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ツバサ・ライジング  作者: 仲仁へび
第1章
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03 始業式で入学式



 4月7日

 僕がこの世界に出現してから、一週間が経過した。

 この日、僕は中央心木学校の新学期の式に出席しなければならない。

 なぜなら、その学校の生徒としての身分が用意されていたからだ。


 数合わせの為に生み出された僕は、これからどうやって過ごしていくのかは定められていないし、誰にも決められていない。


 僕がするべき事は、ただ、生きている事だけだ。

 怪しい求人票なんかに情報を出力すると【急募:呼吸するだけの簡単なお仕事です♪】とでも書かれそう。そんな会社、存在自体が詐欺詐欺しいが。


 とにもかくにも、これから何日かは通うことになろうだろう学校を、校門の所から見つめる。

 

 他の学校よりは幾分かは大きくて、他の学校の敷地よりは幾分かは広そうだった。

 つまり特に目立ったところも変わったところもない。

 たった一つを除いて。


「おとぎ話とか伝説の類いにでも出てきそうな、大きな木だな」


 校舎の背後にそびえる巨木。無数の桜の花びらを身につけたその木を眺める。

 学校の敷地内にはほかにも何本かの桜の木が経っているが、なぜかそれだけスケールが違った。

 その一本だけのっぽさんは、四階建ての校舎を追い越す勢いだ。


 冷静に考えてみてもかなり遠近感がおかしくなりそうな木である。


「おかーさーん。早く早く!」

「こらこら、慌てないの。ちゃんと写真が撮れないでしょう」


 ぼうっと立って眺めていると、新入生とその親らしき人が門の間で写真を撮ろうとしているところだった。

 いつまでもそこに立っていて、見知らぬ親子の写真に余分な背景として写り込むのも申し訳ない。なので、校舎へと向かって歩き出す事にした。


 入学式と始業式の案内はすぐ近くに立てかけられている看板に書かれていて、体育館で行われると書いてある。


 新入生とほとんど関わらないはずの僕が、在校生のような顔をしながら一緒に登校するのは、ちょっとだけ変な気分だった。


 ここで、五年も通った記憶何てないのに。

 僕は、五年生として今日からこの学校に通い始めるんだから。


 勉強に必要な用具は一応家に揃っている。

 その都度購入しなければならない、消耗品の文具を購入する資金も。


 僕の出現と同時に、おそらく一般的な少年として生きていくために必要な物は全て、与えられていたのだろう。


 必要な物が増えた時は、どうなるのだろう……。


 ……判明した。

 ええと、お金は自然に用意されるからそこから先は自分で購入しろ、という事らしい。


 それは誰かが語りかけて来たわけじゃなくて、理解が及んだと言う感じ。知識がかかれた本が閲覧できるようになった感覚が近いかな。


 親切なんだか、不親切なんだかよく分からない。


 自分をとりまく環境のあいまいさに思いをはせながら、体育館へと入った。

 見た目的には特に斬新なところはない。

 そこも至って普通だった。


 割り当てられたクラスの列に並んで、式が始まるまで待っていればいいらしいが、さすがの僕でもそれはちょっと抵抗感がある。見知らぬ知り合いと平然と顔を並べて、待ち時間を過ごせるほどじゃないようだ。そういう図太さを持ち合わせて生まれてこなかったらしい。


 なので、何か面白いものでもないかな、と周辺をウロウロすることにした。 


 体育館の舞台は格式ばった飾り付けがされていて、生徒達が並ぶホールも、そこそこ折り紙などで飾り付けられている。壁には掲示物として、これまでの学校の歴史とやらがまとめられていた。


 ざっと目を通してみるものの、特に目を引く内容があるわけではない。難しい言葉が並んでいるが、特に秀でた功績があるわけでも、問題があったわけでもなさそうだった。



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