/えんぴつ/ランドセル/量子力学/星座/夏祭り/チェックメイト/ひまわり/おふだ/体育祭/ポーカーフェイス/屋根裏
「よし!」
彼は満足げにロボットの蓋を閉めた。
「司博士、これで完成ですね!」
「わっはっは! ワシの最高傑作だ!」
「おめでとうございます!」
そう言いながら私の心は既に彼の足元に散らばった量子力学等の本やえんぴつ、星座盤に移っていた。
ああ、こんなに散らかしたら片付けるのも一苦労だ。助手役も楽じゃない。
私は缶コーヒーをひと口飲むと、よしと気合いを入れて片付けを始める。
「ちょ、ちょっと、えっへん、ミキ君?」
「はいはいなんですか博士?」
「せっかくワシの最高傑作なんだからもっと見てよ!」
彼はひまわりのような明るい笑顔で言う。自分の作品に賞賛が欲しくて堪らないのだ。
私はやれやれと思いつつポーカーフェイスでロボットの背中部分を見た。ランドセルの様に膨らんでいて大きな蓋がついている。
蓋をぱかりと持ち上げると、中に見覚えのあるおふだが貼ってあった。
……ヤバい。これ、凄く禍々しい感じがする。
「博士、このおふだはどこで手に入れたんですか?」
「このロボットはおふだの力で動いて……」
「どこで手に入れたかって訊いてるのッ!」
私の勢いに彼はびくりとし、目を逸らせて言った。
「えーと。体育祭の借り物競争で借りた」
「嘘でしょ。めっ!」
借り物競争は見てるだけだったでしょ。だいたい借り物なら返さなきゃ!
「あ~違った。こないだの夏祭りで買った」
「いい加減にしなさい! ミキ姉ちゃん怒るよ!」
私の剣幕に、今まで天才博士ごっこで調子に乗っていた司は涙目になった。
「ごめんなさい……」
彼は天井を指差す。急いで屋根裏に上がると黒い妖気が渦巻いていた。霧の妖魔だ。
「あ~! せっかくパパが封じてくれてたのに!」
妖魔は私の体を乗っ取ろうと襲いかかってくる。
「はあぁぁ……滅!」
私は印を結び、気合いを発した。妖気が一瞬弱まったところにおふだを貼る。
「これでチェックメイトよ!」
妖魔はおとなしくなったけれど、私は封魔師としては修行中の半人前。急いでスマホを取り出す。
「もしもしパパ? ごめん、司がやらかしたの」
電話の向こうのパパは、司は母方の親戚だから妖魔を見る事は出来ないし小学生男子は悪戯をするものだ、と笑った。今日中に改めて封印してくれるそう。
「はあ……もう」
従兄弟の工作とごっこ遊びに付き合うだけの筈が、とんでもない事になったわ。
司の夏休みの工作、段ボール製ロボットが夜な夜な動く……と小学校の怪談になったのは、それからしばらくしての事だった。
お読み頂き、ありがとうございました!
ランキングタグスペース(広告の更に下)に他のオススメ作品や、「5分前後でサクッと読めるやつシリーズ」のリンクバナーを置いています。もしよろしければそちらもよろしくお願い致します。